
『pineapple hill』を聴きドラマ『海に眠るダイヤモンド』を思う
今回セットリストの中で印象的だったのが『pineapple hill』。これまた初めて聴いた曲だと思ったが、家に帰って調べたら、エエッ、アルバム『夢回帰線』(1987年)からの1曲ではないか! レコード持ってたのに(汗)。『男は大きな河になれ』と『風に立つライオン』ばかりヘビーローテーションしていたゆえの忘却……。
いや、誰が私を責めらりょうか。なにせデビューから51年、さだまさしさんが出した(オリジナル)アルバムは49枚。曲数は600以上。こんなこともある。
『pineapple hill』は別れの歌だ。彼女は町を離れる前に、「死ぬまであなたが好きだから」とコスモスの種を撒くのだ。
さださんが出演していたドラマ『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)にも、朝子(杉咲花)が鉄平(神木隆之介)にコスモスの種を渡すシーンがあったなあ。ふとドラマの展開を思い出し、切なくなる。
次の『ジャカランダの丘』は、レーズンのアルバム『あの頃について』(1991年)から。かなり前になるが、トーク番組で相棒の吉田政美さんが「二人の声質が合わなくてハーモニーが心地よくなかった。オフコースが羨ましかった」と打ち明け、さださんも「そうなのよ〜」などと同調していたことを思い出す。「聴く側は最高に心地いいのに!?」とビックリしたものだ。今回はソロだったが、またデュオでも聴きたい。
『ジャカランダの丘』も『pineapple hill』も、マウイ島最古の首都、ラハイナにある「ラハイナ・サウンド・スタジオ」で作られた曲だ。ところが2023年に起きた、マウイ島の山火事でラハイナは消失してしまった。
さだまさしさんが歌うのは心の故郷だ。そのなかには消えてなくなってしまった場所や、様変わりをしてしまった場所も含まれる。けれど、歌の線路を伸ばし、彼らはその場所を訪れる。そして、けっして消してはならない土地と人のつながりを歌い継いでいくのだ。今回は、能登について思いを馳せていた。
終盤、線路は迷路に近い螺旋の渦を走る。『51〜2024ヴァージョン〜』『Believe』『いのちの理由』、そして怖いほど美しい月が輝く『まぼろば』へ。余韻冷めやらぬまま、「もう汽車は来ません」と歌う、『空蝉(うつせみ)』(*)を突き付けられるのだ。
【*『空蝉』の「蝉」の正しい表記はつくりの上部「ツ」が「口」2つの旧字体】
時間が止まるような錯覚が起きる。その瞬間、シュポーッと大きな汽笛が叫ぶように鳴り、会場は夕陽が落ちてきたような茜色に染まった。