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【幸福のピークは82才だった】80代の今が幸せだと語る女性たちの実感「年をとることは怖くない、大切なのは “もう○才”ではなく“まだ○才”と考えること」

80代の女性たちは今が幸せだと実感している(写真/PIXTA)
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気力や体力の衰えを感じ、「年をとりたくない」と思う人も多い。しかし「実は人生の幸福度は、80代でピークを迎えるとの研究があります」と語るのは、高齢者医療に詳しい精神科医の和田秀樹さんだ。一般的に幸が薄くなると考えられる老後に、逆に幸福度が上がる「エイジング・パラドックス(加齢の逆説)」なる現象があるのだ。【前後編の後編。前編から読む

気の持ちようが大切、“もう〇才”ではなく“まだ〇才”と考える

実際に80代が人生の幸せのピークという女性は少なくない。

「ここまで年をとったら、もう怖いも何もないですよ(笑い)。82才のいまがいちばん幸せです」

そう笑顔で語るのは、都内在住のAさん(82才)だ。いまが人生でもっとも幸せという彼女は「50代まではつらかった」と振り返る。

「50才を過ぎるまで子供も夫も家にいて、彼らの都合に振り回されていました。休みの日は子供や夫がバラバラにご飯を食べるので私は一日中台所にいて“家政婦みたい”との思いが込みあげて、幸せだとは感じられませんでした。60才になったとき子供たちがみんな独立して75才で夫を送って、ようやく母や妻という役割から解放されました」

Aさんは持病もなく、体もいたって元気だ。じっとしているのが苦手で、現在は近所の子ども食堂で調理を手伝っている。

「人手が足りないからと頼まれて手伝うことになりました。うれしそうに食べてくれる人がいると、同じご飯を作るのでも張り合いがあります。自分の時間を好きに使えて、自分を犠牲にしてまで誰かのために何かをしなくていいのは楽ですね。年をとってやっと自由になれました」(Aさん)

ボランティアや趣味仲間、バイト勤務など人とのつながりが幸福度を上げる(写真/PIXTA)
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老後を迎えてから、好きなように生きる楽しさに目覚めたのは、都内在住のBさん(81才)。

「50代まで義両親の介護でてんやわんやでした。当時、親の介護は嫁がするものとみなされてヘルパーを頼むこともできず、まあ大変でしたね。でもいまは縛りが全部なくなって、とにかく快適。健康には全然気を使わず食べたいものを食べ、お酒やたばこも楽しんでいます。夫は夫で気ままに生きているし、同居人のような距離感がちょうどいい。

4年前から地元の集まりのフラダンスを始め、周りは私より年下だけど仲よくやっています。年をとることは全然怖くなく、大切なのは気の持ちよう。“もう○才”ではなく、“まだ○才”と考えるようにしています」(Bさん)

神奈川県在住のCさん(82才)も趣味を楽しむひとり。40才でバドミントンにハマってから、50才で地域のバドミントン連盟の役員をやるようになった。それからいろいろな人とのネットワークができたという。

若い頃はどうしてもママ友と会うことが多く、子供の話でマウントを取り合っていたが、いまでは共通の趣味を持つ人と穏やかに会話ができると笑う。

82才でも欠かさないバドミントンには、ほかにもさまざまなメリットがあるとCさんは言う。

趣味をきっかけに、いろいろな人との繋がりができる(写真/イメージマート)
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「2023年の冬に転倒して手首を骨折しましたが、医者も驚くほど骨がくっつくのが早かった。骨密度が高いのは運動の賜物だと思っています。

もう80代になって暮らしは質素ですけど、バドミントンが楽しいから気になりません。自分の人生を自分で生きている感じがしています」

老後を自由に、思い思いに生きるだけが幸福のピークをもたらすのではない。茨城県在住のDさん(83才)は、脱サラした夫が始めた食堂でいまも現役で働いている。

「50才の頃は店の経営方針で夫としょっちゅうけんかをしていました。店が忙しいこともあって、ほったらかしにしていた子供がグレたこともありましたね。その時期は本当に大変でした……。けど、時間が解決すると思って、とにかく働きました」

5年前に夫を亡くしてからも、Dさんはひとりで店を切り盛りしている。

「80才過ぎても働くのは、食い扶持を稼ぐため。その気になれば店を売って悠々自適な隠居生活をできますが、せっかくだからがんばれるところまでがんばりたい。好きな仕事を続けられて、幸せな人生だと思っています」(Dさん)

ほかにも保護猫の世話や道の駅での勤務、趣味のカメラの撮影旅行など、多くの人がそれぞれのやり方で80代を満喫している。

「メタボ対策からフレイル対策」へのギアチェンジ

とはいえ、年齢を重ねるにつれて心身に不調をきたすことは避けられない。老後を長く健康に幸せに過ごすためには何をすべきか。いのくちファミリークリニック院長の遠藤英俊さんが指摘する。

「70代後半になると体の動きが散漫になる、節々が痛む、疲れやすくなるといった『フレイル(加齢による心身の老いや衰え)』が生じます。これを乗り越えないと寝たきりになるので、まずはいい食事をして、よく寝て、運動することを心がけてください」

熊本リハビリテーション病院サルコペニア・低栄養研究センター長で医師の吉村芳弘さんさんは「メタボ対策からフレイル対策」へのギアチェンジを提唱する。

シニアになったらダイエットよりフレイル対策が重要になる。たんぱく質中心の食事を心がけたい(写真/PIXTA)
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「40代以降はメタボをきっかけに生活習慣病を発症しやすくなるので体重調整が必要ですが、65才以降はやせるとフレイルのリスクが増すので体重や筋骨格を保つことが重要です。  食事も野菜中心からたんぱく質中心に切り替えて、筋肉を減らさないように心がけてほしい」

前項で紹介した幸せな80代を見てもわかるように、趣味や生きがいを持つことも大切だ。 

「その際、生きがいを分散させることも必要です」

そう語るのは遠藤さん。

「例えばゴルフを生きがいにする男性は多いですが、老化で体が思うように動かずプレーできなくなると、幸福度が一気に下がります。だから未来に備えて生きがいや趣味を分散しておくことが大事で、1つできなくなっても代わりがある状態にしておけば安心できます」(遠藤さん)

趣味のバリエーションを増やしておくことが“幸福度のセーフティーネット”につながるのだ。

年齢を重ねても人や社会との接点を持ち続けることで心身の健康を維持することができる(写真/PIXTA)
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多くの専門家が口を揃えるのが、「社会的なつながりを持つ」ことのかけがえのなさだ。前出のAさんらの事例を見てもわかるように、年齢を重ねても人や社会との接点を持ちコミュニケーションを続けることは、心身の健康を維持するために大きな意味を持つ。

「ある調査では、ひとりでフレイル予防の運動をして筋肉を維持する人よりも、フレイル予防の集まりに参加したけど運動はしなかった人の方が健康で長生きできました。運動はもちろん大事ですが、集まりに参加することは実際に運動する以上に健康長寿効果があることが示唆されました」(吉村さん)

遠藤さんは「なかでも年下の友人を持つことが望ましい」と語る。

「同い年の友人は育った時代が同じで気が置けず親しくなりやすいですが、お互いに死ぬタイミングが近いという現実があります。友人を失うとコミュニティーへの参加が遠のく人が多く、実際に80才に近づいた患者さんは“訃報が多くて同窓会に出席するのが嫌になった”とよく言います。

一方で自分より若い人が友人なら、確率的には自分より早く亡くなることは少ない。だから5~10才ほど年下の友人を積極的に持つことをおすすめします」

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