自身の健康状態を把握する第一歩となる健康診断だが、結果として表れる数値には落とし穴がある。代表的なものが血圧とコレステロールだ。
血圧の基準値はここ40年で大きく変化
東海大学名誉教授で健康診断の数値に詳しい大櫛陽一さんが言う。
「血圧の基準値はここ40年で大きく変わりました。現在は140/90mmHg以上だと降圧剤が処方されますが、加齢とともに血圧が上がるのは当然のことで、薬での20mmHgを超える降圧は失神・転倒・浴槽での溺死の危険がある。
また、『悪玉コレステロール』といわれていたLDLコレステロール値も、日本では120mg/dlを超えると要注意とされますが、欧米では190mg/dlまで、受診や精密検査は不要とされています。コレステロールは細胞膜や神経細胞、ホルモンなどの原料として体に必須で、その8割が肝臓で生成されます。LDLコレステロールには肝臓から各細胞にコレステロールを運ぶという重要な役割もあり、“悪玉”ではありません」
老年医学に詳しい精神科医の和田秀樹さんも言い添える。
「コレステロール値は低ければ低いほどがんになりやすいという研究もあり、一概に低いことが正解なわけではありません」
さらに中性脂肪についても、日本の基準は世界とかけ離れていると大櫛さんは続ける。
「日本では空腹時が150mg/dl未満、非空腹時が175mg/dl未満と設定されていますが、アメリカでは999mdg/dlまで正常値とされています」
数値“異常”となった場合の、薬による副作用の懸念も
数値“異常”となった場合の、薬による副作用も懸念される。新潟大学名誉教授の岡田正彦さんが言う。
「降圧剤をのんだことで、脳に血液が行き渡らず認知症リスクが高まるという指摘もあります。また、中性脂肪を下げる場合、フィブラート系の薬が処方されるケースが多いのですが、血液の流れがよくなりすぎて脳出血のリスクが危惧されています」(岡田さん)
体重と身長から「肥満度」を算出するBMIについても、大櫛さんは「小太りがいい」と一蹴する。
「日本ではBMI25以上は肥満とされますが、国際的な肥満の定義はBMI30以上です。欧米でも日本でもBMI25~27.5の人が男女ともに、どの年代でも病気になりにくく、死亡率が低いというデータがあります」
岡田さんも続ける。
「高齢になると、やせている人ほど免疫力が低く、病気になりやすいことがわかっています。適正値は22とされますが、シニアのかたにとっては“やせすぎ”ともいえます」
※女性セブン2025年1月16・23日号