――子宮頸がんを発症してから13年。この時間はどういうものだったでしょうか?
「私には必要なことなのかなと考えています。私が生きる上で必要ながんの経験なんだと。何回も繰り返すことで自分の考え方も変わってきて、よりシンプルになっているような気がします。たくさん手に入れたいと思っても手に入れられるのは1つしかないし、やらなければならないことがたくさんあっても、やれることは1つだけ。考え方がシンプルになって、人との関係も、かける言葉ひとつ、色んなことを学べていると思います。
「正直、大丈夫と言い切れないのが現状です」
治療のことも、医師と患者は対等だと思えるようになってきたんです。最初は何もわからずに言われることを“はい、はい”と聞いていましたが、自分がどういう生き方をしたいのか、どういう治療をしたいかをちゃんと伝えると、医師も“そういうお考えならこういう治療法がありますよ”と応えてくれます。私も治療を続けながら病気のことを知り、薬について考え、自分の価値観や治療の進め方を相談してきました。患者側も“知る”ことは大切だと思うようになりました」
――今後の目標、楽しみを教えてください。
「リンパ浮腫を発症したことがきっかけで、2015年に『シエスタの会』を立ち上げて同じリンパ浮腫の患者さんとの交流を始めました。私が再発、再々発をしたことで、がんサバイバーの方ともつながりたいと思って、2019年に『一般社団法人HIRAKU がんリンパ浮腫と共存』を立ち上げました。代表として新薬の早期承認の要望書を厚労省に提出したりもしています。
よく“大丈夫なの?”と言われるんですけど、正直、大丈夫と言い切れないのが現状です。だからといって何もしない、動かないのは私の生き方として違うかなと思えるようになってきて、何かできるはずだと。だからお芝居でもなんでも、みんなが笑える場を作りたいと思っていて、そのために何ができるか模索中です。
実はこの春、初孫が生まれるんです。定期検査で良い結果が続いているので、これまで感染症のこともあってこもりがちでしたが、来年は人との出会いを多くしていきたいと思っています」
取材・文/伏見 友里 撮影/横田 紋子