厚生労働省の人口動態統計を調べると、10万人あたりの「不慮の溺死及び溺水」の死亡率は、富山県が2018~2023年の6年間でトップだった。「不慮の溺死及び溺水」のうち入浴中の事故は約8割にのぼるので、多くは浴槽での溺死だと考えられる。なぜ、富山県ではお風呂で亡くなる人が多いのか。寒さが原因か、それとも高齢者が多いからか、はたまた何か特別な事情があるのか――その理由を富山県に問い合わせた。
富山県が浴室内死亡率1位の怪
「確かに県内では入浴中の事故による死亡者が多く、2023年の浴室内での死亡者数は163名でした。しかし、死亡との関連が疑われる飲酒量や高齢化率は他県に比べてそれほど高くありません。寒暖差の観点でみると、たしかに冬でも温暖な沖縄県は浴槽での死亡事故が少ないものの、湯船につからない人が多いそうです。
入浴頻度が低ければ浴室内での死亡率も低くなるので、一概に寒暖差が原因とも言い切れない状況です。県としては、一般的なヒートショック予防を呼びかけています」(富山県厚生部健康対策室健康課)
東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信さんは「あくまでも仮定の話」と前置きしたうえで、こう推察する。
「富山県は冬の寒さに加えて、昔ながらの戸建ての持ち家率が高いことが関係しているのではないでしょうか。古い木造家屋の戸建ては断熱性が低く、リビングは暖かくても脱衣所や浴室は冷えやすいのです。
より寒さが厳しい北海道でヒートショックが少ないのは、その極寒ゆえ断熱性能が高くて室内が暖かいからだと考えられます」
寒さに慣れていることも、影響している可能性がある。
「子供の頃から寒暖差のある環境に慣れていると、“冬の風呂場は寒くて当然”とがまんできてしまう。しかし、精神面で耐えることができたとしても、年齢を重ねるとともに体が追いつかなくなります」(東丸さん)
当然、富山県に限らずお風呂での事故は全国で起きている。「うちは雪国じゃないからリスクは低い」――。そう冬の風呂場をあなどってはいけない。
※女性セブン2025年1月30日号