ペット・動物

【衰弱で食べなくなった犬や猫】への対応策を獣医師が解説 食べさせてはいけないものはある? 知ってほしいチューブやカテーテルという選択肢も 

知ってほしいチューブやカテーテルという選択肢

鳥海さんが、経口摂取に代わる栄養補給の手段として広まってほしいと願うのは、経管栄養だという。チューブやカテーテルを使って、消化器系統に直接、栄養を送り込む方法だ。

「昔は胃ろうといって、腹部に穴を開けてチューブを通し、胃に直接、栄養を送り込む方法が主流でしたが、胃酸によるトラブルが多かったこともあり、最近は食道や鼻咽頭にチューブを通したり、鼻にカテーテルを入れたり、もっと上流のポイントに入れる方法に変わってきています」

これなら、食べることができなくなった犬や猫も、栄養を取ることができる。体力をつけて病気の治療をし、例えば腫瘍なら炎症がおさまったり、内臓疾患なら内臓の機能が持ち直したりして、チューブやカテーテルから離脱できる可能性ももちろんある。

「ところが、この方法に抵抗感がある飼い主さんが少なくないんですよ。見た目のインパクトが強いこともありますし、“この子をチューブにつなぐなんて”と引いてしまうのかもしれません。特に初めてのことだったりすると、そういった反応になるのも無理はないのかなと思いますが、私たちとしては『この子、チューブを入れたら楽になりそうだけどな……』と歯がゆいときが結構あります」

食べさせてあげたい、しかしやっぱり食べられない、というチャレンジを何度も繰り返すのは犬や猫にも負担で、飼い主さんも疲弊してしまう上に、頑張っても栄養がほとんど取れないこともある。

「そんなときに病院からもしチューブを勧められたら、一度検討してみてもらえたらなと思います。経管栄養が有効な局面で、初めての提案に動揺してしまう飼い主さんが一人でも減ることを願って、平時に認識しておいてもらえるように、今回の記事でお伝えしてみました」

◆教えてくれたのは:獣医師・鳥海早紀さん

鳥海早紀さん
鳥海早紀さん
写真4枚

獣医師。山口大学卒業(獣医解剖学研究室)。一般診療で経験を積み、院長も経験。現在は獣医麻酔科担当としてアニコムグループの動物病院で手術麻酔を担当している。

取材・文/赤坂麻実

●食生活に気をつけていても発症する「犬の糖尿病」、原因や治療について獣医師が解説「“多飲多尿”“食べても痩せる”は糖尿病のサイン」

●15才以上の犬・猫の過半数が認知症の疑い…犬・猫が認知症になる前に&なったらやるべきこと

関連キーワード