2025年となり、ライター歴46年を迎えたオバ記者こと野原広子(67歳)。“片付けられない女”を自称し、いわゆる汚部屋暮らしだというが、その部屋をキレイにしなくてはいけないことに。ところが重い腰がなかなか上がらない…さてオバ記者はどうしたか?
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ガスストーブのコストに悲鳴!
寒いせいかしら。尿管結石はなんとなく完治したけれどここのところ元気がないのよ。「オバ記者が〜?」という声が聞こえてきた気がしたけど、そりゃあ私だって落ちることはあるわ。こうして原稿を書きだすと、長年の習性でテンションが上がるけど実際はぐだぐだだ。
たとえば家がダメ。しばらく前からエアコンのリモコンがどこかに雲隠れしていて見つからない。昨年の電気代が値上がりした時に、ガスボンベ用のガスストーブを買ったのでそれを引っ張り出してきて使い出したけど、1本3時間。ってことは一日つけたら非正規品 の3本400円が軽くパー。正規品なら700円だ。ってことはガスストーブの燃料費だけで月に1万2000円から2万1000円?
ひえ〜っ。日常的に使えるシロモノじゃないよ。そもそもキャンプなど屋外用だったんだよ。あ〜あ、子供の頃、算数のできなかった女はもうすぐ68歳になろうとしてもこんな簡単計算ができない。1日400円というボンベの値段が輝いて見えて飛びついたんだからバカバカバカ。が、ここから先があるの。こうなったら頑張って行方不明中のエアコンのリモコンを探せばいいのに「匂いが好き」とか「白湯がマイルド」だの言って、高価な炭火を買っているんだから、もうどこまで現実逃避するんだよ。
トイレのウォシュレットが故障…でも
ああ、現実逃避といえば、半年前からトイレのウォシュレットが壊れているんです。管理人さんに言ったら「不動産屋さんに電話したら直してくれるよ」とサラッというんだけど、だからー、それが最難関なんだって。この部屋に他人を入れる? ああー、もう考えただけで気を失いそうだ。なので、それはもう考えないことにして連日、トイレ環境のいいカフェを回って仕事をしていたわけ。得意の見て見ぬふり大作戦。が、それもそうも言っていられない日が近づいてきたの。
実は片付けられない女の私を文京区の汚部屋から抜け出させてくれた女がいるの。ひとまわり下の酉年女のYちゃんだ。私が引っ越しを決意したときに彼女と知り合い、その時、Yちゃんが失業中だったことをいいことに、旧居の片付けから新居の荷解きまでお願いしたら泊まり込みでしてくれた。いわば恩人よね。
で、その後、地方都市にある実家に帰ったYちゃんは私の部屋を東京の拠点にして、来るたびに片付けてくれていたの。それがコロナ禍でバッタリ途絶えたの。
「久しぶりに泊めてもらう」とYちゃんから
久しぶりに連絡をくれたのは昨年の初秋のことだ。「ヒロコさん、綺麗に暮らしているじゃない。『私のヒュッゲ』(去年の秋に放送されたテレビ東京の番組)見たよ」ってLINEしてきたから「人を二人頼んで、最後は私も徹夜して死ぬ気でテレビカメラが入れる状態にしたのよ」と正直に言ったわよ。そうしたら「あら、いいキッカケが出来てよかったじゃない。久ししぶりに1月末に泊めてもらうからそれまで綺麗な部屋をキープしておいてね」だって。
だから、それが出来たら苦労はしないんだって。私だってわかるんだよ。人は自分が簡単にできることは人もできるはずと思い、できないのはやらないからで、やらないのはその気にならないから──と、そう考えるのが人の常と。
もちろん私とて彼女のいう“いいキッカケ”にしたいと思う気持ちは十分あるし、しかもYちゃんは「で、前夜、うちの会社が持っている横浜の会員制のホテルに一緒に一泊しようよ。宿泊代は心配しなくていいからさ」とおいしいことを言う。Yちゃんの実家は地方で会社を経営していて、その高級ホテルの話は前から聞いていたの。
高級ホテルに泊まりたいけれど…
高級ホテルに泊まりたい。でもその前日までにYちゃんを泊められる状態にしなければならん。泊まりたい、片付けはイヤだ。断るか? 花占いでもあるまいに、毎日ベッドで寝返りを打っては汚部屋をチラ見して固く目を閉じる。こうして書いていても「バカか!」と自分にツッコミを入れずにいられないけど、まぁ、ホントのことだから仕方ないよね。
で、いよいよラスト2日、待ったなしというときなって、むっくり起き上がった私。もちろん最初はイヤでイヤでたまらなかったんだけど、あれ? やり始めたらゴミと取っておくものの仕分けがスイスイできるではないの。半年前にテレビ出演のための大片付けをしているからか、それとも縁のない高級ホテルに釣られたからか、1日半、気合を入れたら、どうにかYちゃんに見せられるようになった。
しかし、まぁ、ただの高級ホテルじゃない、会員制だよ。ドアガールの笑顔がピッカピカよ。フロント前で出迎えてくれた支配人は大企業の重役の顔。そしてそして部屋のドアを開けたらドーンと正面に横浜港。お風呂から見える景色とか、どこもここも別世界で、特にベッドのマットレスのど素晴らしさといったらないんだわ。一夜明けても夢心地でね。ああ、ここから離れたくない!ぢぐしょー! いつかまたここに泊まりたい、いや泊まってやる!と心に誓って起き上がり、朝食を食べに食堂に行けば家族連れと走り回る子供たちがあっちにもこっちにもよ。あーあ、ここに泊まることがふつーな人がいるんだよね。
お米の値上がりにビックリ
が、ところがよ。現実は厳しいわ。年下の仕事仲間のWさんから「お米、大丈夫ですか?」とLINEがきたの。「米の卸をやっている友人から、節分くらいから、10kgあたり1000円くらい米の価格が上がるとの情報が入り、涙目です。備蓄米って本当に放出されるんですかね。野原さんのほう、何か情報入ってますか?」だって。あわててスーパーに行ってお米コーナーを見たら、えーっ、本当に1000円高くない?
でも若いWさんは知らないんだよ。30年前に極端な米不足の年があって、政府はタイ米を輸入したりして、雑誌ではタイ米の美味しい食べ方の特集をしたの。その時に備蓄米が放出されたことがあって、「標準米」という言葉と値段につられて買ったんだわ。その想像を絶する不味さといったらなくて遠くから腐った糠の臭いまでしたので「どうにかならないか」と買ったお米屋さんに苦情を言いに言ったわよ。そしたら「公園の鳩は喜ぶと思いますよ」だって! お米屋さんが言っていいことじゃないと思うけど、ま、これが現実だったんだよね。
今、中国は春節で私が住んでいる秋葉原は中国語が飛び交っている。どうかおいしい日本の米を大量にお土産にしませんように、なーんてね!
◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
【347】67歳オバ記者がハマる「炭火」、お餅をのせたら…「素材の味をグンと引き立たせるんだわ」。