柴犬は3頭に1頭が皮膚疾患で動物病院にかかる
柴犬もまた、多くの病気で他犬種より受診実績が少ない。ただし、皮膚疾患と緑内障は他犬種より発症しやすい傾向がある。
「認知症も多いです。柴に限らず、高齢の日本犬に多いことが分かっています。認知症はご存じのように、脳の老化によって認知機能が衰え、ぼんやりしたり、昼夜逆転の生活になってしまったり、夜鳴きや失禁、徘徊などをしたりするようになる病気です。治療法は確立されていませんが、投薬で進行を遅らせたり、症状を緩和したりすることは可能です」

認知機能が衰えた犬がつまずいたりぶつかったり狭いところに入り込んだりしないように環境を整えることも大切だ。軽い運動で脳を刺激したり、病気が重篤になってきたら食事や排泄の介助をしたりと、この病気と付き合う上で飼い主さんが果たす役割は大きい(関連記事1、関連記事2)。
また、柴犬では皮膚疾患全般が他犬種より多い。1年間に1回でも皮膚疾患で動物病院にかかる柴犬は、3頭に1頭ほどの割合という。犬全体では4頭に1頭ほどだ。
特にアトピー性を含め、アレルギー性の皮膚疾患が高リスクだが、原因不明の痒み、脱毛、炎症、さらには指の間や肉球に炎症が起こる趾間(しかん)皮膚炎も他犬種より発症しやすいというデータがある。1~2歳頃から動物病院にかかることが多いようだ。
「アレルギー性の場合は、アレルゲンを犬の生活環境から除去して、薬やサプリメントを使って症状を緩和します。シャンプー療法を行うこともありますね。皮膚疾患は原因が多岐にわたるので、検査に時間とコストを要します。原因が特定できると、効果的な治療ができ、場合によっては早期に完治することもあるので、飼い主さんには検査の重要性をご理解いただけると、現場としてはありがたい限りです」
緑内障もまた柴犬に多い病気だ。目の角膜と水晶体の間を循環している眼房水の排出が滞り、眼球内に水が余分に貯まって眼圧が高まることでさまざまな症状を引き起こす。点眼薬や内服薬で眼房水の排出を促したり、眼房水の生成量を減らしたりする治療が中心だ。
「緑内障も予防法といえるものはないですが、白目のところが充血していたり、瞳孔が開いていたりといった見た目の変化に気づいて早期に治療につなげられれば、失明に至るのを食い止められる可能性が上がります。瞳孔の奥が緑色に見えたり、赤く見えたりすることもありますね」
◆教えてくれたのは:獣医師・鳥海早紀さん

獣医師。山口大学卒業(獣医解剖学研究室)。一般診療で経験を積み、院長も経験。現在は獣医麻酔科担当としてアニコムグループの動物病院で手術麻酔を担当している。
取材・文/赤坂麻実
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