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「今、自分の人生を精いっぱい生きることが何よりも大事なんだ」――10代の少年少女たちへ、歌手で俳優の杉良太郎は切々と語りかけた。
2月18日、東京・文京区の郁文館夢学園で杉が声優を務めたアニメ映画『親鸞 人生の目的』(2月28日公開)の上映会が開催され、作品を鑑賞した同学園の中高生約280名へ向けて、講演が行われた。子どもたちの生きる力を育む教育の一環に、「夢の達人」として招かれた杉。80才で初めてアフレコに挑戦した経験から“挑戦の達人”と紹介を受けた。
映画は浄土真宗の宗祖とされる「親鸞」の苦悩や葛藤に焦点を当て、「人はなぜ生きるのか」をテーマにしている。杉は主人公である親鸞聖人の晩年の声を務めた。生徒たちとまっすぐ向き合った杉は、「人生はほとんど、苦労と我慢の連続。時折、心の中へスッと入ってくる、ひとしずくの幸せを感じるために生きている」と語りかけ、「あなたたちと同じ10代の頃の話」として、1日3食カレーを食べながら元日以外の364日働き詰めだったカレー店での奉公や、その日暮らしで職業紹介所へ足を運んだ経験を明かした。
苦労の連続もすべては「お父さん、お母さんの生活を楽にしたい一心だった」と回想。自分たちと同じ年頃で杉はすでに人生の目的があったと聞くと、生徒たちの表情も引き締まった。杉は、「どんな時も、自分にとって、その環境で何ができるか」を考え続けてほしいと、訴えた。
そもそも儲け話なら人に教えません
「自分はどうしたら親のために稼げるか。いくつも職業を経験して、考えた末に、自分にできることは歌手だと思って、上京しました。その後は俳優として顔を売るために、撮影所のトイレの前でプロデューサーが通るのを待ったりもした。芸能界へ入るのも、渡っていくのも大変だった。でも、その時々で自分ができることは何かと考えて行動して、今日までやってきました。社会貢献や福祉という言葉は死語だけど、損得勘定ではなく、自分が誰かのためにできることがあれば、行動するのみ。その反発心が原動力となっている。
一人ひとりの人生は、この1度きりしかない。今、自分の人生を生きることです。そのために、できることは全部やってみる。皆さんも、そこのところをよく考えてほしい。ここで行動しなければ、一生出遅れてしまいますよ」
杉は準備された椅子に座ることもなく、身振り手振りを交えながら、語り続けた。警察庁・特別防犯対策監でもある杉は、ミャンマーで日本の高校生が特殊詐欺に加担させられたとみられる事件を挙げ、「ネットにおいしい話がいっぱい出てきますけど、そもそも儲け話なら人に教えません。詐欺グループに捕まったら、一生台無しになる。命を落とすことだってある。自己責任として、嘘か本当か、見極める力はすごく大切です」と、警鐘を鳴らした。