健康・医療

【花粉シーズン突入へ】大人だけでなく子どもも悩む「花粉症」 医師が解説する「舌下免疫療法」のススメ 治療法は「1日1回錠剤を舌の下で溶かすだけ」

大人だけでなく子どもも悩む「花粉症」 (写真/イメージマート)
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鼻がムズムズ、目はショボショボ……今年も花粉症患者が増える時期となった。日本気象協会によると、東京や神奈川、静岡などではすでにスギ花粉の飛散が始まっているという。花粉の飛散量は、2024年のおよそ1.5倍になるとみられている。

そうした中、最近増えている「子どもの花粉症」。近著に『子どもの一生を決める花粉症対策』がある医師の村川哲也氏はこう解説する。

「花粉症にかかっている子どもの多くは、治療を受けずにそのまま放置されています。大人と違い、症状が出ても花粉症だと自覚しておらず、親御さんも気づかないことが多いのです。重症化する前に対策をすることが肝要です」

今回は、村川氏の前掲書から、子どもの花粉症対策にお勧めだという治療法のひとつ「舌下免疫療法」についての解説をお届けしよう。

「舌下免疫療法」とは?

みなさんの中には「舌下免疫療法」というワードを聞いたことがなかった人もいたかもしれません。舌下免疫療法とは読んで字のごとく、舌の下を使って治療をおこないます。

では、どんな治療法なのでしょうか。端的にいえば、自分の免疫機能が花粉に過剰反応しないようにするための治療です。使うのは、アレルギーの原因となるアレルゲンを少量含んだ錠剤で、スギ花粉用とダニ用の二種類があります。スギ花粉用を服用すれば、ヒノキ花粉症にもある程度効果が期待できます。

なぜ、アレルギーの原因となるスギ花粉やダニといったアレルゲンを含んだ錠剤を使うのかというと、毎日少しずつ、アレルゲンに体を慣らしていくためです。

そもそも花粉症やアレルギー性鼻炎の場合、スギ花粉やダニといったアレルゲンに過剰に反応して発症します。このアレルゲンを少量ずつ体に入れていき、徐々に慣らすことで、過剰なアレルギー反応を起こりづらくする治療法を「アレルゲン免疫療法」といいますが、舌下免疫療法はそのうちの一つです。

じつは、このアレルゲン免疫療法は100年以上前からおこなわれていましたが、それは治療薬を皮下に注射する「皮下免疫療法」でした。これは病院でないと受けることができませんし、注射が嫌いな子どもたちにとっては難しい治療法でした。

ところが近年、舌の下に治療薬を入れて治療する舌下免疫療法が登場したことで、自宅でも治療ができるようになり、患者さんの負担もずいぶん軽くなったのです。

抗ヒスタミン薬やレーザー治療と舌下免疫療法の違いは?

舌下免疫療法は対症療法ではなく、根治を目指す療法です。

抗ヒスタミン薬やレーザー治療でも花粉症の症状は軽減しますが、あくまでその効果は一過性のものになります。

薬はあくまで症状をおさえるもので、服用をやめればまた症状が出てきますし、レーザー治療もしばらくすると元に戻って、再びアレルギー症状が出てしまいます。

よく「漢方で体質改善」といわれますが、基本的に漢方も薬なので飲み続けないと効果は出ませんし、やめると症状が再び出るようになります。つまり対症療法なので、根本的な体質改善にはならないのです。

しかし、舌下免疫療法はアレルゲンに体を慣らして、過剰な免疫を出にくくする、根治を目指す治療です。

子どもでも安全に治療をおこなうことができるので、花粉症を発症したなと思ったら、すぐにでも治療を開始することがオススメです。

舌下免疫療法は、スギ花粉症またはダニアレルギー性鼻炎と診断された患者さんが受けることができます。 対象年齢は幅広く、子どもでも5歳以上であれば受けることができます。

舌下免疫療法は錠剤で治療しますが、抗ヒスタミン薬のような眠くなる副作用がありませんし、また口の渇きも起こらないので、日中授業で集中力が必要な小学生以上子どもには特に向いているといえます。

また、根本的に体質改善をしたいと思っている人にも舌下免疫療法は適しています。

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