親が思う「平等」と、子供が求める「平等」はイコールではない
財産の洗い出しを終えたら、不動産を誰がどのように相続するかを具体的に話し合いたい。その場ではどんな点に気をつければいいだろうか。前田さんが言う。
「親は“平等”に分けたつもりでも、子供はそう受け取らないケースが多い」 その典型例が、子供(親にとっての孫)がいるきょうだいと、子供がいないきょうだいの確執である。
「親はどうしても孫がかわいいから、生まれたときのお祝いや教育資金などを提供することが多い。それでいて家族会議の場で親が『財産はきょうだいで平等に分けてほしい』と口にすると、子供がいないきょうだいは不公平に感じ、自分の取り分を多くするよう求めるケースが目立ちます。売り言葉に買い言葉で子供がいるきょうだいが、『産まない選択をしたのはあなただ』などと食ってかかり、泥沼のトラブルに発展しやすい」

兄は大学を卒業したのに弟は大学に行けなかったケースなどでも、家族会議で親が“平等”な遺産分割をめざすと、弟が「兄さんばかり優遇されているじゃないか」と猛抗議して家族の絆が壊れやすい。
「過去の教育費や婚姻費用、生活援助など、親からもらったお金の額がきょうだいで異なると、相続の際に揉めることが多くなります。親からお金をもらっていない人ほど過去のことを覚えていて、不平不満が爆発して感情的なしこりが残りやすいのです」
また、ひとりだけ実家の近くに住んでいたきょうだいに親の介護負担が集中したり、きょうだいの世帯収入に差があったりする場合も、親が金額に差をつけずに相続させようとすると思わぬ反発を招き、骨肉の争いになってしまう。
また、親の平等志向だけでなく現実の遺産の内容によっても「争続」は生じる。特に多いのが、「財産は実家だけ」というパターンだ。
たとえば、親が亡くなると相続人が兄と妹の2人だけで、遺産が「預貯金2000万円のみ」だったら、兄と妹で1000万円ずつ等分すればいい。しかし同じ額でも、遺産が「資産価値2000万円の実家のみ」の場合は事情が異なる。
「このケースで親と同居する兄が自宅を相続すれば、取り分がない妹は当然納得がいかないでしょう。このように“分けられない遺産”がある場合は相続トラブルが起きやすい。自宅に住む人がいなければ相続後に売却して均等に分ければいいが、住む人がいると問題がこじれます」
妹があくまで現金を望めば、法定相続分の1000万円を兄に支払わせる「代償分割」を法的に求めることができる。しかし、そのお金を兄が工面することができないと、最悪の場合、親から相続した自宅を売って妹に渡すお金を捻出することを強制されて、兄が住む場所を失うという地獄絵図が待っている。
資産を均等に分けるという視点だけでなく、それまでの親と子、孫とのかかわり合いや金銭援助、負担を加味したうえで話し合うことが必要だ。
相続では節税も大事だが、「残された者の気持ち」を忘れると本末転倒に
相続税についても学んでおきたい。親のどちらかが亡くなり、その配偶者が主に相続する「一次相続」にはさまざまな優遇策がある。
たとえば夫が亡くなった場合、妻は相続する財産が1億6000万円(ないし法定相続分)まで相続税がかからない。
「さらに夫(父)が自宅として使っていた土地を妻(母)や同居する子が相続する場合、相続財産としての評価額が80%減額される『小規模宅地等の特例』が使えるケースがあります」
ただし、夫や妻が亡くなり、ひとりになった親が亡くなった後の「二次相続」では一次相続にあったさまざまな優遇策がなくなり、相続税がドカンとかかるケースがあるので心したい。

相続では、「生前贈与」の非課税枠を使って節税する方法もあるが、不動産の生前贈与はあまりおすすめできない。
「贈与税は相続税に比べて基礎控除額が低く、かつ税率が高いため、不動産の生前贈与は避けるべきです。
ただし、将来価格が大きく上がりそうな不動産は、まだ価格が安いうちに生前贈与をして贈与税を払っておいた方が節税になる可能性があるので検討してもいいでしょう」(齊田さん)
もちろん節税は大事だが、「残された者の気持ち」を忘れると本末転倒になる。
前田さんが知る、ある3姉妹のケースだ。次女は父が亡くなった際、二次相続の負担を回避するため母に遺産を渡さず、3姉妹が相続するように仕向けた。ところが納得したかに見えた母は、本心では生活のために自分にも遺産を分けてほしかったという。
「これから娘たちに面倒を見てもらわないといけないお母さんは泣く泣く次女の提案をのもうとしましたが、最後の場面でついに本音を口にしました。すると自分の正しさを疑わない次女と、母の側に立つ長女、三女が激しく対立して、最終的に絶縁状態になった。
要は、節税も大事だけど気持ちも大事ということです。お母さんと次女が前もって充分な話し合いをしておけば、悲劇を避けられたかもしれません」(前田さん・以下同)
家族であるがゆえに一度こじれたら、なかなか元には戻れない。
「事前に夫婦で相続の方向性を話し合い、それがまとまってから子を含めた家族会議に臨むとスムーズです。そのうえで、たとえば長男に自宅を相続させる場合は、どういう理由によるのかをきちんと考えたうえで子供たちに伝える。丁寧な説明が何よりも求められます」
家族会議は一度きりではなく何度行ってもいい。心がけたいのは、時間をかけてじっくり話し合うことだ。
「現実に家族会議の場で揉めることもありますが、まずはお互いの意見を傾聴すること。腹を割って話し合い、揉める要素が見つかったら、次回以降の話し合いで妥協案を出すなどして、少しずつ前に進めばいい。
家族会議の際はメモ書きや箇条書きでいいので内容を記録し、2回目、3回目の会議で『この件は前回、こんな話になったよね』などと確認しながら進めていくと、よいゴールを迎えられるはずです」(太田さん)

(後編に続く)
※女性セブン2025年3月27日・4月3日号