
有名観光地は訪日外国人でいっぱいで、ゆっくり旅ができないと感じることが増えた昨今。今回は、期待以上の魅力があり、ゆっくり観光を楽しめて、お財布にも優しい“穴場観光地”を、旅行ジャーナリストの村田和子さんが紹介する。
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春の桜シーズンは、いつにもまして海外からの旅行者が増える時期。有名観光地は人であふれ、宿泊費も高騰し、旅がしにくくなったと感じる人も多いことでしょう。でも日本には、まだ知られていない素晴らしい観光地がたくさんあります。筆者が最近訪れた中から、期待以上でぜひ訪れてほしいと思う穴場スポットを紹介します。いずれも城下町とあって歴史・風情があり、宿泊費も有名観光地と比較してお得!(※宿泊料金は2025年3月27日現在。時期や予約状況により変動します)
秋田市(秋田県)~歴史と自然が織りなす街中は散策にぴったり
秋田市といえば夏の「竿燈まつり」が有名ですが、「他には何があるの?」という方も多いのでは? 実はあまり知られていませんが、JR秋田駅から徒歩圏内には、歴史や自然があふれるスポットが多い穴場。特にアートや建物好きな人は、一度は訪れたいスポットで、ひとり旅にもおすすめです。

まずは、「千秋公園」(JR秋田駅から徒歩10分)。源氏の流れをくむ秋田藩主佐竹氏が関ヶ原の合戦後に神明山に築いたお城の跡が、千秋公園として整備されています。一帯も城下町として栄え現在もその歴史を感じられるスポットが残ります。小高い山になっており、史跡や景色も楽しめるとあって朝食前の澄んだ空気の中、散策するのが気持ちよくおすすめです。


千秋公園は、春は桜、秋は紅葉が有名ですが、筆者のイチオシは夏の蓮シーズン。城のお堀はたくさんの蓮が植わっており、お堀の上を歩けるように遊歩道が整備されています。

5月頃からは、水面に映る新緑と蓮の花のコラボが美しく、夏に向かい大人の背丈ほどに成長します。成長した蓮の中を歩くのは圧巻で、花を間近に眺める体験も貴重です。7月中旬~8月下旬には「千秋蓮まつり」が開催され、夜にはライトアップもされて目を楽しませてくれます。


他にも5月上旬~11月上旬頃は秋田犬と一緒に写真を撮れる「秋田犬ふれあい処 in 千秋公園」も千秋公園の二の丸で開かれます。近くでみる秋田犬の愛らしいこと! 気持ちもほっこりします。

そして公園と道路を挟んで向かいに佇むのが、「秋田県立美術館」。安藤忠雄氏の設計で、入った瞬間から空間美が素晴らしく、建築好きにはたまりません。2階にあるカフェは水庭を眺めながらのんびりと寛ぐのに最適。
収蔵品の目玉となるのが、藤田嗣治氏による大壁画『秋田の行事』(1937年)。縦3.65m、横20.5mもあり、四季折々の秋田の祭りや暮らしが丁寧に描かれ圧巻です。秋田市立千秋美術館も徒歩で行けるので、アート巡りも楽しめます。




さらに秋田市立赤れんが郷土館は、明治45年に完成した元秋田銀行の洋風の建物で重要文化財。秋田の文化・歴史を学べるのはもちろん、明治時代の建築美も楽しめるスポットです。


他にも、市内一帯には古い町並みや特徴ある建築が多く、内部が見学できる施設もあります。コンパクトなエリアにぎゅっと魅力が詰まっているので、徒歩やバスなどで気軽に回ることができます。


■アキタッチ+(秋田市観光・イベント情報総合サイト) https://www.akita-yulala.jp/
秋田市内はビジネスホテルが多い!「中通温泉 こまちの湯 ドーミーイン秋田」は散策に便利で温泉も楽しめる
秋田市内、特にJR秋田駅~千秋公園にかけてはビジネスホテルが多くひとり旅にも便利でおすすめ。価格も私は「中通温泉 こまちの湯 ドーミーイン秋田」にひとりで滞在しましたが、シングル素泊まりで1泊6千円代~とお財布にも優しい! 秋田駅から歩いてアクセスができ、千秋公園のお堀が目の前という好立地は観光にも便利です。

ホテルを出れば、目の前に、四季折々の自然を感じる開放的な景色が広がり、今回紹介した施設も徒歩で回ることができます。歩き疲れたら館内の情緒あふれる温泉でのんびりと癒せて、ゆっくりと旅時間を楽しめます。




■中通温泉 こまちの湯 ドーミーイン秋田 https://dormy-hotels.com/dormyinn/hotels/akita/
大洲市(愛媛県)~わざわざ訪れたい!伝統・文化を感じる情緒ある城下町
愛媛県大洲市は、江戸時代の町割と家並みが忠実に残された「おはなはん通り」、明治大正時代のなまこ壁の土蔵など、さまざまな時代の街並みが残る情緒満点の城下町。日本の伝統文化に興味のある欧米の訪日旅行者には人気のあるスポットですが、団体ではなく個人客なので、落ち着いた雰囲気でのんびりとした時間が流れます。


市の中央に流れる「肱川」では、ひじかわ遊覧も実施され、 山々の緑が映りこむ中をのんびり進む様子は、かつての京都・嵐山のゆったりとした雰囲気を思い出します。夏は鵜飼いも楽しめるとか。


大洲に行ったらぜひ訪れてほしいのが、臥龍山荘(がりゅうさんそう)。歴代藩主の遊勝地だった場所に、明治の貿易商が財を投じて築いた建築は、京都のように厳しい決まりに縛られず、職人の遊び心や挑戦心が随所に感じられる見事な建築は見ごたえ充分です。


■大洲市公式観光サイト【VisitOzu】https://jp.visitozu.com/
大洲市のまち全体がホテル?!プライスレスな滞在も手が届く「NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町」
宿泊は大洲城の城下町をひとつのホテルと見立てたホテル「NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町」はいかが? 価値ある古い邸宅や家屋などの歴史ある建物を、元の状況を活かしつつ、快適に過ごせるように水回りなどを修復・再生。街中に点在する客室は、それぞれ個性があり一つとして同じ客室はありません。

上質な体験ができる宿ですが、公式ホームページでは限定の優待プランもあり、例えば素泊まりのルームチャージなら3万円ほどから(2025年3月現在)。



唯一無二の客室での滞在、中庭を望む蔵を改装したラウンジではアルコールも含めたドリンクがフリーで楽しめるなど、プライスレスなひとときが過ごせます。昨今の宿泊費高騰の中、上質な体験に対してこの価格は良心的!大洲城のすぐ近くには、古くからの名士邸宅を改装したレストラン LE UN(ルアン)もあり、こちらは外来の利用もできます。
■NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町 https://www.ozucastle.com/
いかがですか? 混雑や価格の高騰で日本人が国内旅行をしにくいと感じることもありますが、地方はまだまだのんびりと観光ができるところもあります。この機会にあまり知られていない、自分だけのお気に入りスポットを探してみるのも楽しいですよ。
◆教えてくれたのは:旅行ジャーナリスト・村田和子さん

旅行ジャーナリスト。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力を媒体で発信。宿のアドバイザー・講演なども行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド(R)」を提唱、著書に「旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社・2018)」。現在は50歳を迎え、子どもも大学生となり、人生100年時代を楽しむ旅を研究中。資格に総合旅行業務取扱管理者、1級販売士、クルーズアドバイザーなど。2016年より7年間、NHKラジオ『Nらじ』月一レギュラーを
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