
温泉、自然、アートなど多彩な魅力あふれる神奈川県・箱根の地で、ミシュランガイドによる宿泊施設の評価「ミシュランキー」に選出された温泉旅館が、地元箱根の美術館と「食」を通じたコラボを始動。五感を刺激し、心もお腹も満たされる「大人の極上温泉旅」を旅行ジャーナリストの村田和子さんがリポートする。箱根で訪れたい大人におすすめの美術館やランチ情報もお届けする。
* * *
古より賑わう箱根には、歴史あるクオリティーの高い宿が多くあります。そんな箱根の地に、2020年に開業した「箱根・強羅 佳ら久」は、昨年アジアで初めて発表された「ミシュランガイドホテルセレクション」で1ミシュランキーに選出されるなど、注目を集める温泉旅館。
今回は、箱根小涌谷にある「岡田美術館」とコラボし、収蔵作品をオマージュした「アートなグリル料理」の宿泊プランが誕生したとのことでレポート。自然の中で、アート×美食、そして温泉と、箱根の魅力を余すことなく堪能した1泊2日の極上旅は、大人の箱根旅にぴったり。訪れた美術館やランチ情報もあわせて紹介します。
「岡田美術館」箱根最大級の展示スペースに名品がずらり!開化亭でランチも
小田急ロマンスカーで新宿から1時間半、箱根湯本駅からバスに乗り換えて向かったのは「岡田美術館」。旅の目的である「箱根・強羅 佳ら久のアートなグリル料理」のモチーフとなった作品を収蔵する美術館は、5階建て約5000平方メートルという箱根最大級の展示スペースに、絵画・陶磁器・仏教美術・青銅器など、約450点を展示。

伊藤若冲、喜多川歌麿などの日本を代表する作家の作品、縄文や弥生時代の土器など、収蔵品の数だけではなく、幅広さやクオリティの高さに驚きます。
中でも注目なのが中国・韓国、そして日本の陶磁器コレクション。特に江戸時代の柿右衛門様式や鍋島焼などの磁器の華やかな美しさは見惚れてしまうほど。館内はゆったりと自分のペースで鑑賞でき、アート好き必見のスポットです。


美術館の外からも鑑賞できるのが、現代日本画家の福井江太郎氏作の大壁画「風・刻(かぜ・とき)」。俵屋宗達の代表作「風神雷神図屏風」をもとに、640枚の金地のパネルに手書きで描かれた作品は、縦12m、横30mの大きさを誇り、「アートなグリル料理」のモチーフとなる作品。じっくり鑑賞し記憶に刻んでおくと夕食時の楽しみも広がります。


館内は広く再入場もできるので、美術館に併設の「開化亭」でランチやティータイムを挟みながら、じっくり鑑賞するのがおすすめです。


■岡田美術館 https://www.okada-museum.com/
ミシュランキーに選出されたラグジュアリー温泉旅館「箱根・強羅 佳ら久」へチェックイン!
岡田美術館をあとにしてバスで強羅駅へ。そこから歩いて3分で「箱根・強羅 佳ら久」に到着。館内は、箱根の自然をモチーフにしたアートワークや伝統工芸を使った内装、刻一刻と変わる自然と調和した空間など、箱根の魅力が満載で、美術館の続きのような心ときめく体験は、知的好奇心をくすぐります。



客室は全室に、箱根の山々を望むバルコニーと露天風呂があり、広さも56平米以上とゆったり(※バルコニー含む)。寝室に続くようにリビングスペースが配され、その向こうには箱根の山や遠く相模湾を望む絶景が広がります。




本館最上階にある2つの展望露天風呂は、明星ヶ岳や大文字など箱根連山を望むビューが素晴らしく非日常感たっぷり。客室の露天風呂とは異なる源泉を引き、男女が夜に入れ替わるので、館内にいながら、さまざまなロケーションで温泉が楽しめます。


「箱根・強羅 佳ら久×岡田美術館」作品をオマージュした至福のグリル料理を堪能
いよいよ今回の旅の目的「岡田美術館学芸員監修の料理説明で味わうグリルコース」を頂くべく、グリルレストラン 十邑(とむら)へ。岡田美術館とコラボした、収蔵作品をオマージュした特別なコースは、シェフが目の前で調理する料理と合わせる有田焼の器が見どころ。
料理に加え、作品や器についてシェフが説明をしてくれるライブ感あふれるひと時は、鑑賞した作品を思い出したり、江戸時代の旅に思いを馳せたり。料理を頂きながらさまざまな思いが頭を巡り、想像が広がります。

まずは金色のお盆に、風神・雷神が染付で描かれた器が登場し、昼に鑑賞した「風・刻」のイメージが蘇ります。器の中の料理は「京野菜のポトフ(京都)」と「琵琶湖鱒のミキュイ(滋賀)」。コースは、箱根に縁のある東海道を京都から江戸までさかのぼるようにご当地素材を使って進むというのもユニークで粋な試みです。

「伊勢海老のビスク」と合わせた有田焼は、岡田美術館に収蔵されている将軍にも献上していた最高級品の伊万里で作られた鍋島藩窯の色絵唐花文皿をイメージ。伊勢海老の赤と器の鮮やかな色調のハーモニーが美しい一品。

「グリルコースなのに?」と驚いたのがイタリアンの「鰻のタリアッテレ(浜松)」。鰻とパスタという組み合わせも珍しいですが、非常に相性がよく美味で印象に残る一品。ここからはグリル料理の本領発揮というべく「金目鯛の鉄板焼き」、「相州牛サーロイン」が目の前でダイナミックに調理され、その様は迫力満点。



〆の「しらすの高菜の焼きご飯」、デザートの「もなかアイスクリーム」まで、料理は岡田美術館の大壁画「風・刻」、あるいは収蔵品をイメージした有田焼の器が使われています。「料理の引き立て役ではなく、『器』が主役で料理を考えた」という通り、作品の世界観を体感し五感が刺激されるアートなグリルコースは、ぜひ現地でシェフとの対話を楽しみながら味わってみてください。
地元食材の美味な朝食。11時のチェックアウトまでのんびりと
朝食は、水のテラスを望む気持ちの良いメインダイニング「六つ喜」で和食を頂くことに。地元食材を使った「おばんざい」、焼き物の下田産の真鯵など、専用に釜炊きされたご飯がすすみます。

朝食後はゲストラウンジ間(AWAI)で、食後のコーヒーを頂き、チェックアウトぎりぎりまで館内を散策したり、温泉を楽しんだりとのんびりと過ごしました。


自然、温泉、アート、美食、絶景と、箱根の魅力を存分に味わえる箱根・強羅 佳ら久での滞在は、ミシュランキー選出も納得するクオリティーと心地よさ。夫婦旅や大人の家族旅行はもちろん、記念日旅行など特別な時にもおススメです。
■箱根・強羅 佳ら久 https://gora-karaku.orixhotelsandresorts.com/
「岡田美術館学芸員監修の料理説明で味わうグリルコース」
https://gora-karaku.orixhotelsandresorts.com/news/9616/
5月11日(日)泊まで上記料理で提供。以降料理内容は変更予定
料金:2名1室利用、1名あたり7万2600円~(税込:1泊2食・岡田美術館入館券付)
強羅駅から送迎あり!「ポーラ美術館」で西洋絵画とアートなランチ
チェックアウト後は、箱根・仙石原にある、印象派を中心とした西洋絵画から現代美術まで多彩なコレクションを収蔵するポーラ美術館へ訪れることに。


モネ、ルノワール、ピカソといった印象派・ポスト印象派の巨匠の収蔵が充実しており、5月18日までは企画展「カラーズ―色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ」を開催。

森と調和するように設計された美術館の建築も素晴らしく、森の中に彫刻が点在する「森の遊歩道」は、アートを楽しみながら箱根の豊かな自然を満喫でき、リフレッシュにも最適。


旅の終わりは、美術館内にある「レストラン アレイ」で少し遅めのランチを頂くことに。季節のワンプレートランチは、本格的な料理が少しずつプレートに絵のように盛り付けられ、ノンアルコールカクテルがついて2700円。山、森、アートを望む白を基調としたスタイリッシュなレストランで、アートなランチを頂きながら今回の旅を振り返り、帰途へとつきました。


■ポーラ美術館 https://www.polamuseum.or.jp/
箱根は魅力的な観光施設が多くつい予定を詰め込みがちですが、大人の箱根旅では、上質な宿にゆっくりと滞在。観光も欲張らずに数を絞り、深く味わうのがおすすめです。首都圏からもアクセスが至便なので、季節を変えてリピートするのもいいですね。
◆教えてくれたのは:旅行ジャーナリスト・村田和子さん

旅行ジャーナリスト。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力を媒体で発信。宿のアドバイザー・講演なども行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド(R)」を提唱、著書に「旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社・2018)」。現在は50歳を迎え、子どもも大学生となり、人生100年時代を楽しむ旅を研究中。資格に総合旅行業務取扱管理者、1級販売士、クルーズアドバイザーなど。2016年より7年間、NHKラジオ『Nらじ』月一レギュラーを
●《朝ドラ『あんぱん』で注目》「高知県」を満喫する旅 観光列車やホテル、スポットを旅行ジャーナリストが紹介
●《1泊1万円代とコスパ抜群》夫婦や母娘で行きたい大満足の【個性派温泉宿】3選「温泉」「絶品の食事」「ユニークなデザイン」魅力を旅行ジャーナリストがレポート