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《火災保険はいらない?》止まらない保険料値上げに、加入者の想定通りに保険金が下りないケースも…“無駄なく損なく”火災保険に入る方法を専門家が解説

今年月、岩手県大船渡市で発生した山林火災で焼けた集落(写真/時事通信社)
今年3月、岩手県大船渡市で発生した山林火災で焼けた集落(写真/時事通信社)
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暖冬に猛暑など、気候変動による豪雨で水害や土砂災害のリスクが高まっている。各地の山林火災のニュースも記憶に新しい。そうした災害リスクを幅広くカバーしてくれる火災保険は心強い味方だが、近年の保険業界に望ましくない変化が表れているという。

値上げが止まらない

この冬に各地で被害をもたらした大規模な山林火災や、昨年に東北地方などを襲った線状降水帯の発生に伴う河川の氾濫。自然災害のニュースを耳にする機会が増え、火災保険への関心が高まっている。“いざというときに、建物から家財まで幅広い損害を補償する”というのが、火災保険のうたい文句だからだ。

ところが昨今、私たちの生活を守ってくれるはずの火災保険に“異変”が起きている。埼玉県で戸建てに住むYさん(55才)が嘆く

「昨年の秋に火災保険の契約を更新したのですが、前回の更新時に比べてずいぶん高くなっているように感じました。食品やらガソリンやらがどんどん高くなって出費がかさむ中、家計にとっては大きな痛手で…。万が一に備えて更新はしましたが、年金暮らしになってからも払い続けられるか不安です」

実際、火災保険料は値上げの一途で、昨年10月には大手損保4社がさらに平均1割の引き上げを発表。全国でアパートやマンションを保有する不動産投資家のNさんも憤る。

「これまでは10年という長いスパンで入れた火災保険ですが、ここ数年で最長契約期間が5年に短縮され、いつの間にかほとんどの保険会社の商品が3年までしか入れなくなりました。契約期間が長いほど保険料は割安になるので、これは実質的な保険料の値上げを意味します」

こうした背景には、先行きが見えない自然災害の頻発で保険金の支払いが増加し、保険会社の収益が悪化しているという状況もある。ただ、毎年のように値上げが繰り返された結果、「火災保険に入らない」選択をする人も出てきている。

火災保険
「火災保険に入らない」選択をする人も出てきている(写真/PIXTA)
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「現在、火災保険は過渡期にあると思います」と話すのは、不動産や保険業界の事情に詳しい、さくら事務所ホームインスペクターの田村啓さんだ。

「従来の火災保険は全国一律の基準で運用してきましたが、物件ごとに状態も災害のリスクも異なるのに、同じ掛け率や条件にするのはおかしいという指摘も上がっています。近年、水災の特約はリスクに応じて大きく5区分に分類されるようになりましたが、今後も細かな見直しが進むと考えられます」

「保険金を出さない努力」に余念がない!?

それでも、いざというときに家や生活を守ってくれるならいい。Nさんは、「最近の保険会社は加入者のことを考えているとは到底思えません」と嘆く。

「保険申請をしても、以前は下りていた保険金が下りないんですよ。私の所有物件で、インターネットの設備が落雷で動かなくなったことがありました。気象データの証拠もありますし、設置して2年しか経っていない機器なので故障は考えづらい。ところが、保険会社は別の気象データを引っ張ってきたのか、“その日時にそのエリアで落雷の事象が認められない”と主張してきたのです」

Nさんは保険会社の担当者と押し問答を繰り返し、データや写真も提出したが、保険金は下りず、修繕費の20万円は全額負担する羽目になった。千葉県在住のKさん(60才)が言う。

「夏のゲリラ豪雨で床上浸水し、家具や家電も水浸しに。一部は壁の張り替えも発生したので保険会社に連絡したのですが、“水道管の経年劣化によるもの”として、マンションの管理組合に補償してもらうよう言ってきました。わけもわからず管理会社に連絡しましたが、マンション自体に保険金が下りないので補償できないと。結局、誰に相談しても“できない”の一点張りなので、自費で壁や床を張り替え、家電を買い替えました。これではなんのために保険に入っているんでしょう」

不動産投資家の内本智子さんも、自身の投資物件で起きた経験をこう話す。

「私が管理する一室で無断で猫を多頭飼育され、5か月間居住した揚げ句、家賃を1回も払わずに夜逃げをされた例がありました。猫を飼っていたと思われる部屋は畳に糞尿が染み込み、猫のトイレのあった和室の押し入れも汚物にまみれ、壁紙やふすま、障子は引っかき傷で悲惨な状態でした。

このような突発的な汚損も、火災保険の保険金の支払い対象になる場合があります。原状回復に通常は50万円ほどかかるリフォームを創意工夫してなるべく安く抑えましたが、保険金が下りたのはたったの11万円ほどでした」

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