寝たきり高齢者の布団の中で繁殖
この先、さらに懸念されていることもある。
「ネズミは食品添加物やホルモン剤をたっぷり含んだ加工食品も餌にします。ドブネズミは、まれに死んだ仲間を共食いするケースがあり、栄養価の高いネズミを食べたネズミがさらに巨大化する可能性があります」(科学ジャーナリスト)
ネズミの変化を感じているのは、駆除業者ばかりではない。都内の住宅地に暮らす30代女性が、ため息交じりに話す。

「マンションの前に立つ桜の木の枝が、私の住む4階の部屋にまで届きそうなんです。あるとき、風もないのに桜吹雪が舞った気がして目を凝らすと、木の枝の上から何かがジャンプして、部屋のベランダまで跳んできたんです。よく見たら大きめのネズミで、心の底からビックリしました。部屋の中に入られそうで気持ち悪い……」
日本ペストコントロール協会の理事・谷川力さんも、驚きの現場をこう明かす。
「ある高齢者の住宅では、ヘルパーさんが作った食事をネズミが先に食べてしまうという問題が起きています。寝たきりの高齢者の布団の中にクマネズミが巣を作り、子ネズミが生まれていたこともあります」
東京都は2003年に、ケアマネジャーを対象に「高齢者宅におけるネズミ被害」に関するアンケート調査を実施。74.5%が「過去1年間に介護支援サービスの利用者宅でネズミ被害があった」と回答し、高齢者の生活全般にネズミが悪影響を及ぼしていることが明らかとなった。高齢化が進む現在、2003年当時から状況が改善されているとは考えにくい。高齢世帯では掃除が行き届かないケースがあり、ネズミ被害が拡大することも起こりうる。ネズミ被害を避けるにはどうすべきか。
「重要なのは整理、整頓、清掃の徹底」と指摘するのは、害獣駆除を行う「防除研究所」専務の田辺篤志さんだ。
「当たり前だと思われるでしょうが、実際に被害に遭っている家屋を調査すると、モノが乱雑に散らかり、清掃が行き届いていないケースが多い。また近年の家屋は断熱効果などで室温管理もされていてネズミにとっても居心地のいい環境となり、一度侵入したら天井裏や壁内などに生息して繁殖を繰り返すケースが目立ちます。ネズミ被害に気づいた段階で専門業者に頼むなど、早めに手を打つことが欠かせません」
ネズミはすぐそこまで迫っている。



※女性セブン2025年4月24日号