社会

《「どうせ中国人だろ」の声も》おたる水族館のベビーカー盗難騒動「日本人なわけがない」犯人の“国籍”を巡る論争に警鐘

ベビーカー紛失を伝えたX(おたる水族館の公式「X」より)
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北海道・小樽市にある「おたる水族館」は年間40万人が訪れるという道内最大級の水族館。日本海に面した大自然の中に位置しており、海を仕切っただけのダイナミックなプールでは野生に近い状態で暮らすトドやアザラシなどの海獣類を鑑賞できる。大小70基余りの水槽には250種類ものさまざまな生物が展示され、愛らしいイルカやペンギンのショーも人気だ。

そんな魅力の詰まったテーマパークから、眉をひそめたくなるニュースが飛び込んできた。

《お知らせ 当館にて無料でお貸出しているベビーカーが2/4(日)と3/17(月)に2台が相次いで行方不明になりました。このような事が続きますと、今後の貸出について考えなければなりません。ご来館時、ベビーカーなどを使用された場合、正面入口へご返却をお願い致します。》

3月23日、「おたる水族館」の公式Xアカウントにこのような文章が投稿されたのだ。この投稿はまたたく間に拡散され、多くのメディアがこぞって報道した。

概要をまとめると、同水族館では出入り口近くに無料貸し出し用のベビーカーがもともと7台置かれており、そのうち2台が短期間で立て続けに紛失。それぞれ約7万円、約5万円と高価なベビーカーだったという。来館者が使用する際に記名などの手続きは不要だったため、誰かが借りて返却しなかったことが想定されるが、その人物を特定することは不可能な状況になっている。

ネット上では、「善意を踏みにじる悪行」「窃盗をする親に育てられる子供の未来が心配」など、怒りや悲しみの声が飛び交っているが、その中には「ベビーカーを盗むなんて日本人じゃありえない」「どうせ中国人だろ」「インバウンドにはこうしたデメリットがある」といった外国人観光客を疑う声も目立つ。

日本人客によるホテル備品の盗難も以前からあり、いまもある

いわゆる「インバウンド」は2010年代から増加の一途をたどり、コロナ禍前の2018年と2019年は訪日外国人観光客の数は年間3000万人を超えたが、国別では中国からの訪日客数が断トツ1位だった。当時、中国人観光客の“爆買い”が日本経済に大きく貢献した一方で、日本滞在中の彼らのモラルの低さも問題視されていた。

長年にわたり国内の様々な宿泊施設を取材してきたホテル評論家の瀧澤信秋氏が語る。

「インバウンドの増加に伴い、国内のホテルや旅館の関係者から“外国人観光客が備品を持って帰ってしまう”という被害の話を聞くことが増えました。灰皿やコップといった小物に加え、ドライヤーが持ち出されてしまうケースも多かった。そのため、ドライヤーのコンセントを壁の中に埋め込んでしまうホテルも増えたのですが、コードを切断してまで持ち出そうとする外国人客もいたそうです。

その他、客室内の小型冷蔵庫やテレビ、枕やシーツなどの寝具が持ち去られてしまうケースもあるようです。

ただ、ホテルの備品盗難のうち、外国人客によるものが何件あるのか、全体の何パーセントなのかといった統計やデータがあるわけではないので、ホテル備品盗難増加=外国人客増加という相関関係は推測の域を出ませんが、日本人客によるホテル備品の盗難も以前からあり、いまもあることは言うまでもありません」