【7】ペットのための保険を活用する
「飼育費用を試算したところ、充分な蓄えがないという場合は、保険を活用するのも手」と言うのは、富田さんだ。
「飼い主が亡くなった、または重度の障害になった場合などに支払われる保険があります。受取人は、親族以外の人や団体でも可。支払われた保険金はペットの飼育費にあてられます」
保険の中には飼い主が入院したときに、飼い主へ入院給付金を支払うものもある。ネットで「ペット 飼い主 入院保障」などで検索してみよう。

【8】遺言やペット信託を結ぶ
「自分の死後、飼育してくれる人や団体に遺産を渡す場合、遺言書が必要です。遺言書を残した上でさらに役立つのが、『ペット信託』です」
ペット信託とは、自分に万が一のことがあった際に、信頼できる人や団体に飼育のための財産を託す契約を結ぶ制度のことだ。
「委託された財産は、飼育以外には使うことができません。心配な場合は、財産管理と飼育を見守る『信託管理人』を置くこともできます。
信託管理人は、弁護士や行政書士が担うことが多いのですが、彼らへの報酬も別途必要となります」

【9】ペット可の高齢者施設を探す
「ペットと一緒に入居できる高齢者施設は、全国にあります」と富田さんは言う。
「ネットで検索したり、利用予定の候補施設があるなら問い合わせてみて。気になる施設は実際に見学してストレスのない環境かどうかを確認しましょう」
ペット可の施設は、民間の場合、入居費用が高額なケースも。
「ペットと一緒に入居可能な施設でも、飼い主が亡くなった後は遺族に返されます。そうなってから遺族が困らないように、これまで見てきたさまざまな準備を怠らないことが大切です」
【10】老犬・老猫ホームを探す
老犬・老猫ホームというと、高齢の犬や猫が対象のようだが、「実は多くの施設が全年齢のペットを受け入れています」と、東京ペットホーム代表の渡部帝さんは言う。
「高齢の飼い主などから『飼育が困難になった』と相談を受けて、必要に応じて預かり、飼育をします。
一生、飼育をすることも一時的に預かることも可能。会いたくなったらいつでも会えます」(渡部さん)
費用は施設やペットの種類、年齢、介護度により異なるが、年間100万円程度になる。

【11】自分の見守り先も考えておく
「大事なペットを守るために、自分が倒れたときに気づいてもらえる『見守りサービス』の利用をふだんから考えるべき」と、富田さんは話す。
「民間の総合警備会社の中には、室内にセンサーなどを設置し、一定期間動きがなければ異常と判断して駆けつけてくれるところもあります。
また、多くの自治体は高齢者の見守りサービスを実施しており、なかには費用の助成を行うところもあります。自治体窓口に問い合わせてみましょう」
【12】災害時の準備をしておく
ペットを「ひとりぼっち」にするリスクは、病気や死別だけではない。地震や浸水など災害時にペットが家に取り残されるケースも少なくない。愛犬家で知られる歌手の伍代夏子(63才)は、家が罹災し、避難所に行かなければいけないなどの事態に備え、自分自身の防災グッズと同様、愛犬の備えも欠かさないという。
「ウチの玄関には避難用のリュックが4つ並んでいるんです。主人(歌手の杉良太郎・80才)と私、カニンヘンダックスフンドの陸と空のものです。犬たちの分も最低3日分の食料と水を準備しています」(伍代・以下同)
伍代は、災害時に人とペットが同じ場所へ避難できる環境の実現を目指して、2023年より「りく・なつ同室避難推進プロジェクト」を立ち上げて、活動に励んでおり、防災グッズも同室避難を見据えている。そのひとつが、混合ワクチンや狂犬病予防接種証明書のコピー類が入った“陸くん&空くん用財布”だ。
「名前や犬種、生年月日からマイクロチップID、鑑札登録番号、抗体検査日などをすべてまとめた『ペット防災プロフィール』です。一括管理しておけば、避難所でペットの登録をするときに役立ちます」

これらはペットが行方不明になってしまった際に必要な情報だ。
「捜索は時間との勝負。写真入りのプロフィールがあれば、すみやかに周囲と情報共有できます。万が一に備えて、ペットの画像はスマホに保存しておきましょう。最近は飼い主情報などにアクセスできるQRコードが付いた迷子札もあって、陸や空にも付ける予定です」
そうはいっても現状ではまだまだペットの受け入れがない避難所は多く、自分がけがをしてしまえば一緒に避難できない場合もある。飼い主としてペットの預け先を確保することも考えておくべきだろう。
「親戚やかかりつけの動物病院の先生など、ペットになじみのある場所に相談して決めておくことをおすすめします。私が頼りにしているのは、犬のママ友サークル『犬バカ倶楽部』の仲間。ワンちゃん同士も仲よしで、預かり合いを通じてそれぞれの家にも慣れています。飼い主と離れて知らないところに預けられたら、ペットも不安です。『ママと一緒じゃなくても楽しい』とストレスなくお泊まりできる環境を備えておけるといいですね」
“ペットのママ友との親戚づきあい”も防災のひとつだと、伍代は語る。
「災害対策の基本は自助と共助。わが子のために持ちつ持たれつの信頼関係を築いておきましょう」
迷子になっても安心なサービスが続々!
「りく・なつ同室避難推進プロジェクト」のホームページにある「迷子保護・捜索用の画像生成ツール」を使えば、迷子の保護・捜索用のデータを作成、保存可だ。
https://www.riku-natsu.jp/maigo-hogo/
●「りく・なつ同室避難推進プロジェクト」とは
災害時に家族として迎えたペットと一緒に避難する重要性を発信し、「同室避難」実現へ向けて飼い主の意識を高める働きかけに取り組む。ホームページでは「ペット防災プロフィール」作成ツールなど、さまざまな防災情報を提供している。
ペットの詳細情報をウェブで管理できる

ペットの詳細情報をウェブで管理。発見者がQRコードで照会できる。捜索用のチラシを無料で作成するサポートも。防水素材の首輪タイプ。「QRペットプロフィール」小型犬向けで4070円~/迷子のお守りshop
飼い主へ地図で居場所を伝える発見連絡ツール

二次元コードを通じて飼い主へ地図で居場所を伝える発見連絡ツール。状況を画像で共有も可。首輪に装着型、サービスは1年有効(年間コスト2970円サービス料込)。「ミッケ calulu powered by おかえりQRペット」/calulu
◆ペットライター・富田園子さん
ペット関連の書籍を多数手がける。日本動物科学研究所会員。近著に『私が死んだあとも愛する猫を守る本』(日東書院本社)。
◆獣医師・奥田順之さん
獣医行動診療科認定医、犬猫の殺処分問題に取り組む「人と動物の共生センター」代表。テレビや雑誌などでも活躍。
◆「東京ペットホーム」代表・渡部帝さん
老犬・老猫などを預かり、ペットの介護などに携わる。
◆伍代夏子さん
63才。2023年には「りく・なつ同室避難推進プロジェクト」のアンバサダーに就任。音楽活動以外に旺盛な社会貢献活動を展開。
取材・文/廉屋友美乃、渡部美也
※女性セブン2025年5月1日号