
ローマ教皇フランシスコの葬儀が26日に営まれる。教皇の死後2~3週間の間に行われるのがコンクラーベだ。そんななか公開中の映画『教皇選挙』に注目が集まっている。以前バチカンにハマったというライターのオバ記者こと野原広子(68歳)はどう見たのか? オバ記者が綴る。
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バチカンに興味を持った40年前
「オバってさ、ときどき妙なものにハマるよね」と言ったのは誰だったか。一年に3回くらい言われるから覚えてないんだよね。「ギャンブルの次にハマったのが洋裁ってわけわかんない」と。
なんでそんなことを言うかというと、先日、映画『教皇選挙』を観に行こうと思い立ったとき、誘う人がすぐに思い浮かばなかったのよ。そもそも映画はひとりで観る派だけど、選挙の2文字を見るとムズムズする人はけっこういるけど、「信者でもないのになんで?」とそりゃ思うって。

私がバチカンに興味を持ったのは、もう40年も前になるんだね。1980年代の生意気な女たちの間に“塩野七生病”というのが蔓延したのよ。あの頃、イタリアの地方を訪れる日本人女性は「塩野七生の書いた世界をこの目で見たかった」と言ったんだよね。もちろん私もかぶれたひとりで、ルネッサンス期のバチカンのどろどろ歴史物語について書かれた彼女の著書『神の代理人』を夢中で読んだっけ。

ライター仲間と「映画感想ランチしない?」
その中でも忘れられないのがコンクラーベ、教皇選挙の話だったの。教皇が亡くなると次の教皇が選挙で選ばれる。となると、そりゃあ、表沙汰にできないことがいろいろあるでしょうよ。その秘密のベールがこの映画でどのくらい開かれたか。てか、法王庁は映画に協力したのか。
てことをぺちゃくちゃしゃべれるオバちゃんが、ひとりだけいた!ライター仲間のR子だ。彼女にLINEをすると彼女はすでに映画を観ていて数日後「映画感想ランチをしない」と言うことに。そしてさんざん喋り倒して家に帰ってきたらフランシス教皇が亡くなったというニュース! タイムリーにもほどがあるわよ。あの映画を観た人はみんな、さぁ、いよいよコンクラーベが始まるぞ、と思ったに違いない。
私が目を奪われたのは…
でね。この映画で私が目を奪われたのが、聖職者たちの衣装よ。太っちょの聖職者が身体のラインを隠さずにこんなにかっこよく見せるのはどんな仕掛けか。洋裁好きな私は気になって仕方がなかったの。
私の趣味の中で「それならわかる」と言う人がたまにいるのが都バス乗り。この日は午後遅くから時間が空いたので一日券500円を買って東京湾見物へ。お茶の水から東京駅丸の内へ行き記念写真を撮ったら東京ビックサイトへ向う。そして到着直前にバスの中からちょろっとだけ白く煙った東京湾を見たら、すぐに次のバス停に並ぶ。キャーッ、今日初めての水素バスだ。カッケー!と心の中で弾けて門前仲町へ。錦糸町、浅草、浅草橋って、バスを6本乗り換えてわが家にたどり着いた。

しかしなー。もう夕方の都バス乗りはやめようかと思ったの。午後7時過ぎ、仕事帰りのスーツにリュックの若いビジネスマンが吊り革につかまって揺られているのを見たら、意味なく座ってていいのかと思ったのよ。
自分の機嫌取りのために趣味はあるけれど、若い人の邪魔はいかん。そう68歳の私は反省したのでした。
◆ライター・オバ記者(野原広子)

1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
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