
ライター歴46年を迎えたライターのオバ記者こと野原広子(68歳)が、思わぬ出来事に遭遇した。道で定期入れが落ちているのを見つけたのだ。最近では、よかれと思ってとった行動でも疑いの目を向けられてしまうケースも少なくない。逡巡しながらオバ記者がとった行動は?
* * *
自宅から出たところにポンと定期入れが
警察沙汰っていうと不穏な感じ。出来ればどんな形でもお巡りさんとは関わりたくない。そう思って生きてきた私だけど、どうしてもってことが何年に一度はある。で、今回がそう。
自宅マンションの裏口から外に出たところにSuicaが入った定期入れが落ちていたのよ。車が一台通れるくらいの小道の真ん中にポンと。これを見た瞬間、私は通り過ぎようとしたの。というのも、わが身に置き換えたらそれがベストだと思ったからよ。
自分に置き換えて考えてみると…
たとえば家の前であるはずのカギがないことに気づいたとする。これ、年に数回はやるんだけど私はどうなるか。
「ギャーッ、ない、うそ! ない!」とまずはパニクる。パニクるとあるものも見えなくなるのは長年の落とし物歴で知っているから、「まぁ、落ち着け、落ち着け」と自分に言い聞かせてもう一度バッグの中を総ざらいして、それでも無いとなったところで深呼吸。どこで無くしたか、自分の行動を振り返る。そして目星をつけて来た道を戻りだす。
この時にいちばん望ましいのは、ポンと道端に落ちていることなんだよね。
「そうだ、そうだ、さっき小銭入れを取り出そうとバックの中を探った時に落としたんだ! ああ、あって良かった!」と、これが理想なの。誰の手も煩わせずに自分の元に戻ってきたって、これ以上のことがあるかしら。

私は68年、物心ついたときから落とし物、無くしものと縁が切れなかった。家の鍵、自転車の鍵、バイクの鍵。鍵という鍵はことごとく落としたり置き忘れたり。お財布だっていくつ無くしたかわからない。と言ってもたいがい中身は入ってて数千円。現金が入ってないと無意識のうちに財布から気持ちが離れるんだわね。てか、鍵だの財布だのを無くしたくらいで絶望していたら野原広子はやっていられない。なんたって初めての海外旅行でパスポートを置き忘れたんだから。で、ここまでヤラカシが多いとそのたびに人に迷惑をかけているんだよね。それがたまらないんだわ。

届けようと訪れた交番は「無人」
とまぁ、自分の恥はともかく、この定期入れをどうするか。私は見なかったことにして通り過ぎようとした時、急に気が変わったの。拾い上げると定期の有効期限までまだ半月はある。落とし主は困っているんじゃないか。まずは交番だ! が、うちの前の交番は滅多に警察官がいないんだよね。でも不意にいることもある。一か八か、やるか。ギャンブルで身を持ち崩した女は、変な時に勝負心が沸き立つんだわ。
さぁさぁ、どうだどうだ? 拾ってから交番が見えるところまで1分とかからない。結果は、負け! いつものように無人交番よ。さて、困った。これからかかりつけ病院まで行くつもりで家を出たのに、警察署は反対方面。そこまで歩いて戻ってきたらロスタイムはどんだけよ。負けも負け、大負けだ!
と、その時に頭をよぎった数字が110番! 前にマンションの玄関先で「自分の家がわからなくなった」と言うお婆さんを手助けした時に、この番号に電話したことを思い出したの。定期入れの落とし物をどうしたらいいかも教えてくれるに違いない。
110番! 電話に出た警察署の人に定期入れを拾って困っていると言うと、この電話を切って交番に入ってそこにある受話器を取れと、こう言うのよ。すぐにパトカーが駆けつけるからそこで待て、と。

いやいや、無人の交番に押し入るって、それはダメでしょ。戸を引いたとたん、ビーッと警戒音が鳴って、「はい、逮捕!」なんてことにならないか! ならないんだね。交番の戸はすんなり開いて、受話器を取ってからパトカー到着して警察官に定期入れを渡すまで10分足らず。「後はこちらで処理します。ご苦労様でした」と、これで放免よ。
交番は無人でも機能しているって、知らなかったわ!
◆ライター・オバ記者(野原広子)

1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
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