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オバ記者の“ボーイフレンド”80代男性が明かした「再び現れた不審者」の恐怖…年の瀬に増える危険と“暗がりに逃げ込む”悪人の心理 

年の瀬は犯罪や事故などの危険が増える(写真/イメージマート)
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 高齢者を狙った強盗が増えるなど、物騒な世の中になっている昨今。その危険は、すぐそばまで忍び寄っているのかもしれない……。女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子さんが、悪いことをする人の心理について綴る。

80代のBFが明かした恐怖体験

 あ〜あ、始まっちゃった。

 年末にかけて、日本全国、各地の目抜き通りはどこもかしこもキラキラキラキラ。こんなの木々のためにならない! 電気の無駄遣いだ!と文句を言いたいところだけど、木々は声を上げないし、電気代はわずかで、経済効果を考えると取るに足らないことなのだとか……。だからいまは、イルミネーションを見かけても、「ま、いいんじゃないの?」と伏し目がちにして足早に通り過ぎている。

 なんて話を先日、80代のBF(ボーイフレンド)に話したら、「あのキラキラ、防犯効果は抜群だと思うよ」と言うんだわ。というのも、東京都内の古い住宅街に住んでいる彼は、2024年の夏から秋にかけてすごく怖い思いをしたのだそう。

「1回目は昼間、ベランダの洗濯物を取り込もうとしたら、隣家との間の狭い通路に人がいる。それほど若くもない男がキョロキョロと周りをうかがっているから、『そこは通り抜けできませんよ』と声をかけたら、走り去って行ったよ」

「それで?」と私が身を乗り出すと、「ふつうの感覚のドロボーなら、声をかけられたらここはマズイと思って、もう来ないと思うだろ? でも、違うんだな」

夏から秋にかけて恐怖体験をする(写真/イメージマート)
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 その男は再び現れたそうな。

「トイレに入ったらガタッと音がするので小窓を開けたら、ちょうど男が窓に顔を近づけていた」。小窓が開くとは思わなかったのだろう、とBFは語る。男は目を丸くして今度も走って逃げたけれど、心臓に持病のある彼はショックでしばらくその場にうずくまってしまった。二度あることは三度ある。三度目の正直。次来たら、その男は必ず何かするだろう。

 その後BFは、人が近づくと自動で点灯する人感センサーを家の周囲に取り付けた。隣家との隙間に木戸を付けた。それでも2、3度、夜中に家の周りに人の気配を感じたそうだけど、あれから1年、何事も起きていない。

路地に逃げ込んだ年下の彼

 人は悪いことをするとき、暗がりに逃げ込む。当たり前といえば当たり前のことだけど、私はそれをこの目で見たことがあるんだわ。

 私が30代の頃のほんの短い間だけど、ずいぶん年下のKくんに言い寄られて交際に発展した。彼との共通の趣味が麻雀で、出会いの場は雀荘って、それだけでまともな関係になりそうもないけど、私も気持ちが浮き立っていたんだね。ある秋の夕方、彼がやって来て、「自転車で○○に行こうよ」と言うの。彼は見慣れない古ぼけたママチャリにまたがってニコニコしている。○○は開店したばかりの焼肉専門店で、私におごらせようとしているのは目に見えていたけれど、それでもママチャリで並んで夕暮れの街を彼と走ると思うと胸が高鳴った。

 そういえば私は、ロードバイクをスイスイと乗りこなすアメンボみたいな男にはちっとも興味を持てないけど、大きな男が背中を丸めてガニ股でママチャリをこぐ姿にキュンとくる。だから彼のちょっと後ろを走りながら、その姿をうっとり眺めていたら、突然彼がハンドルを左に切った。目的の店とは正反対の暗くて細い道を振り向き振り向き立ちこぎする彼の様子は尋常ではない。「どうしたのよ」と大声をあげようとしたとき、「止まりなさいっ」と叫びながら自転車に乗った警察官が私を追い越して行った。彼の乗っていたママチャリは盗難車だったのよ。が、警察官はそれをわかって彼を追いかけたのではない。無灯火を注意しようとしたら彼が一目散に路地に逃げたので追いかけたわけ。

 彼は逃げ切ったけど、これで済むわけがない。さらに、直後にバイクで交通違反を起こして、私に罰金を払ってくれと言う。かと思えば、けんかで相手を殴ってけがをさせて傷害罪で訴えられたり。吊り橋効果っていうの? 人は一緒に危険な思いをすると絆が深くなったような錯覚を起こすらしいけれど、私はそうじゃなかったんだね。てか、私自身がギャンブル依存症で、毎日危ない橋を渡っていたから、人の厄介ごとなんか背負い込んでいる余裕はなかったのよ。

 年の瀬になると、ふつうの人も何かに追い立てられているような気持ちになる。ふつうではない人の煮詰まり方はいかばかりか。身をもって知っているだけに、私はいま、暗がりは歩かないし、横断歩道の信号待ちは、最前列に立たないことにしている。

【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。

女性セブン20251225日・202611日号

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