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【友達以上、不倫未満】配偶者以外の“セカンドパートナー”を持つ人が増加「疑似恋愛の相手ではなく、自分を大切にしてくれるソウルメイトを探している」

「友達以上、不倫未満」のセカンドパートナーを持つ人が増加している(写真/PIXTA)
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「セカンドパートナー」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか。不倫、浮気、そう思う人もいるだろう。いま中高年女性の多くが求めているのは、そんな“不埒”な存在ではない。「友達以上、不倫未満」のプラトニックな“人生のソウルメイト”なのだ──。

「不倫」は、生涯を誓ったパートナーへの裏切り行為。だがいま、夫や妻を裏切ることなく、「2番目の伴侶」すなわち「セカンドパートナー」を持つ人が中高年を中心に増えている。

セカンドパートナー(セカパ)の名づけ親としても知られ、『友達以上、不倫未満』(朝日新書)の著者でジャーナリストの秋山謙一郎さんは、第2次ブームが到来していると解説する。

「セカパの最初のブームは2002年頃。ドラマ『婚外恋愛』(テレビ朝日系)など、既婚者同士の恋愛を描いた作品の流行などが影響したと考えられます。

『セカンドパートナー』という言葉を用いたのは2015年頃で、単なる不倫ではなく、既婚者同士が精神的なつながりを求めて、配偶者以外の異性と親密な関係を築くことを指しています」

セカンドパートナーとの関係は、時に「プラトニック不倫」とも称される。不倫との決定的な違いは、「肉体関係の有無」と「本来の配偶者を優先するかどうか」だ。

夫にバレてもやましくないのがセカンドパートナーだと話すのは、離婚カウンセラーの岡野あつこさん。

「あくまで“友人の延長”なのがセカンドパートナーです。不倫でも浮気でもなく、むしろ、その関係を“親友”“浮気相手”などとはっきり定義しないことが心地よさにつながります」

最初のブームから10年以上を経たいま、「セカンドパートナー」がなぜ再び求められているのか。

女性の方がセカパを求める

セカンドパートナーを求める男女が集う既婚者限定のマッチングアプリ「Healmate」では、2023年末に約5万人だった会員数は、翌年11月に約25万人、現在は約30万人にものぼり、わずか1年で会員数が5倍になった。同サイトを運営するレゾンデートル代表取締役の磯野妙子さんは「婚外恋愛ものの作品が増加したことに加え、コロナ禍が後押しした」と話す。原作漫画は累計125万部を超え、2024年にPrime Videoで配信されたドラマ『1122 いいふうふ』も婚外恋愛をテーマにして話題となった。

「おうち時間が増え、サブスクの動画視聴サービスやウェブマンガなどのエンタメに触れる機会が多くなったことも一因でしょう」(磯野さん)

前出の秋山さんは、経済状況との相関を指摘する。

「経済的な見通しがきかないときは、社会や将来に対する不安を覚えやすくひとりでは抱えきれないため、セカンドパートナーを求める人が増えるのではないかと考えます。配偶者や親族には吐露できない気持ちをセカンドパートナーに共有したくなるのでしょう」

家事負担や賃金格差など、家でも社会でも男女不平等にさらされる女性は特に生きづらさを感じやすい。それが一因なのか、セカンドパートナーを持っているのは女性6割、男性4割と、女性の方が多い。

セカンドパートナーを持っているのは女性の方が多い(写真/PIXTA)
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「女性も社会に出て働くのが当たり前になっている一方、家事や育児、人によっては介護などは、いまだに女性の負担が多いまま。夫や子供に感謝されることもなければ、自分の存在意義を見失ってしまいます。それでも、夫と離婚したら経済的な不安があるし、家族を裏切って不倫に走ることはできない。そんな現代の女性特有の生きづらさが、セカンドパートナーに向かわせるのではないでしょうか」(岡野さん)

磯野さんが分析する。

「セカパを求める女性は性的関係や疑似恋愛の相手ではなく、自分を大切にしてくれて、精神的な支えになれる、いわば〝ソウルメイト〟を探しているのです。

実際、Healmateの利用者の中には、夫からDVを受けて生きる気力を失っていた人が“誰かに優しくしてほしい”と見つけたセカパに頼ったり、甘えたりする時間を持つことで自己肯定感を取り戻した例もあります」

配偶者に話せないような悩みや、そもそも配偶者に持つ不満をセカンドパートナーに打ち明けることで、より深い信頼関係が生まれる場合もある。

「たとえば夫に不倫されていても、セカンドパートナーに話を聞いてもらえて寄り添ってもらえれば、“私には彼がいるから”と、家庭での不満が気にならなくなるという人も。疎ましかった夫に優しくできるようになり、かえって夫婦仲がよくなる人も少なくありません」(岡野さん)

都内の工場でパート勤務をしているKさん(54才)は、3年前から「高校時代の元彼」とセカンドパートナーの関係だ。お互いの子供が偶然同じ高校に入学したことで再会したのがきっかけだという。

「お互い家庭内別居状態で、思春期の子供の扱いに悩んでいて、共通点が多かったんです。あくまでも“高校時代の友人”として、彼と彼の娘、私と私の息子の4人で交流しています。お互いに悩みを共有し合えるだけで充分楽しい」

セカンドパートナーを求める人の年代比
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Kさんのように、子育てがある程度ひと段落して更年期を迎える中高年になってセカンドパートナーを求める人は多い。事実、Healmateは会員の半数が40代で、次に多いのが30代と50代で、60代の利用者も一定数いる。

「仕事や家事に忙殺され、自分の存在意義を見失いがちな中高年女性にとって、自分を理解し、思いやってくれる存在は大きな助けになります。

また、一般的に女性は男性よりも長生きする傾向にあるため、中高年以上になると多くの人が“夫が死んでひとりになったらどうしよう”という不安を抱えがち。セカンドパートナーがいれば、そうした不安も軽くなるのです」(岡野さん)

心身の健康も、卒婚も、老後不安の解消も、セカンドパートナーが心強い支えになってくれることもある。

「幼なじみや学生時代の友達が年齢を重ねてからセカパになることが多く、よく知った相手だからこそ本音をぶつけられる。女友達とは違った視点で話を聞いてくれて、マウントのとり合いになる心配もありません」(秋山さん)

ただし、中には“一線を越えてしまう”人もゼロではなく、本来のパートナーを深く傷つけてしまったり、場合によっては、それが事由で慰謝料を請求され離婚にもなりかねない。また、いくらプラトニックだからといって“本来のパートナー以外の異性と精神的に深くつながる”ことにこそ嫌悪感を覚える人も少なくない。マッチングアプリによっては詐欺などのトラブルの温床になるケースもあるため、セカンドパートナーを求めるならば、くれぐれも慎重にすべきだろう。

誰も傷つけずに支え合う、親友のような、恋人のような曖昧な存在。「もう一人の運命の相手」は、すぐそばにいるかもしれない。

※女性セブン2025年5月8・15日号

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