
戦後80年の節目に、万博、被災地の慰霊と、西に東に列島を飛び回られる天皇ご一家。寸暇を惜しんで国民に寄り添うご一家の足元で、あってはならない“窃盗事件”が発生。不届き者が目をつけたのは、よりによってご一家のプライベートな“お財布”だった──。
「皇室のご活動をお支えする宮内庁職員としてあるまじき行為であり、誠に遺憾です。また、天皇皇后両陛下をはじめ皇室の皆様方に対して大変申し訳なく思っております」
宮内庁の西村泰彦長官が発表したコメントには、苦悩と悔恨が滲んでいた──。宮内庁は5月1日、侍従職の20代の職員を懲戒免職にしたと発表。この職員によって、“天皇ご一家の生活費”から約350万円もの大金が窃取される前代未聞の事件が発生していたと明らかにした。
「免職された侍従職職員Aは、周囲の目が少なくなる宿直勤務のたびに3万〜十数万円の現金を、事務所内の金庫から持ち出していたとされています。
宮内庁が現金の紛失に気がついたのは今年1月。それから内部調査を進めていたところ、Aが宿直勤務をした直後に現金がなくなっていることが判明し、問いただしたところ“犯行”を認めたそうです。発覚したのは今年3月で、聞き取りに対してAは、『2023年11月頃から、現金の抜き取りを繰り返していた』と話しています。動機はお金に困っていたからだとか」(全国紙社会部記者)
1年3か月以上もの長きにわたって放置されていたのは、現金を管理する40代の上司Bが実際の金銭の動きと帳簿との照合を怠っていたからだという。
「Bも『基本的な管理ができていなかった』として、減給1か月の処分を受けています。AはBの金銭管理が杜撰であることを把握していました。事務所内には複数の金庫がありますが、決まってBが管理する金庫を標的にしていたそうです」(前出・全国紙社会部記者)
Aが手を付けた内廷費とは、いわゆる「お手元金」のことだ。天皇ご一家のプライベートの費用で、日常的な生活費や私的に雇用している職員の人件費、宮中祭祀のための予算、災害時などのお見舞金などがここから支出される。

「予算全体は3億2400万円と巨額ですが、使い道がきっちり決まっているものも多く、天皇ご一家が自由に使える金額は決して多くありません。
宮内庁は現金が抜き取られた場所が御所なのか、宮内庁の庁舎内なのか頑なに明らかにしませんが、天皇陛下だけでなく、雅子さまや愛子さまに急な出費の必要が生じられたときのために、ある程度の現金がまとめて保管されていたのでしょう。年度をまたいでも帳簿と現金が照合されていなかったという杜撰な管理体制には開いた口がふさがりませんが、こんな不届き者が職員に紛れ込んでいたことにも衝撃を受けました」(宮内庁関係者)
約1000人の職員が勤務している宮内庁。天皇ご一家の側近部局である侍従職は、75人の職員が在籍し、天皇皇后両陛下や愛子さまの身の回りのお世話を担当する。
「Aは20代と若く、侍従や女官などいわゆるオクの職員のように、日常的に両陛下と顔を合わせる最側近ではありませんが、当然、お目にかかる機会はあったはず。
宮内庁では、通常2〜3年周期で異動を繰り返します。Aは侍従職が1部署目か2部署目だったのではないか。侍従職は職員の中でもまじめな人が選ばれる印象がありますから、もともとは職場での評価も高かったのでしょう。雅子さまとしても、身近な職員の中に“窃盗犯”がいたことにショックを受けられ、あ然とされたのではないでしょうか」(前出・宮内庁関係者)
皇族方の間近で務める宮内庁職員には、高いモラルが求められるが、これまでも金銭にまつわる不祥事はあった。
「20年ほど前に、ある職員が皇居内の清掃作業などをボランティアで行う勤労奉仕団の人たちから借金を繰り返すという事態が起きました。奉仕団の人たちは疑うことなく貸してしまい、結果、返済が滞りトラブルになったそうです。
同じく平成の時代に、侍従職を長く務めた職員に借金返済を迫る人物が、皇居まで押しかけたこともあった。とても責任感が強く、現在の上皇ご夫妻の信頼も厚い人物だったので、周囲は驚きました。結局、この騒動を機に、その職員は自ら退職していきました」(別の宮内庁関係者)