
火を通すとパサつく、硬くなってしまうという悩みが多い豚肉。いつもの豚肉料理が驚きのやわらかさに仕上がるコツを、プロがこっそり教えてくれた。ミシュランに選出された名店のシェフが伝授するワザをチェックしよう!
5年連続ビブグルマン獲得の「日本橋人形町 かつ好」店主が教える!「とんかつ」
「豚肉は、赤身が薄ピンク色でハリがあり、表面がしっとりしたフレッシュなものを。解凍後時間が経ったものなど、ドリップが多く出ているものは水分が抜けているため、硬くなりがちです。薄く衣をつけたら、水分が逃げないよう高温で素早く揚げ、あとは余熱で火を通すことで、やわらかな食感に仕上がります。薄切り肉を巻いても違った食感を楽しめますよ」(日本橋人形町 かつ好店主の水上彰久さん)

「とんかつ」のレシピ
名匠の「とんかつ」は“筋切りと薄衣揚げ”でサクッとやわらかに。旨みが凝縮された赤身と上品な甘みをまとう脂身のバランスが絶妙。
《材料》(1人分)
豚ロース肉(厚さ1.5~2cm)…150~170g 小麦粉(薄力粉)…適量 卵液(卵1個と牛乳1/2カップ) 生パン粉(パン粉でも可)・サラダ油…各適量(店の揚げ油は、コクを出すごま油に、軽く仕上がるコーン油を合わせて使用)
《作り方》
【1】豚肉のドリップをふきとり、筋切りをする。卵液は冷蔵庫に入れて冷やしておく。
【2】【1】の豚肉に小麦粉、【1】の卵液、パン粉の順につける。小麦粉と卵液は全体にしっかりつけて余分なものは落とす。パン粉はふんわりまとわせる。
【3】フライパンにサラダ油を中火で170~180度に熱し、【2】を入れて1分30秒ほどたったら裏返し、さらに1分30秒~2分ほど揚げる。
【4】油切りバットに【3】を立てて30秒ほどおき油を落とす。
【5】【4】を食べやすく切って器に盛り、せん切りキャベツ・カットレモン・からし各適量を添える。からし&ソース、梅塩、わさびじょうゆなど好みの味適量でいただく。
やわらかPOINT

【1】食感をよくするため、脂身と赤身の間にある筋を包丁でまんべんなく切る。筋が切れるとプチッと音がする。

【2】小麦粉は豚肉にしっかりと密着させ、余分な粉を落とし切る。卵液も同様に全体につけて落とし切る。

【3】油切りバットに立て、余分な油を落とす。この間に余熱で肉の中心に火が入り、やわらかな仕上がりになる。
噛むとじゅわっと肉汁が広がる「しゃぶ巻かつ」レシピ

《材料》(3人分)
【1】しゃぶしゃぶ用の豚肉2枚を縦に並べ、もう1枚を中央縦にのせて手前から巻く。同様に、2回繰り返す。
【2】とんかつ同様に、小麦粉・卵液・パン粉各適量の順につけ、170~180度のサラダ油適量で約4~5分揚げる。
【3】斜め半分に切って器に盛り、せん切りキャベツ・からし各適量を添える。塩やレモン、おろしだしぽん酢適量でいただく。
◆教えてくれたのは:日本橋人形町 かつ好店主 水上彰久さん

ミシュランビブグルマンを5年連続獲得。店内は古材の重厚感が落ち着いた趣。匠の技を眺めるならカウンター席が◎。

住所:東京都中央区日本橋人形町3-4-11
2年連続ミシュラン獲得「NOGI」料理長が教える!「酢豚」
「“自宅で作る酢豚”の極意は、固定観念を捨てるところから」と「NOGI」料理長の木村さん。

「家庭では、火が通りにくく扱いの難しい塊肉ではなく、薄切り肉を使うことで、時短かつ理想的な食感が実現します。まず、水を加えて水分量をキープ。揚げ焼きするときは、とにかく強火で衣を固めることを意識して。肉汁がとじ込められ、肉の旨みが存分に味わえます。彩りよりも、たれと相性のいい野菜を選ぶこともおいしさのポイントです」
「酢豚」レシピ
手軽な豚バラ肉を使ってたれがしっかりからんだ本格的な黒酢酢豚に。水を吸わせた薄切り肉ならやわらか&ジューシーな絶品「酢豚」に仕上がる。
《材料》(2人分)

豚バラ肉(焼き肉用)…150g 玉ねぎ…1/4個(約50g) れんこん・かぼちゃ(種とわたは除く)…各40g 溶き卵・酒・片栗粉…各小さじ1 塩…小さじ1/4 こしょう…少量 水…大さじ2 水溶き片栗粉(片栗粉小さじ1弱を同量の水で溶く) サラダ油…適量
たれ(黒酢・米酢…各大さじ1と1/3、しょうゆ…大さじ3、砂糖…40g、水…1/5カップ)

《作り方》
【1】ボウルに5cm幅に切った豚肉を入れ、塩→酒→溶き卵→こしょうを順に加えてもみ込む。全体がなじんだら、水、片栗粉を順に加え、その都度もみ込む。5分ほどおいてから、肉を1枚ずつ広げて両面に片栗粉適量(分量外)をまぶしつける。
【2】玉ねぎは1cm幅の短冊切りに、れんこんとかぼちゃはそれぞれ7mm幅の薄切りにする。
【3】フライパンにサラダ油を高さ1cmほど入れて強火で熱し、【1】の肉を1枚ずつ重ならないように並べ入れる。衣がパリッと固まってきたらひっくり返し、30秒ほどからりと揚げ焼きにする。取り出して油をよく切る。
【4】フライパンを中火にし、かぼちゃとれんこんを入れてじっくり揚げ焼きする。うっすら茶色くなったら玉ねぎを加え、半透明になったら火を消して取り出す。
【5】フライパンにあらかじめ合わせておいたたれを流し入れ、強火にして沸騰させる。いったん火を止め水溶き片栗粉を加えて混ぜたら、再び強火で沸騰させてとろみをつける。
【6】肉と野菜を戻し入れ、サッと絡め合わせる。
やわらかPOINT

【1】揚げると飛んでしまう水分と同量の水を先に加えることで、肉がしっとり。

【2】肉は1枚1枚均一に粉をまぶし、重ならないように並べて揚げ焼きに。

【3】黒酢のたれは、沸騰させて酢の“とがり”を消してから肉にまとわせると、やわらかな風味に仕上がる。
外パリッ、中ジュワーなごま油香る「豚バラ肉の油淋鶏風」レシピ

《作り方》(2人分)
【1】上記酢豚【1】と同様に衣をつけた肉を、強火でやや長めに揚げ焼きし、よりカリッとした状態で取り出し、器に盛る。
【2】フライパンを強火にし、ねぎのみじん切り20g、しょうゆ・米酢・砂糖・水各大さじ3を入れて沸騰させたたれを【1】にかけたら、熱したごま油小さじ1を回しかけ、白髪ねぎ適量をのせる。
◆教えてくれたのは:NOGI料理長 木村和明さん

オープン4年目にして、2年連続ミシュラン掲載の実績を誇る実力店。素材の持ち味をとことん引き出すシンプルな料理が人気。

住所:東京都港区西麻布2-24-9 須藤ビル1F
撮影/玉井幹郎、田中宏幸
※女性セブン2025年5月29日号