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《九州豪雨から5年》“歴史と復興を肌で感じる”城下町、熊本・人吉球磨の見どころ 焼酎、温泉、遊覧船…散策スポットが満載 

JR人吉駅前に建つ人吉城風のからくり時計
JR人吉駅前に建つ人吉城風のからくり時計。民謡「球磨の六調子」に合わせてお殿様が城下見物を行う物語が見られる
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JR人吉駅前に建つ人吉城風のからくり時計。民謡「球磨の六調子」に合わせてお殿様が城下見物を行う物語が見られる

作家・司馬遼太郎が「日本でもっとも豊かな隠れ里」と評した風光明媚な城下町・人吉球磨地方。しかし、2020年7月4日、町の東西を流れる球磨川が氾濫し、甚大な被害を受けた──それから5年。復興しつつある、美しい町を散策した。

歴史と復興を肌で感じる旅へ

熊本県南部に広がる人吉球磨地方は、四方を九州山地に囲まれた城下町だ。鎌倉時代から明治維新までの約700年間、相良氏が一貫して治めたことで、固有の文化や風習が根付き、その珍しさから「日本遺産」(※)に認定されている。

2020年7月の豪雨災害の時の空から見た熊本の川の様子
2020年7月の豪雨災害では、九州5県で計79人もの人が亡くなった(写真/共同通信社)
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町のシンボルは日本三急流のひとつ、球磨川。普段は豊かな恵みをもたらす川だが、「令和2年7月豪雨」で氾濫し、人吉市全世帯の約5分の1(約3000世帯)が浸水した。それほどの被害が出たにもかかわらず、いまの町並みには水害の名残は感じられない。

「復興は、たくさんの人の協力があってこそ」
と言うのは、国登録有形文化財の宿「芳野旅館」の女将・田口妙子さんだ。

「うちには明治時代に造られた池泉庭園があるのですが、水害で樹木も石も流されて泥だらけに。途方に暮れていたところ、京都をはじめ全国から庭師のかたが30人以上いらしてくれて、わずか3日で修復してくださったのです」(田口さん)

JR人吉駅から徒歩5分ほどの場所にある、国宝の青井阿蘇神社もまた、浸水深が3.9mまでになり、甚大な被害を被った。しかし、全国からの支援のおかげで境内はきれいに整備され、水没してさびた御神刀も修復。日本を代表する建築家・隈研吾さんの設計による「青井の杜 国宝記念館」も新築され、いまや多くの参拝客で賑わう。朝9時の境内は観光客が少なく静かで、清々しい空気の中、ゆっくりと散策できる。

※文化庁が認定する、地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化や伝統を語るストーリーを指す。

焼酎、温泉、遊覧船…散策スポット満載

人吉市内は観光スポットのほとんどがJR人吉駅から2~3km圏内にあるため、駅を基点に徒歩で町を巡れるのもうれしいところ。城下町を彷彿とさせる古い町並みからは歴史や伝統が、古民家を再生したおしゃれなカフェなどでは、モダンな雰囲気が感じられ、歩いているだけでワクワクする。駅前にあるレンタサイクルで、球磨川沿いをサイクリングするのも気持ちがいい。
人吉球磨地方は古寺社が多いうえ、球磨焼酎や温泉、川くだりなども楽しめる。夏の旅にぜひ訪れてみて!

国登録有形文化財の宿 人吉温泉 芳野旅館

人吉温泉 芳野旅館の庭園と建物
人吉温泉 芳野旅館
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人吉温泉 芳野旅館の内観
人吉温泉 芳野旅館の内観
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2022年11月にリニューアルした1909(明治42)年創業の温泉旅館。建物は、相良氏の御典医の屋敷跡で、現在は国登録有形文化財。作家の司馬遼太郎ら文人も宿泊した。池泉庭園は一見の価値あり。
熊本県人吉市上青井町180

松田うなぎ屋

松田うなぎ屋のうな重
うなぎ重箱(大)5230円
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1919(大正8)年創業。うなぎは背開きにし、蒸さずに炭火で焼く“地焼き”で仕上げる。写真はうなぎ重箱(大)5230円。熊本県人吉市宝来町1343 平日11~15時、17~19時30分/土日祝日11~19時30分

青井阿蘇神社

青井阿蘇神社の鳥居
青井阿蘇神社
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「青井の杜 国宝記念館」
「青井の杜 国宝記念館」は拝観料500円
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創建は806(大同元)年。茅葺屋根の楼門をはじめ、本殿、廊、幣殿、拝殿の五棟などが県内初の国宝に。毎年10月3~11日には人吉球磨地方最大の秋祭り「おくんち祭」が行われる。熊本県人吉市上青井町118
※「青井の杜 国宝記念館」は拝観料500円

大和一酒造元

大和一酒造元の前でくまモンのぬいぐるみを手に笑顔の店員
大和一酒造元
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球磨焼酎『球磨川』とグラス
球磨焼酎『球磨川』(720ml 1870円)
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1898(明治31)年創業の球磨焼酎の醸造元。水害により、創業当初からの蔵付き微生物が流されたが、球磨川が運んできた天然酵母で新たな球磨焼酎『球磨川』(720ml1870円)などを開発。クラフト焼酎蔵ガイドツアーも行う(要予約)。
熊本県人吉市下林町2144

球磨川くだり

球磨川くだりの様子
球磨川くだり
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江戸時代に相良藩の物流を担った球磨川の舟運を彷彿とさせる川船での遊覧が楽しめる。写真は人吉城の石垣を間近で見られる「梅花の渡し」コース(30分2000円)。
熊本県人吉市下新町333-19~17時 基本水曜

人吉市への行き方

●電車/博多駅(福岡)から九州新幹線で新八代駅まで行き、高速バス「B&Sみやざき」に乗り換え、人吉へ。約1時間30分。※JR肥薩線、くま川鉄道は一部区間運休中。●高速バス/博多バスターミナルから約2時間40分、JR宮崎駅・熊本桜町バスターミナル・JR鹿児島中央駅からそれぞれ約1時間40分、鹿児島空港から約1時間。

熊本城
熊本城
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「熊本デスティネーションキャンペーン」開催!

JRグループと熊本県などが連携して行う大型観光キャンペーン「熊本デスティネーションキャンペーン」が、熊本地震から10年の節目となる2026年7~9月に開催。これに先駆け、今年9月30日までプレキャンペーンを実施。期間中、熊本県内のJR線が乗り放題となる「くまもっとJR周遊きっぷ」が発売されるなどお得な企画が盛りだくさん。ぜひ活用を!

撮影/菅井淳子

※女性セブン2025年5月29日号

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