
結婚、子育て、家のローン、旅行や教育費など、人生にかかるお金はさまざまある。年を重ねてから考えたいのは、介護や看取り、葬儀や相続などをこれまでの貯蓄や年金収入でどうまかない、何を残すかという、まさに“総決算”だ。人生最後に大損しないための最新情報をまとめた。
「高齢者施設はどこも高い」わけではない
まず、自分や家族の老後について「介護費用は年金があればなんとかなる」と思っているなら大間違いだ。生命保険文化センターの調査によると、介護期間の平均は4年7か月で、かかる費用の平均は1人あたり約580万円。これは介護保険適用の有無や区分をすべてならした平均額で、介護の区分や年数によってはこれ以上かかるケースも多く、衣食住の生活費をまかなうことを考えれば年金だけでは心許ない。
ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは、「高齢者施設はどこも高い」わけではないと話す。
「公的な特別養護老人ホーム(特養)などは入居金が0円、利用料も月7万円台で済む場合もあります。
“特養は安い分、暗くて狭くて汚い”というイメージは古い。最近は明るくきれいで、設備も充実した特養が増えてきています」(黒田さん・以下同)
かといって、終の棲家になる可能性が高い以上、「値段で選べばいい」「近所で探す」というのは間違いだ。高齢者施設ならどこでも医療を受けられたり、看取りまでできたりするわけではない。

「在宅介護なら安く済む」という思い込みもNG。
「確かに、施設介護の平均費用は月13.8万円、在宅介護なら月5.2万円と大きな差がありますが、在宅介護の負担は想像以上に大きく、介護する人が休職や退職しなければならなくなることも少なくありません。
出て行くお金を抑えられても、入ってくるお金がそれ以上に少なくなり、かえって生活が苦しくなる可能性があります」
状況によっては施設よりもお金がかかる場合もある。
「2024年の生命保険文化センターの調査では、自宅のリフォームや介護用ベッドの購入などに平均47万円、月額費用の平均は月9万円です(公的介護保険サービスの自己負担を含む)」
そもそも、介護の費用は上を見ればキリがないため「いくら必要なのか」を考えて対策をしても無意味。
「“いくらまでならかけられるのか”を逆算し、その範囲内で公的介護保険や民間の介護サービスなどを使うように考えるべきです」
多くの人が「公的介護保険では介護費用がもらえる」と勘違いしているが、受け取れるのはお金ではなく、車いすのレンタルやヘルパーの訪問といった現物サービスとその利用料の一部を負担して利用できるサービスだ。「自己負担額を払えば何でもしてくれる」というのも間違いで、要介護度の支給限度額の範囲内で決められている。プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんが解説する。

「例えば、自宅から病院へのつき添いは公的介護保険が適用されても、病院内での待ち時間のつき添いは対象外で、全額自己負担となります」
民間の介護保険に入る手もあるが、必ず保険金を受け取れるとは限らない。
「民間の介護保険の保険料は、要介護認定を受けなければ受け取れません。また要介護状態になったら保険料の支払いが終わるわけではなく、終身払いの場合は死ぬまで支払いが続くこともあります」(三原さん・以下同)
介護保険にお金をかけるなら、自宅のリフォームに使う方が確実かもしれない。
「お金がかかるからといってリフォームを避けたり、ケチったりするのは絶対にやめて。高齢になってからの転倒やヒートショックは命にかかわります。
リフォームはすべて高額というわけではなく、手すりの設置やトイレのリフォームなどは、要介護認定を受けていれば、公的介護保険によって住宅改修費の支給があり、原則1割負担(上限20万円)になります。手すりは月100〜200円程度でレンタルすることもできます」
施設で亡くなると追加の料金がかかる
どこで介護を受けても、いずれ最期は来るもの。「施設で亡くなる方が安心」という認識は甘い。
「看取りの費用は、施設が15万〜35万円、自宅が10万〜20万円ほど。結果的に施設だとお金がかかってしまうことが多い」(黒田さん)
高齢者施設では、看取りに“追加料金”がかかる。
「常勤看護師が1人以上いる場合、死亡日に1280円、3日前からは1日680円、30日前から4日前までは144円、45日から31日前までは72円の介護報酬上の加算があります」(三原さん・以下同)
一方、病院では看取り加算はないものの、容体が急変するなどして個室に入ることになれば差額ベッド代がかかるため、40日間なら約120万円の“看取り代”になる。
また入院後、終末期のさまざまな延命治療の中でも、高額な自由診療の治療なら効果が約束されているわけではなく、苦痛を伴うなどのデメリットもある。必要な治療はしっかり見極めよう。
※女性セブン2025年6月5・12日号