
芸能界引退から5か月あまり、刑事告訴のリスクと名誉回復の狭間で揺れ動く中居正広(52才)。第三者委員会の報告書に“だまし討ち”とまで抗議した、彼の次なる一手に注目が集まる中、重要なカギとなりそうなのが“空白の1か月”。果たして起死回生の秘策は存在するのか──。
最高気温が30℃近くまで上昇し、都心では初夏を思わせるような汗ばむ陽気となったその日。都内の住宅街を走る黒塗りのタクシーの後部座席には、キャップ、マスク、サングラス姿で、傍らに座る男性と話す中居の姿があった。
「最近では打ち合わせなどで外に出ることが増えているようです。個人事務所の関係者なのか、一緒に行動を共にする人もいるようです」(芸能関係者)
中居の身辺が慌ただしくなり、最終局面の臨戦態勢が整い始めている──。
被害女性は怒り心頭
中居に呼応するように、フジテレビにも大きな動きがあった。6月5日、同社の清水賢治社長が会見を開き、中居と元女性アナウンサーのトラブル発生当時の取締役だった港浩一元社長と、大多亮元専務の法的責任を追及するため、訴訟準備に入ったことを明かしたのだ。
「5月末には業界団体の親睦会で『最近、どこに行っても挨拶の枕詞で謝罪しております』と自虐交じりに笑いを誘っていた清水社長ですが、この日はいつもの鉄仮面のような表情。親会社の株主が233億円もの賠償を求めて起こした株主代表訴訟の裁判も進行しており、6月の株主総会を乗り切るためには、当時の経営陣の善管注意義務違反などの責任追及が欠かせないという判断になったようです。
しかし、サラリーマン経営者に何百億円というような損害賠償を請求するのは非現実的で、早くも『退職金の一部を返納させ、頃合いを見て和解するのでは』との声も飛んでいます」(前出・芸能関係者)
さらに、トラブル当時の幹部社員らにも処分がくだった。その中で、中居の盟友で、被害女性の元アナウンサーを中居の自宅に呼んだ元編成幹部のA氏の処分が物議を醸したようだ

「Aさんは部長級の役職でしたが、4段階降格で、ほぼ平社員という処遇に。それでも、退職勧奨や懲戒免職などには至りませんでした。
Aさんは自宅謹慎中も知人に『クビになったら、洗いざらい全部ぶちまける』と話すなど、フジに見放されれば、噛みつく構えだったようです。30年近いキャリアの中で、中居さん以外にもタレントや会社の“表に出せない話”を知りすぎているということもあり、会社としては組織の中に留めることにしたのでしょう」(フジテレビ関係者)
フジテレビが設置した第三者委員会の報告書に反発している中居は、前述のように、時折外出するなど、一時の憔悴しきった状態からは抜け出したようだ。一方で、怒りを募らせているのが、被害女性だ。
「『週刊文春』(6月5日発売号)では、橋下徹弁護士ら中居さんを擁護する人たちの“失恋事案”というワードに不快感を示し、彼女の《自分の父親と同世代の男性に恋愛感情を抱いたり、性行為をしたいと思うことなど1ミリもありません。好意を持ったことなどない》という怒髪天の肉声が友人の証言として掲載されました。中居さんとの交際を巡る男女間の諍いが発端のトラブルだと思われたくないという様子が伝わってきます」(芸能リポーター)
中居のトラブルが報じられた昨年末以降、彼自身の引退をもってしても事態は一向に収まる気配を見せない。それぞれ代理人が表に立ち、法的議論が交わされる展開になり始めた。そんな中、別の芸能関係者は「中居さん側は法廷闘争も見据える中で、トラブルの発生した日付が“よりどころになる”と考えているようだ」と明かす。
1か月の違いで新法の対象外
仮に被害女性との守秘義務を解除し、第三者委員会との裁判に臨むことになれば、同時に中居には、被害女性から刑事告訴されるリスクも生じる。第三者委員会の報告書によれば、トラブルが起きたのは2023年6月2日。同年7月に刑法が改正され厳罰化が進んだ不同意性交等罪の施行直前となる。
性加害トラブルに詳しい加藤博太郎弁護士は、「法律には不遡及(施行以前に遡って適用されない)という大原則がある」と前置きした上で、こう解説する。
「報告書で認定された事実から考えると、トラブルが刑法改正後であれば、刑事事件になっていた可能性もあるでしょう。2023年7月以前の旧・強制性交罪の構成要件は、行為の強制性に重きが置かれ、暴行や脅迫が証明できなければ罪に問うことはできませんでした。
一方で、同年7月に施行された不同意性交等罪においてはそれまで対象外だった“心理的支配”や“経済的依存”なども対象となり、『経済的な関係や社会的な地位に基づく不利益の憂慮の利用』も不同意とみなされます」

およそ1か月の違いによって、中居と元女性アナウンサーのトラブルは、“心理的な強制性”について明文化した新法の対象外となるという。
「直前になって“2人きりの食事だ”と告げたことや、被害女性が『今後の仕事への影響を危惧した』と主張していることは、現状ならば不同意の証となることもありますが、当時は法改正前で対象外となる可能性が高い。暴力による強制を否定することが刑事罰を逃れるかどうかの重要なポイントとなる。
実際、中居さんの弁護士が最初に第三者委員会に反論した際も《一般的に想起される“暴力または強制的な性的行為”の実態は確認されなかった》と、強制性を否定する主張をしています」(前出・別の芸能関係者)
被害女性側の主張によっては、たとえ法改正前でも中居が刑事罰に問われる可能性はゼロではない。中居は女性に巨額の慰謝料を支払い示談しており、“あの日”の出来事はよほど深刻なトラブルであることがうかがえる。中居にとってこれからの闘いは当然厳しいものになるはずだ。
「中居さんサイドとしては第三者委員会にやりとりを拒否されたいま、女性との守秘義務を解除することで、舞台を法廷に移し、すべてを明らかにして汚名を返上しようとする可能性は高まっている。もちろん、中居さんが女性のことを傷つけた事実が変わるわけではありませんが、現在の中居さんは報告書に記載された“性暴力者”の汚名をすすぎたい一心なのです。
中居さんも被害女性もフジテレビも、あの日、密室で何が起きたかを世間に向けて明らかにしたいわけではないでしょう。しかし、現状は当事者たちがそれぞれの立場を主張すればするほど、選択肢が裁判以外になくなっていくというドロ沼状態です」(前出・芸能リポーター)
6月25日のフジテレビの親会社の株主総会が迫る中、事態はいまだ混迷を極めている。
※女性セブン2025年6月26日号