【定年夫が家にいる】妻たちのリアルボイス「もはや召使いを通り越して奴隷のよう」「使い物にならないのにプライドだけは高い」…夫が自由になればなるほど妻が不自由になる現実
“据え膳問題”を入り口に強権的な夫に妻が不満を募らせる
ジェンダー平等の風潮についていけない夫がトラブルをこじらせる面もある。
「いま60代前後の男性はジェンダー平等をまったく知らないわけではないけど、実際の言動に反映させるには至らない。さらに、社会的な地位を失っている状態で家にいるので、妻を部下扱いし始めるんですよね。やたら管理したり、うるさく言ったり、そういったことが日常生活の中に入り込んできて余計に夫を疎ましく思う傾向があると思います。
なかでも顕著なのは食事で、妻が作って当たり前と思っているから『メシ、まだなの?』と平気で口にします。定年後は、こうした“据え膳問題”を入り口にして、強権的な夫に妻が不満を募らせるケースが多い」(小林さん)
『灰になったら夫婦円満』の著者で、エッセイストで作家の小川有里さんも言葉を重ねる。
「夫が仕事をしている間は朝晩、もしくは朝だけ食事の支度をすればよかったけど、定年後は昼食を作らなくてはなりません。この“お昼問題”は定年夫とのトラブルの典型であるものの、意外と根深く、妻は自分の時間をつぶして昼前から食事の準備をしなければならない。朝晩の2食に1食増えるだけで妻の負担が大きく増して、不満ばかり募ります」
神奈川県のCさん(59才)の夫は公務員として60才で定年を迎えその後、嘱託社員として2年働いてから隠居生活に入った。現役時代、判で押したような規則正しい生活をしていた反動からか、夫は「これからは眠くなったら寝て、目が覚めたら起きる!」と突如宣言。マイペースな生活を勝手に展開してくれればよかったものが、夫が自由になればなるほど、妻は不自由な生活を強いられた。Cさんが憤りを隠さずに話す。

「定年後の身の回りの世話はこれまでと同じく妻任せ。なんせ、洗濯機の使い方もよくわかっていなければ、料理もできませんから。
私は何時に起き、いつご飯を食べるかわからない夫のために、すぐ食事が出せるよう常に備えて、気が向いたら電車で出かける夫のために着替えを用意し、駅まで送迎しないといけない。夫は自分の生活に妻が合わせるのが当然と信じて疑わず、私は自分の予定がまったく立てられません。もはや召使いを通り越して奴隷のようなもので、あまりのストレスに爆発寸前です」
一方で、家事分担に“理解のある”夫の言動が逆効果になることもある。
「これからは家族のために生きるよ」
定年退職した夫(61才)のこんな言葉に小躍りしたDさん(55才)だが、夫が家事を手伝うと彼女の表情は一変した。
「料理は焦げているか半ナマで、洗濯物は色落ちして型崩れ。家庭菜園のプランターを全滅させたときは絶句しました。
とにかく使い物にならないのにプライドだけは高く、私が小言を言うと『家族のために頑張る気持ちに水を差すな』『何もしないでいるとボケてしまう』などとネチネチうるさい。仕方がないので好きにさせていますが腹立たしいばかりで、本音では頼むから再就職してくれ……と言いたい」(Dさん)
これまで“存在していなかった”人間がいるだけでも調子が狂うのに、子供と同じかそれ以下のような家事スキルで、威厳だけはある──これほどの地獄があるだろうか。
(第2回に続く)
※女性セブン2025年7月17日号