
生涯未婚の男女が増え続けている現代日本にあって、社会問題となっているのが「孤独死」だ。警察庁によれば、年間2万1856人が遺体発見までに8日以上を要した「孤独死」状態で見つかったという(2024年)。そんな多くの日本人が避けては通れないテーマを取り上げたドラマがある。
以前から大ファンだった綾瀬との初共演
現在放送中のNHKドラマ『ひとりでしにたい』が反響を呼んでいる。
本作はカレー沢薫(カレーざわ・かおる)さんの同名漫画を原作にしており、主演の綾瀬はるか(40才)が演じるのは、39才独身の山口鳴海だ。猫とアイドルを愛でる生活を送っていた彼女は、ある日「ひとりで死にたくない」と婚活アプリに登録する。
きっかけは憧れのキャリアウーマンだった伯母が自宅で孤独死したことだった。
國村隼(69才)演じる父は姉の最期の姿をこう報告した。
「死んでたのは床じゃなくて風呂場だから。遺体っていうよりあれはもう“汁”だな。やっぱり女ひとりの老後っていうのは惨めなもんだな」
それを聞かされた鳴海は、現実を突きつけられ、急に孤独が怖くなったのだ。
同作で綾瀬はコメディエンヌぶりを余すことなく発揮している。
「そうとは知らずに持って帰ってきた伯母の遺品が“女性用玩具”だとわかると顔をしかめてギョッとし、自分の心情とリンクした空想シーンではコスプレ姿でコミカルな表情を見せています。孤独死や終活といった深刻な題材をあえてコメディータッチで描くことで笑えるドラマになっています」(ドラマ関係者)
奮闘する綾瀬に熱いまなざしを向けるのが母親役を務める松坂慶子(72才)だ。かつては亡くなった義姉から「専業主婦なんて」と見下されていたが、いまは子育てを終え、趣味のヒップホップに打ち込み、充実した生活を送っているという役どころである。
「どうやら以前から綾瀬さんの大ファンだったようです。松坂さんは念願の初共演となった綾瀬さんに、『新しい役柄に挑戦していく時間ね』とアドバイスするなど、親身に接していたといいます」(前出・ドラマ関係者)

ドラマでは伯母が孤独死し自由と孤独が紙一重だと知った鳴海は、自問自答を経て、自分はひとりで生きてひとりできちんと死にたいんだということに気づく。
これは松坂にとっても身近なテーマだ。松竹の専属女優だった彼女は、19才の頃から原節子や岩下志麻に続く女優として蝶よ花よと育てられ仕事に邁進。気づけば独身のまま35才を迎えていた。そんななか作家の遠藤周作からこう問われたという。「君は死ぬときひとりで死ねるか?」。
松坂の知人が続ける。
「その言葉で松坂さんは目が覚めたそうです。それから3年後の1991年、38才のときにジャズギタリストの高内春彦さん(70才)と結婚しました。ただ、松坂さんの両親は華々しい活躍を見せていた娘と無名の高内さんとの“格差婚”に猛反対。松坂さんは両親との絶縁を宣言して渡米し、2人の娘をもうけました」
だが2007年に父が逝去すると、年老いた母を放っておけないと家族揃って実家に引っ越し、介護を始めた。
「2021年に母も他界し、現在は夫と娘2人の家族4人で同居しています。“ひとりでしにたい”とは真逆の生活ですね」(前出・松坂の知人)
くりっとした目にシュッとした鼻筋。若い頃の松坂と綾瀬はたびたび「似ている」といわれてきた。
「松坂さんいわく、娘さんも顔立ちが綾瀬さんに似ているそうです。撮影中にはその話で盛り上がったことがあったみたいです」(芸能関係者)
そんな綾瀬似の娘たちを松坂は溺愛してきた。
「アメリカ滞在中に娘さんたちを産むと仕事をセーブして育児に励み、どうしても家を離れる際は手づくりの離乳食を1個ずつラップして冷凍していたそうです。娘たちが大きくなってからも、ことあるごとに『これをした方がいい』『ああしたら』と、よかれと思ってつい口出ししてしまうみたいです」(前出・芸能関係者)
娘からもらった役作りのヒント
愛情を目一杯に受け取りながら育った娘たちと松坂の親子仲は良好で、松坂のライフワークである日本の伝統文化を海外に伝える取り組みを3人で行っていたこともある。
「2019年頃まで、『万葉集』の朗読劇や、中世の伝統芸能『田楽(でんがく)』を現代風にアレンジした『大田楽』を韓国やニューヨーク、フィンランドなどの舞台で披露していました」(前出・芸能関係者)
そうした活動を通して松坂は芸術の道を究める者の背中を見せた。そんな母の姿に感化されたのか、娘たちも成長するにつれ、やりたいことが明確になっていったという。娘の2人は日本でインターナショナルスクールを卒業後、ハワイの大学に進学した。
「長女は版画を、次女は陶芸彫刻を専攻しました。子煩悩な松坂さんとしてはせめて20才になるまでは親元にいてほしかったそうですが、松坂さんは若い頃、自分が周囲の大人の言いなりだったことを悔やんでいます。娘たちには自分の人生を自分で歩んでほしい、と切に願っているそうですから、ここで引き留めるのは違うと思ったのでしょう。寂しさのあまり自宅で涙することもあったようです」(前出・芸能関係者)

すっかり成長してアーティストとして活動する娘たちは、いまは同居しながら母をサポートする大切な存在だという。
「今回のドラマで松坂さんはヒップホップを披露します。最初はうまくリズムに乗れなかったそうですが、娘さんが海外の高齢女性が楽しげに踊る映像を見つけてきてくれたことで、年齢なりの踊り方でいいと思えるようになったんだとか。おかげでレッスンを楽しめるようになり、そんな母を見て娘たちも満足したみたいです」(前出・芸能関係者)
自分が結婚した年齢に愛娘が近づくなか、綾瀬と娘を重ねつつも劇中の母親のように娘を案ずることはないようだ。
「ドラマでは今後、鳴海が人生をひとりでまっとうするために奮闘する様子が描かれます。現実の松坂さんも、ひとりの生活が寂しい人生だとは思っていないはずです。むしろいまの時代、“ひとりでしぬもよし”と、娘たちの選択を尊重するつもりでしょう」(前出・松坂の知人)
ドラマを契機に価値観がアップデートされそうだ。
※女性セブン2025年7月24日号