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【ラウール出演ドラマで異例の注意喚起】ドラマ『愛の、がっこう。』のどこが《違反となりうる営業行為》なのか?【「歌舞伎町弁護士」が解説】

「街中を走るラッピングトラック」に大きな顔写真

カヲルが働く「THE JOKER」は複数のホストを抱え、比較的規模が大きい店だった。その中でもカヲルは人気ホストの1人のようだ。店舗前の看板や、街中を走るラッピングトラックに、カヲルを含めた5人のホストの顔写真が大きく張られていた。

「看板やラッピングトラックへの顔写真の掲出には、法的な問題はありません。ただ、今回の改正を受けて《営業所周辺における清浄な風俗環境を害するおそれのある方法で広告又は宣伝をしてはならない》とする風営法第16条の解釈運用基準が大幅に変わり、卑猥な広告はもちろん、過度に客をあおり、競争意識を生じさせるものも規制対象になりました。

そのため、《年間売上〇億円突破》《1億円プレイヤー》などいう文言や、《神》《レジェンド》《幹部》といった格や肩書きを表す文言を営業所周辺や店内の看板や広告に明示することは禁止されました。また、《○○を推せ》《○○に溺れろ》といった、過度な応援をあおる文言も規制されました」

歌舞伎町のホストを演じるSnow Man・ラウール(インスタグラムより)
写真9枚

同様に、ホストなどの間で競争意識を生じさせる「ランキング制」の存在を、広告で示唆することも禁止された。

「ドラマ中では、ホストたちの売上額をランキング形式で発表していました。あくまで従業員のみがいる場で発表をするという描写でしたが、店内のモニターには具体的な売上金額が表示されていましたから、営業所内の設備として『接客従業者間に過度な競争意識を生じさせ、営業に関する違法行為を助長する』と判断され、違反だと判断される可能性はあります。

また、そういったランキングが存在し、接客従業者間の競争を強調するような広告を営業所周辺で打ち出せば、違反となります。具体的には《指名数ナンバーワン》《売上バトル》などいった文言です」

風営法第16条違反について刑事罰は規定されていないので、逮捕されることはない。

「ただし、行政指導や指示処分に従わなければ、営業停止などの行政処分がなされる可能性はあります」

「生誕祭」の開催はOKだが…

ホストクラブにおいて書き入れ時の「イベント」の扱いも同様だ。作中では、「THE JOKER」のナンバーワンホストの「生誕祭」が行われていた。

「生誕祭などの店内イベントを行うこと自体は法に触れるものではありません。ただ、イベントの開催を店内の掲示物や営業所周辺の広告物で告知する際に、当該キャストへの過度な応援をあおる文言があれば、広告宣伝規制にひっかかると言えるでしょう」

風営法の転換期により、ドラマ作りも慎重さを抱えながら進められている。

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若林氏の著書「歌舞伎町弁護士」では、改正風営法の詳細解説がされているほか、これまでに若林氏が解決してきた「夜の街のトラブル」のリアルエピソードが収録されている。

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