
ライター歴30年を超えるオバ記者ことライターの野原広子氏(68歳)。最近、自炊が中心だった“食生活”に異変があったという。何があったのか? オバ記者が綴る。
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「自分の作ったご飯がいちばん美味しい」と思っているのに…
何年に一度の大ピンチ、と言っても政変でも天候不順でもなく、私自身の食生活のことなの。台所がまったく機能しなくなったのよ。水道やガスが壊れたとか、そういうことではなくて私の脳のトラブルでね。日常生活にまるで関心がなくなるって、どんな病名がつくんだ?
こう見えて私は自炊派。自分の作ったご飯がいちばん美味しいと思っている。それもマイブームがあって朝食なら“旅館の朝ご飯シリーズ”が続いたかと思えば、ギリシャのモーニングに切り替わったりするから我ながら油断がならない。ギリシャの島で食べた、たぷたぷのオリーブ油にさっと潜らせた目玉焼きの黄身にパンを浸らせて食べるの、マジでうまいんだけど、ああ、ダメだ。こんなことを書いているとロックオン! そこから逃れられなくなるという、一種の奇癖だよね。

昨日まで出汁を引いて味噌汁を作っていたのにポタージュだの凝り凝りのサラダを作り出したら、冷蔵庫の半分は食品ロスになる。でも、自分の気分に合ったご飯ほどおいしいものはなくて、ま、こんな風だから40年もひとり暮らしが続いたんだよね。
そんな私がお茶ひとつ沸かさなくなったのは、かなりまとまったものを書き出したところに、人と会食が重なったという単純な事情だけど、それにしてもこのヤサグレ感はかつて経験したことがない。1日2日、1週間、半月と続いたら気分は空腹のたびにエサをあさりに行く野犬よ。
コンビニの棚の前で動けなくなった
なぜか、ってここからが本題なんだけど気が立つ原因は、食品の値段の高さよ。ある日からコンビニのご飯売り場の前から動けなくなったんだわ。あっさりしたおにぎり1個160円。2個買ったら320円。これにお茶をつけたら500円でお釣りがくるけど、これではすぐお腹が空く。じゃあ、おかずをつけようかと横の棚のものを選ぶと合計800円、900円。それなら単品の中華サラダの方が安いかと思えば600円超え。それにペットボトルを合わせたらやっぱり800円弱。
コンビニご飯ってとりあえずの間に合わせ的なものじゃない? それにこんなにお金がかかるのがどうやっても納得がいかないのよ。
幸い、都心に住んでいるから牛丼、親子丼、立ちそば屋さんにカレー店、町中華にラーメン屋さんなど選び放題で、こちらも油断すると1000円を超えるけれど、コンビニご飯より満足度は高い。だけど、これも1度、2度で飽きるんだよね。
一食1000円では口当たりはいいけどご飯や調味料の質はイマイチ。そうでなければ店側は家賃と人件費を払ってやっていけるわけがない。算数が苦手な私でもそのくらいの計算はできるわよ。

高級ビーフカレーが1200円で食べられる!
ほんとにもう、カラスが鳴かない日があっても聞かない日がないのが「原材料の値上げ」。今年の流行語大賞にしてほしいと思うほど耳にタコよ。
衣料品は、買わなきゃいい。娯楽費がないのはガマンできなくない。でも食費は別だよ。私はここ2か月、外食生活をしたけど、食料の値段と質は、人の深いところを喜ばせたり絶望させたりすると思う。私と同じ、100円、200円の差を考えてコンビニの食品売り場の棚の前から動けない人を見ると、ほんと、涙が出てくる。
そのお口直しじゃないけれど、先日、国立劇場の隣のグランドアーク半蔵門ホテルのカレーの日でね。“帝国ホテルグループの伝統を受け継ぐ”特製ビーフカレーがラッシー付きで1200円で食べられるの。月に一度、あるかないかだけど、この満足感といったらこれまでの外食の憂さがみんな晴れた感じ。
ささ、そろそろそうめんを茹でようかな。夏はレタスときゅうり、鶏のささみなんか乗っけたサラダそうめんに限るね。
そうなんです。2日前から自炊に戻ってやっと平常運転になり、心穏やかになりました。3食外食を考えたら米の値上がりなんかなんともないもの。

◆ライター・オバ記者(野原広子)

1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
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