
市長の学歴詐称疑惑で揺れる静岡県伊東市。全国でも屈指の観光地だが、オバ記者ことライターの野原広子氏(68歳)も伊東市を愛するひとりだ。そんなオバ記者がおすすめする楽しみ方や観光スポット、そして現地で感じる「危うさ」とは──。オバ記者がレポートする。
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実家のある茨城の次に通っている
いやいや、こんなに連日、「伊東市」という地名を聞く日が来るとは思わなかったわよ。ある意味、今日本でいちばん話題の市と言ってもいいかもしれない。その台風の目は言うまでもない今年5月に新任された田久保眞紀市長!
「私といたしましては」「ん、ん、ん」「以上でございます」
この2か月間、彼女の口癖が耳の奥に張り付くほど聞きまくっては神経を逆撫でされっぱなしよ。と、同時に「あの人はどうしているかな」と気になる人の顔も浮かぶ。だって実家のある茨城の次に私が足しげく通っているのが伊東市だもの。
気分転換で訪れたい「伊東マリンタウン」の天然温泉
キッカケは国道に面したカラフルな「道の駅 伊東マリンタウン」よ。私の乗り鉄の師匠の歯科医のT先生が「いいですよ!」とすすめてくれたんだわ。とっさに、「えっ? マリンタウン?」と聞き返したもんね。というのもそれまでバブル期の安物の観光スポットみたいなカラフルな建物を見て、ここだけは入ることはあるまい!と思っていたからなの。
でも他でもない旅の達人のT先生が毎週末、ここの日帰り温泉に入って刺身定食を食べに通っているという。聞けばマリンタウンは道の駅日本一に選ばれたこともあるとか。そこまで言われたら行くしかあるまいとひとりで東京駅から伊東まで直通で行く特急踊り子号に飛び乗ったのは、10年、いや15年以上前か。
それからどれだけ通ったかしら。これは私の持論なんだけど本当に気に入ったところはひとりでも行くところなんだよね。朝起きて特に予定がない日に気分転換したいなと思った次の瞬間に、マリンタウンの天然温泉から見える青い海が浮かぶのよ。

で、運良く東京駅午前11時発の全席グリーンのサフィール踊り子号のチケットが買えたら大ラッキーでね。夢のような豪華な列車に乗って伊東駅に着いたら路線バスに数分揺られてマリンタウンの一階の海鮮食堂を目指す。個数限定の魚のアラ煮定食にありつけるか、それとも…。まぁ、その間、気が気じゃないわよ。
腹ごしらえが終わったらいよいよ温泉。海風に吹かれながら目の前のヨットハーバーを見ながら入る天然温泉はそれはそれは気持ちいいけれど、私のお楽しみは風呂上がりに寝転ぶ静かな休憩所なの。もう、ここでどれだけの時間を過ごしたかわからないもんね。

ノマドが目的で訪れるように
さらに去年からは仕事が目的で伊東に行くようになった。今、まとまったものを書くのに都内のあちこちでノマドをしているんだけど、ここらで気合を入れねば、と思いつめた時に足が向くのが伊東市川奈町の『サザンクロスリゾート』というホテルなの。ゴルフ場つきのホテルだから宿泊のほとんどはゴルフ客なんだけど、私みたいに3泊も部屋に引きこもっていても違和感なく受け入れてくれるんだわ。しかも素泊まりだと私が払えるくらい安い! さらに窓からの朝の景色がすごい!

このホテルには一人でしか来たことがないけれど、同じライター仲間のAさんを「ひとり一部屋で仕事してお風呂と食事の時だけ顔を合わせるってどう?」と誘い、「いいね、いいね。ぜひぜひ!」ということに。さぁ、あとは日程調整だ!と思っていた矢先にこの騒動だもんねー。
別に市長が誰だろうと私ら観光客には関係ないっちゃない。けど、観光地ってどこでもそうだけど、すごく危ういところがあるんだよね。私が接した食堂のおばちゃんは私が目当ての魚のアラ煮定食を「ひとつ残ってました!」と我がことのように喜んでくれるし、日帰り温泉のマッサージ師さんの丁寧な仕事ぶりには毎回感心する。『サザンクロスリゾート』のホテルのフロントの人や駅まで送迎してくれるパスのドライバーもこちらが話しかければ笑顔で対応してくれるけど余計なことは言わない。その距離感が私は好き。
詐欺被害まがいの経験も
なんだけど、実は伊東市では詐欺被害まがいのイヤな思いもしているの。カンタンに言えば急接近してきたある旅館の仲居のMさんから、すごく断りにくいタイミングで借金を申し込まれた。とっさに半値に値切って貸したら、数か月後にドロンされたって、それだけなんだけどね。私がイヤな思いというのは、お金を騙し取られたことだけじゃないの。彼女と付き合った半年の間に温泉地の、大昔から続いているだろう因習とか、温泉地でその日暮らしをしている人の行動パターンとか、表からは見えない暗くて悲しいものをチラ見しちゃったからなんだよね。

虚々実々というけれど、観光客は目の前にあるものを実々だと思って楽しみたいだけ。だから微妙なウソはまぁ、見て見ないふりをする。だけどそのウソを大声で叫ばれたりしたらどうよ。街の印象まで違って見えちゃうって。
まあ、それでも私はこれからも伊東には通うと思うけどね。
◆ライター・オバ記者(野原広子)

1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
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