健康・医療

《健康長寿は足元から?》いくつになっても歩くための「靴の選び方」 むしろ疲れる「ぺたんこ靴」、“足がむくみやすい夕方に靴を買う”は間違い!?

靴を履く女性
50代を過ぎたら、靴こそ健康の“土台”に(写真/PIXTA)
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「いい靴は、あなたを素敵な場所に連れて行ってくれる」という。デザインが美しい靴や、高価な靴のことではない。あなたの足にぴったり寄り添って足元から体を支え、何才になっても、どこまでも歩いていける「最高の靴」のことだ。50代を過ぎたら、靴こそ健康の“土台”になる。100才までずっと歩ける、オーバー50からの靴の選び方を紹介する。

自分に合った靴を履けば、健康に過ごすことができる

平均寿命が年々長くなっているいま、50代を過ぎて意識し始めるのは、いつまで健康でいられるか、とりわけいつまで「自分の足で歩けるか」だろう。

足は“第二の心臓”ともいわれ、かかとから着地してつま先で踏み出して歩くことでふくらはぎの筋肉が動き、重力で下がった血液をポンプのように押し上げ、全身にめぐらせている。歩けば歩くほど、体力向上や心身の健康維持、ひいては健康寿命を延ばすことにもつながり、ウオーキングがもたらす健康効果はいくつもの研究で立証されている。

そのために欠かせないのが、足の健康を守り、機能を維持する「正しい靴選び」だ。足と靴と健康協議会事務局長で上級シューフィッターの木村克敏さんが言う。

「小さな表面積で全体重を支えている足を守る靴は“体の一部”。外反母趾やたこ、魚の目、巻き爪といった足のトラブルは多くが『合わない靴』が原因で、痛くて歩けなくなると筋力と血流が低下して疲れやすくなったり、むくみやすくなったりします。いい靴は健康をもたらしますが、悪い靴は不健康を招くのです」

自分に合った靴を履けば、何才になっても自分の足で歩き続けることができ、健康に過ごすことができる。50代からの「正しい靴の選び方」を知っておこう。

歩く女性
自分に合った靴を履けば、何才になっても自分の足で歩き続けることができる(写真/PIXTA)
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50代以降崩れる「足のアーチ」

若い頃は高いヒールで一日中歩けたという人も、50代以降はそうはいかないと話すのは、足のクリニック表参道院長の桑原靖さんだ。

「若い頃は筋肉やじん帯の柔軟性があるので、多少足に負担がかかっても大きな問題はありません。しかし、更年期以降は女性ホルモンが減少し、骨や関節が弱くなる。50代を過ぎても歩くのに向かない靴やサイズの合わない靴を常用していると、靴擦れなどの皮膚疾患、さらには足の骨格のアーチが崩れやすくなるのです」

足のアーチはかかと、親指のつけ根、小指のつけ根の3つを頂点に、三角形の形で足を支えている。体重を支えるだけでなく、歩いたり走ったりするときの衝撃を吸収したり、バネの力で足をまっすぐ前に進める推進力を生む。50代以降も合わない靴を履き続けているとアーチがゆがんだり、アーチのない「べた足(扁平足)」になるという。

「アーチが機能しなくなると、歩き方や姿勢にも影響し、やがて全身のゆがみにつながります。すると、ひざや腰の痛みがひどくなるほか、肩や首、時には頭痛を引き起こすこともあります」(木村さん)

かかととつま先に高低差が必要

50代以上になったら、足に負担がかかる高いヒールは避けるべきだが、バレエシューズのような「ぺたんこ靴」も避けるべきだ。

「バレエシューズは靴底が薄いものが多く、甲が覆われていないため安定感がなく、かかととつま先の高低差がないため、実はかなり疲れやすい。靴底が薄いと歩くときの衝撃から足を守る力が弱いため、足の負担が大きくなります。また、甲が覆われていないと、脱げないように無意識に足指に力が入ってしまうのです」(桑原さん・以下同)

桑原さんによれば、もっとも足が疲れにくいのは「前と後ろの高低差(ドロップ)が0.5〜1.5cm程度のスニーカー」だ。かかととつま先に体重が分散され、安定して歩くことができる。

シニアになると、歩きやすさからスニーカーを愛用する人も増えるだろう。

「スニーカーでも、靴底にある程度厚みがあり、かかととつま先に高低差があると、体重が分散され、負担の軽減につながります。

シニアの場合、地面を蹴り出す足の動きに合わせて曲がる柔軟性も必要です」

歩いている最中や、脱ぎ履きのときの転倒対策も必要だ。現在、ひざの負担を軽くするモデルとして注目を集めているスニーカーがアシックスウォーキングの「KNEESUP」。軽量で、つま先が反り上がった形状で転びにくく、足腰の負担も軽減してくれる。

「とにかく脱ぎ履きがラク」とシニアからも人気なのはスケッチャーズの「スリップインズ」シリーズ。かがまなくてもスムーズに脱ぎ履きできるのに、歩いているときは脱げない特殊設計だ。

スニーカーでも、パンプスでも、自分の足の形に合うことが重要。

「つま先の形は大きく3つあり、歩行機能にも影響することがあります。当協議会の調査では、日本人の6割がエジプト型でした。エジプト型の人は、つま先の丸いラウンドトゥや、親指の部分が長めにつくられているオブリークトゥなどがおすすめです」

つま先の形は3種類(イラスト/勝山英幸)
つま先の形は3種類(イラスト/勝山英幸)
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