日本人の約8割が「足のサイズ」を知らない
靴を買うとき、もっとも重要なのは「サイズ」だ。当たり前のように思えるが、サイズ選びを間違っている人は驚くほど多い。
「太ったり年齢を重ねたりして体形が変わると、衣服ならすぐに気づいて買い替えますが、靴には無頓着な人が多い。体重が2kg増えただけでも靴のサイズは変わり、年齢とともに足の骨格も変化するので、若い頃と同じサイズを履き続けるのはおすすめしません」(木村さん・以下同)
木村さんによれば、多くの人が自分のサイズを正確に把握していないという。
「過去にたまたま23cmの靴が合ったからといって、どのメーカーのどの靴も23cmが合うわけではありません。“自称サイズ”が24cmの人の足をシューフィッターが測ったら23cmだった、ということは靴屋“あるある”。実際より大きい靴を履いている人は多く、現場の実感としては、10人測定すると8、9人は“自称サイズ”の靴を履いています」
実際より大きめの靴は履いていてラクなイメージがあるが、歩くと靴の中で足が動くため、1歩歩くたびに指先が前滑りしてつま先がぶつかったり、かかとが擦れたりして、歩けば歩くほど、足のトラブルを招きやすくなる。
桑原さんは、年を重ねたらネットショッピングなどで試着せずに靴を買うのは厳禁とアドバイスする。
「数字の上では同じサイズでも、メーカーごと、ブランドごとに微妙な数値や形状の違いがあります。すでに履いている、自分に合ったシリーズのものでない限り、ネットでの購入は避けた方が無難」(桑原さん)
「私の足は23cm」と思っていても、測るべきサイズはつま先からかかとまでの「足長」だけでは不充分。横幅のもっとも太い部分を測った「足幅」と、甲のもっとも高い部分の外周を測った「足囲」を正確に測定して初めて、足のサイズがわかる。靴を買うときは店舗に赴き、その都度、測定してもらい、フィッティングするべきだ。

もう間違えない試着のポイント
ちなみに、「足がむくみやすい夕方に靴を買うといい」というのは間違い。
「もっともむくんでいる時間帯に買った靴は、むくんでいないときはゆるい。一日のうちでいちばんむくんでいるときを把握し、“むくんでいるときとそうでないときの中間”のタイミングで試着するのがベストです」(木村さん)
測定と試着をして靴を買うなら、できるだけ取り扱うシリーズやサイズが多い方が理想的なので、大手靴専門店チェーンや百貨店がおすすめだ。フィッティングの際は、買いたい靴に合わせる予定の靴下やストッキングを履いて測定、試着するのがポイント。試着したら、実際に店内を歩いて、履き心地とサイズ感を確かめよう。
「靴底にかかとをしっかりつけた状態で、靴ひもなどで足の甲を固定してから歩いてみましょう。全体的な履き心地と同時に、かかとが浮いたり動いたりしないか、つま先に1~1.5cm程度の『捨て寸』というすき間があるか、爪の上側が靴の中で当たっている感覚がないかをよく確認してください。少しでも違和感や気になるところがあれば購入をやめるか、別のサイズを試してみてください」(桑原さん)

そうして、1足だけでなく、複数の「本当に合う靴」を持っておいてほしい。
「1日にかく汗の量は、両足でコップ1杯分だといわれています。毎日同じ靴を履くのではなく、3足くらいをローテーションしてほしい。1足だけを潰れるまで履き続けるよりはるかに長持ちするので、衛生的かつ経済的です。
修理して履き続ける場合は、修理代金が買ったときの値段の半額以上になったら、買い替えの目安と考えて」(木村さん)
健康長寿を支える靴。正しく選べば、何才になっても自分の足で歩き続けられるはずだ。
「アシックスウォーキングKNEESUP」(1万4300円)

「軽くて柔らかく、加齢に伴う足腰の負担を軽減する設計。かかとをしっかりホールドし、反り上がったつま先の形状でつまずきにくくなっています」(アシックス商事の杉本和博さん)
「スケッチャーズ スリップインズ:ゴーウォーク アーチフィット 2.0 – バル」(1万7050円)

「かかとが潰れにくく、スムーズに足を入れられるので、“靴を履く”という動作がラクに。内側は靴べらのような形状でスッと履けて足にしっかりフィットします」(スケッチャーズジャパンの渡部有希さん)
※女性セブン2025年9月18日号