
林家ペー・パー子夫妻の都内にある自宅マンションが火災に見舞われた。それから1週間、元マネジャーであるオバ記者こと野原広子が2人の元へ向かった。現場となったマンションで見た光景と、2人の姿に感じた“強さ”とは──。
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家事のニュースの日、赤羽駅で待った
自宅火事の翌々日、”林家ぺーパー”に会いに浅草演芸ホールに行くと大勢のマスコミが押しかけている。その中から「おっ、オバ記者、取材?」と旧知のスポーツ新聞記者のOさんから声をかけられた。「私、元マネジャーなのよ」と言ったら「えええ〜っ!」って。ぺーさんは高座に上がるなり「話題の主です」とニヤリと笑った。それを客席から見て、ああ、ぺーさん、大丈夫だとホッとした。
火事のニュースが流れた日、私は2人の住まいの最寄り駅の赤羽駅に行って、2時間ほど駅カフェでぺーさんからの連絡を待っていた。火事騒ぎの現場に行っても消防活動のジャマになるだけだもの。LINEに気づいて「マスク届けて」とか「ホテル探して」という連絡が来るかもしれないと思って。
赤羽駅のホームの写真
ぺーさんと知り合ったのは今から25年前。彼らが『女性セブン』に連載を始めて私が担当ライターになったのよ。池袋や浅草の喫茶店で会って有名人の写真をもらって、その写真にまつわる話を聞く。それを何度か繰り返していたある日、私はある相談をぺーさんに持ちかけたの。その内容はさておき、「じゃあ、アルバイト感覚でぼくらに付いてみない?」ということになり3年間、ライターでいたら見られない芸能界を見せてもらった。
それから月日が流れて今年の7月。突然、ぺーさんから「会いたい」と連絡があり、喜びいさんで再会。「私の講演会にゲストで来てくれる?」と言うと「いいわよ」とふたつ返事で茨城まで同行してくれた。それが8月。そして9月も半ば過ぎたと思ったら今回の騒動だ。

「もしかして、ドッキリカメラ?」
冒頭のつづき。火災以来、初めてのツーショット会見ということで浅草演芸ホールの楽屋にマスコミがあふれている。「なんでうちごときにこんなにマスコミが集まるのか、それにビックリしない?」とぺーさん。耳の悪いパー子さんはうんうんとうなずいているけど話の内容は理解していないんじゃないか。だけど、ぺーさんに出火の時の話をするように促されると、ろうそくに火をつける前に火が走ったことをパー子さんなりに語った。

私はだんだん不安になってきた。元気すぎる! 幸い火事で大けがをした人はいないけれど、ぺーさんの自宅は燃えてしまい、下の階は水浸し。決して笑える状態じゃない。だけどそこは半世紀以上、芸人として生きてきた人なんだよね。憔悴しきった顔を人前にさらすなんて考えられないのよ。
いや、それ以前に、いみじくもぺーさんが言っているように「もしかして、ドッキリカメラ?という思いがある」って、それなんだよね。つまり現実感がないの。
駅前のカラオケボックスで再会、その後現場へ
そりゃそうよ。出火をしたパー子さんにしても、いつものように仏壇の前に座って着火ライターで火をつけようとしたら「バーっと火が走った。あっという間に火が広がって煙が出たのでとっさにドアから外に出た」って、何がなんだかわからないっていうのが本音よ。
私は第一報を聞いた時は、仏壇の火がついたろうそくが倒れてそのから火が燃え広がったのかと思ったんだけど違うんだよね。パー子さんの話を聞いた赤羽消防署は仏壇の隣に設置された古いソケットの間のコードがショート、あるいは漏電した可能性が高いという判断だ。

これでは高齢の”ぺーパー”じゃなくても現実感を持てないって。ぺーさんには「困ったことがあったら何なりと」とLINEを入れても返事がない。ようやく電話がかかってきて会う約束をしたのは火事から6日後だ。駅前のカラオケボックスで現状を聞いてから燃えた自宅マンションに向かう。廊下に入ると黒くこげているところが目に入った。

ここで飼い猫が4匹亡くなったと思うと言葉も出ない。”猫っ可愛がり”をしていたパー子さんの気持ちを思うとたまらないわよ。それに、今度のことは他人事じゃないんだよね。年々、「あっ、鍋焦がした!」とか背筋が凍るような失敗が増えていく身。ふとしたことからこれだけの惨事が起こるかと思ったら、いざという時のためのことを考えないと! まずはいらない物を捨てないと。
◆ライター・オバ記者(野原広子)

1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
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