
盆踊りが今、ブームになっている。東京ではこの夏、ほぼ毎週どこかで盆踊り大会が開催されている。盆オドラーとして各地に繰り出しているのが、オバ記者ことライターの野原広子氏(68歳)だ。オバ記者にとってのハマりポイントは?
東京では毎週末どこかで盆踊り大会が開催
記録的な猛暑日続きで、今年は昼の暑さを冷ましてくれる雷雨もない。どうなっちゃってんの?と、不安はつのるばかりだ。その中でひとつだけいいことがあるとすれば盆踊りが雨で中止になることがほとんどなかったこと。
ここ数年、空前の盆踊りブームだ。いやいや、私の中で、ではなくて東京の8月は毎週末ごとにどこかで大規模の盆踊り大会が開かれていてものすごい人出よ。いや、いた、という過去形じゃないね。9月は浅草の雷門盆踊りや渋谷の天空夢祭、目黒の天空祭など大きな盆踊り大会がある。そしてラストは10月19、20 日の日本橋べったら市。要は週末、踊ろうかと思い立つとどこかでやってるわけよ。
で、私も、この夏はいくつか回ったけれど、最も気合を入れて2日続きで通ったのが『中央区大江戸まつり盆踊り大会』なの。

幼なじみのF子のことを思い出した
なんたって10年前に私が盆踊りに目覚めたのがここで、当時は会場の浜町公園の近くに住んでいたから幼なじみのF子を誘って浴衣で踊ったっけ。踊りながらなぜか涙が止まらなくなったの。そんな私を不思議そうに見ていたF子は3年前にすい臓がんであっけなくこの世から旅立っていった。で、F子、今ごろどこで何をしているんだろう、なんて普段は思いつかないことも盆踊り会場でドドンガドン!の太鼓の音か聞こえるとすーっと心をよぎるんだよね。
そうそう、盆踊りはこの世に生きる私たちとあの世に旅立った人ををつなぐ儀式、と聞いたことがある。あんまりいうとオカルトおばさんになりそうだからたいがいにしておくけれど、幽玄っていうの? 言われてみるとそんな気もするんだわ。
話は変わるけれど、私がひとりでも盆踊りに行くと言うと、身近な人はふーん、てな感じ。従姉妹のM美は長いこと社交ダンスの教師をしているから、盆踊りをどう思うのかLINEを入れると「子供のころ、踊ったかもしれないけど覚えてないな」と返ってきたの。なので、盆踊りを変えた曲と言われている荻野目洋子の『ダンシングヒーロー』と『マツケンサンバ』の振り付け動画を送ってみたら、「ええ〜、これが盆踊りなの? イメージ、違う!」だって。
それで、『マツケンサンバ』を効率よく覚える方法はないか聞いたら、「8ビートだから、1234、2234のリズムに振りをはめていけばいいんだよ」だって。なるほどなるほどと自主トレをして『中央区大江戸まつり盆踊り大会』に乗り込んだけど、最後までかからず。
「マツケンサンバは新宿周辺で、神田とか日本橋ではダンシングヒーローだよね」とボンオドラー歴40年のご近所の仲良しMちゃん。かかる曲にこんな違いがあるなんて知らなかった。

私の”ダンシングヒーロー”を発見!
しかしなぁ。これは私の独断と偏見だけど、踊りの上手な人の確率が東京一高いのは『中央区大江戸まつり盆踊り大会』じゃないかと思っている。踊りとか歌ってほんの数秒で上手下手がわかるじゃない? 手の振り上げ方、おろし方。動作が単純なほどサマになっているかどうか一目瞭然で、私なんか手足を動かしているだけで踊りになってないけど、上手い人はわかるんだよね。
でね。今年見つけた私のダンシングヒーローは、ワイシャツの袖をまくりあげて踊っていた40代のサラリーマン氏なの。いかにもかたい会社に勤めています風なのに、まぁ、その形の見事なこと!
「日本橋支店に配属された銀行員で、お得意様の付き合いで始めたらすっかりハマった人と、私は見たね」と、これは初日に同行した仕事仲間のOさんの見立てだ。
紺の浴衣をキリリと着込んだ踊り上手な旦那衆や女将さんも浜町という土地柄、かなりいる。そんな彼らが規律正しくハッチャケて踊るダンシングヒーローはため息が出るほどステキよ。
と、盆踊りに酔いしれた数日後、今度はズンバでイケイケ踊りの68歳の私。同じ前期高齢者なら踊らなソンソンだーと、踊れる幸せをかみしめた夏でした。


◆ライター・オバ記者(野原広子)

1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
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