
自宅マンションが火災に見舞われた林家ペー・パー子夫妻。住む場所を失ってしまったふたりは、今どんな生活を送っているのか。元マネジャーでライターのオバ記者こと野原広子氏がリポートする。
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火事直後にマスコミ対応したワケ
「外にずいぶん大勢のマスコミが来ているけど、どうしますか?」
火事の翌々日、浅草演芸ホールの高座を終えたぺーさんを楽屋口で待って聞いた私。今まで見たこともないくらいヨレヨレのぺーさんを見かねて、今日の取材はやめたほうがいいと思ったのよ。

ところがぺーさんの答えは「受けるわよ。だってうちごときのために来てくれたのに悪いじゃない」。その日はパー子さんも来ていて、火事後、ふたり並んで初めての会見になった。その様子を彼らの後ろから見ていた私は気が気じゃない。とくに火災の時にひとりで部屋にいたパー子さんが何を語るか。
「私、まえから耳が悪かったでしょ。それが最近ではもっと悪くなっちゃって、人が何か話しているのはわかるんだけど、何を言っているかが聞き取れないのよ」と、後からパー子さんは私にそう訴えていた。そう、前からそのせいでトンチンカンなことを言う時があったけれど、会見の時はぺーさんに促されて火事発生の状況をリアルにちゃんと伝えていた。

マスコミがみんな帰ったあとの楽屋で「おつかれさまです」とパー子さんの背中にそっと手を添えたら、以前よりずっと細くなっていて、「たいへんでしたね」以上の言葉が見つからなかった。
口を挟むタイイングを与えなかった以前のペーさん
火事になる前、ということは私が3年間、マネージャーをしていた25年前もそうだけど、ぺーさんと電話で話すのはものすごくエネルギーがいった。一方的に言いたいこと話すのを聞いて疑問がなければ「はい、わかりました〜」でいい。
ところがここで聞いておかないと後々、面倒なことになるぞ、ということが浮かんだ時が困るの。高速でぶんぶん回っている縄跳びに入って一緒に飛ぶような気合いと息合わせがいる。「ぺーさん、ちょっと聞いていいですか?」と口を挟むタイミングを間違えるとガチャッと切られてその後がなかなか連絡が取れない。いや、悪気はないのよ。そういう人柄、性格、芸風なだけで。

ところが今は「ちょっと私の意見を言っていい?」と言うと「ん? なぁに?」と聞き返してくれる。それが嬉しくもあり、寂しくもあり。それだけぺーさん、不安なんだよね。
「パー子がいないんだよ」
不安といえばぺーさんとパー子さんの連絡手段もそう。火事になるまでいつもいっしょにいるから携帯電話を持っているのはぺーさんだけでよかったのよ。たまにぺーさんだけ外出する時はパー子さんは自宅にいるから、連絡は家の電話にかければいい。それが火事で一変した。
まずふたりは寝場所を無くしたので、いっしょの日もあれば別々の日もある。ぺーさんは浅草演芸ホールの高座があるので夜はいない。「今日はパー子さん、どこにいるの?」と聞くと「親戚のうちにいると思う」とぺーさん。赤羽はパー子さんの地元で長い付き合いの人もいる。それなら安心と思っていたら、翌朝、「パー子がいないんだよ」と電話がかかってきた。聞けばもう3日会っていないのだとか。それで親戚の家に行ってみたら、昨日までいたけど今日は何度か泊まったビジネスホテルにいるんじゃないかという。それを説明するぺーさんは慌てふためいているの。
確かにそのホテルにはチェックインしていた。が、ドアを叩こうが部屋が開かない。電話をかけても反応なし。ぺーさんはよほど動転したんだと思う。「何事が起きたんじゃないかと思うからこれから警察を呼んで部屋の鍵を開けてもらおうと思って」と、そこで電話が切れた。
しばらくして「いやいやいや、ご心配かけちゃってごめんねー。いま、救急車で運ばれて病院なんだけど、聞いたら笑うよ。24時間、飲まず食わずだったんだって。それで昏睡状態だったんだって。今? 今は病院で手当てしてもらったから大丈夫。ふつうに話せるよ」とぺーさんは電話で言うけど、もう、どこが大丈夫なのよ。

チャリティー寄席に「ありがたい」
そんなふたりと、ふたりがご迷惑をおかけしたご近所の方々のために、ぺーさんの落語の師匠、林家たい平さんがチャリティー寄席(https://www.ticketpay.jp/booking/?event_id=58852)を開いてくれるという。それをぺーさんは
「たい平師匠 ありがたい 一語 感謝 一語 私如き に どうして!? 一語 未だ 内心 困惑 しています」(原文ママ)と、私にLINEで伝えてきた。
そんなこんなでまだまだ落ち着くにはほど遠いけれど、ひとつずつ目の前のことにていねいに対応するしかないと思う。ご迷惑をおかけしたマンションの人たちに笑顔が戻るまで、私もふたりに伴走します!
◆ライター・オバ記者(野原広子)

1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
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