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《売名でーす》杉良太郎「被災地での福祉活動」を語る「何をやっても反対する人はいる」出版会見で見せた「献身の境地」

会見する杉
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《正直に言うと、『福祉』や『チャリティー』という言葉はなんとなくわかるような気もするが、自分の生き様にしっくりいかない面があると思っていた》

これは、国内外で社会貢献に勤しむ杉良太郎の言葉だ。10月29日に刊行された新著のまえがきに綴られている。では、何がしっくりくるのか。考え抜いた末に頭に浮かんだのは「献身」。40代の頃、ある人から「君がやっていることはチャリティーじゃない。ボランティアでもない。そんな言葉では片づけられない。献身だ」と告げられたことがあったと振り返る。

その場ではピンとこなかったが、当時の倍ほど年齢を重ねた81才の今、スッと腑に落ちたのだという。著書のタイトルは『生涯献身』(徳間書店)。同著は2010年に東京新聞で連載された『この道』の50話と今年9月の連載『私の東京物語』10話に加筆し、再編集したもの。口述筆記ではなく、自らの手で書き下ろし、杉にとっては11年ぶりの新著となる。11月1日に都内で出版発表記者会見を行い、文字に込めた想いを明かした。

まずは今年で66年目に入った、ライフワークとする“福祉活動”の原動力について。

「今日まで、その質問はあまりにも聞かれてきました。『人には親切にしなさい』としつけられた母親の影響かなと考えたり、『“福祉病”です』と答えたり。やりとりを長いこと繰り返してきましたが、これといった原因は思い当たらないんです。最近は『生まれつきです』と答えます。そういう性格だったということ。

日本は地震、津波、洪水、がけ崩れなど、いろいろな災害が起こります。そうした時、“被災地のために自分が何かできないか”と、全国の人が考えることでしょう。その想いも自分に託してくれたという気持ちで一身に背負い、やむにやまれない気持ちで、毎回足を運んでいる。それだけなんですよ」

そして、“売名”発言にも触れた。

「お金のある人はお金を、ない人は時間を、どちらもない人は活動をしている人を理解してほしい。これをモットーとしているのですが、理解することもなく、“あなたは何もしないのに批判をするんですか?”という場面によく出会います。被災地で炊き出しをしている時にメディアから『杉さん、これは売名ですか』と言われたことがある。どういう気持ちで聞いてくるのか、わかりませんけれど。

でもね……。“いいえ、そうじゃないんです。実はこうで、ああで”なんて悠長に話している暇は、ないんです。だから『売名でーす』で、はい、おしまい。それ以上かかわる理由も、時間もないのでね。非常にそっけないかもしれないけれど、それも自分の性格。まぁ、そんな生き様ですよ」

著書が絶賛発売中
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15才で刑務所を慰問したことに始まり、阪神・淡路大震災、東日本大震災、能登半島地震などの災害支援に尽くしてきた。また、10月に行われた天皇皇后両陛下主催の秋の園遊会では日本ベトナム親善大使として招かれるなど、その活動は国内に留まらず、海外にも及んでいる。ベトナムでは245人の養子を迎えるなど、様々な活動へこれまで投じた私財は数十億円。だが杉は、そもそも社会福祉活動について伏せてきた。

「30年ほど、内緒でやっていました。バレたらあれこれ言われて、大変な時代だったんです。でもある自治体に寄付したら公になってしまって、そこで、もういいやと開き直りました。人のため、社会のためを思っての行動でも、それを誰もがみんな、受け入れる世の中ではない。何をやっても反対する人は反対するんです。もう人間って、本当やんなっちゃう」

人は何のために生きるのか。自分にできることは何か――。ひたすら自分に問い続け、考え続けていると、常々語っている杉。その道のりで辿りついたのが、「献身」の境地だった。

「献身とは、頑張って、頑張って、苦しんで、苦しんで、のたうち回って、やっと相手に喜んでもらえるもの。これが福祉の基本。楽ではないんですよ。私はそのことが、身に染みている。見返りを求めず、尽くしてこそなんです。ずっと、私があの世へ行くまで続けるんだろうと思いますよ。時々、自分の心に聞いてみるんです。そうすると『たぶん、そうだよ』と返ってくる。いつまでやってここで終わる、なんて計画はないんです。社会福祉活動は、自然にやっていること。性格だから。これからも変わらず励んでいくだけです」

そう、すっきりした表情で語った杉。芸能活動60周年記念として、同著には上京後の下積み時代からデビュー後の華々しい芸能活動を振り返り、長谷川一夫や江利チエミ、美空ひばりといった、往年のスターとのエピソードも散りばめられている。『文五捕物絵図』『遠山の金さん』の知られざる舞台裏など、昭和の芸能史としても貴重な記録だが、光の陰で杉が人知れず抱えていた苦労や孤独、葛藤も、飾ることなく綴られている。

その節々で、やはり性格なのだろう。月13本の主演ドラマを撮影しながら脚本作りまで担った限界の日々など、どんな時でも「自分にできることは何か」と考え、芸能活動でも見返りを求めることなく尽くしてきたことがうかがい知れる。“生涯献身”――。杉の生き様に触れると、その言葉がスッと腑に落ちる。

今も全国を飛び回る生活
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スラッとした長身スタイル
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今後も献身を続けていく
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