名医10人が毎日本当にやっている【朝と夜の健康ルーティン】「朝のにんじんジュース」「朝食べるカスピ海ヨーグルトに10種類の食材」「寝る前に3分間の『1:2呼吸法』」

1日24時間のうち、朝起きてから夜眠るまでの忙しく限られた時間での、小さな習慣の積み重ね。そのルーティンこそが、健康で長生きできるか、そうでないかを決める。日々忙しく、誰よりも健康でいなければいけない人気の名医たちが毎朝、毎晩している「元気を保つルーティン」とは?
朝こそゆとりを持って過ごす
「健康になるための習慣」は世の中にあふれている。それぞれに医学的根拠があるとされるが、正直どれが本当かはわからない。では、私たちの健康を守ってくれる名医たちには、いったいどんな習慣があるのか。各分野10人の名医に、「朝と夜のルーティン」を聞いた。
朝、起き抜けのルーティンは、その日の健康状態を左右する。呼吸器内科専門で池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんの朝一番のルーティンは「カーテンを開けること」。

「朝日を浴びると体内時計がリセットされ、幸せホルモンのセロトニンの分泌が促され、その日の睡眠の質がよくなります。その後で、夏はコップ2~3杯、冬はコップ1杯の水分補給。寝ている間は汗をかいて血液がドロドロになりやすいため、必ず水を飲んでいます」(大谷さん)
消化器内科病専門医の工藤あきさんは、コップ1杯の水に8分の1にカットしたレモンと小さじ2杯のにがりを入れて飲んでいる。

「水分と同時にビタミンCとミネラルを補給します。酸味によって胃酸の分泌が促され、朝食をしっかり食べることができます」(工藤さん)
起床後すぐにルーティンをこなすには、起きる時間を固定することが大切。それは一日のパフォーマンスを上げるばかりか、一日の終わりにまで影響する。自律神経研究の第一人者で、順天堂大学医学部教授の小林弘幸さんが言う。

「朝から時間に追われてバタバタすると自律神経が乱れ、その日の夜の睡眠の質が下がるほか、腸内環境やメンタルにも影響します。私はどんな日でも起床時間は朝5時です」
二本松眼科病院副院長で眼科専門医の平松類さんも、毎朝必ず6時半起床だ。

「睡眠中に乾いた目を潤し、目覚めをよくするため、起き抜けはまずドライアイ用の目薬をさしています」
朝食と運動で元気をチャージ
今回取材した10人の名医には朝食を抜いている人はいなかった。

兵庫医科大学病院主任教授で脳神経外科医の吉村紳一さんが言う。

「手術は体力勝負。手術中にスタミナ不足になるわけにはいかないので、朝はたんぱく質と野菜を必ず摂ります。最近、スムージー用のミキサーを買ったので、豆乳ヨーグルトと合わせて、朝食にしています」
イシハラクリニック副院長の石原新菜さんが毎朝飲んでいるのは、父で自然療法の名医・石原結實さん直伝のにんじんジュースだ。

「にんじん2本とりんご1個で1杯分。βカロテンのほか、ビタミンCやポリフェノールなどを一気に摂ることができる健康ジュースで、子供の頃からこれを飲んで育ちました。いまは私が毎朝家族全員分をつくって、みんなで飲んでいます」
朝食に食べているもので多かったのが「ヨーグルト」だ。小林さんは、ビフィズス菌入りのものを選ぶ。
「腸内に棲んで腸内環境を整えるビフィズス菌は60代を境に減っていくことがわかっているので、ヨーグルトで補うことにしています。そこにバナナを合わせると、難消化性デンプンが腸内細菌のえさになり、相乗効果が得られるのです。より難消化性デンプンが豊富な緑のバナナを選んでいます」(小林さん)
京都大学名誉教授で予防栄養学の専門家である家森幸男さんと、小児科医の家森百合子さん夫妻は、どちらも80才を超えてなお現役。ふたりが毎朝食べているのは、自家製のカスピ海ヨーグルト。アーモンドやくるみといった数種類のナッツに大豆、きなこ、とろろ昆布、干しぶどう、バナナなど、10種類ほどの食材を加えて朝食にする。

「長寿で知られるコーカサス地方(黒海とカスピ海を結ぶカフカス山脈の周辺地域で、ジョージアやアルメニアなどを含む)で検診したときに持ち帰った種菌で私が手作りしています。脳卒中を起こすのは動物の中で人間だけで栄養の偏りが原因だとわかってきました。良質なたんぱく質や野菜、食物繊維などをバランスよく、塩分を少なく摂ることなどを意識しています」(幸男さん)

30年間もWHO(世界保健機関)の委員だった幸男さんは「1日1膳」をモットーに、栄養バランスが完璧に整った昼食をとっている。それが、百合子さんが毎朝5時半の起床後、すぐにつくる弁当だ。
「『まごわやさしいよ(豆類、ごま、わかめなどの海藻類、野菜、魚、しいたけなどのきのこ類、いも類、ヨーグルト)』を含む、20~30品目は使います。野菜は蒸し、魚は塩分があるので塩ではなくお酢などでの味つけがコツ。冷凍野菜なども活用して、90分くらいで完成します。その後、必ずウオーキングに出かけます」(百合子さん・以下同)

体が資本である医師は、毎日のウオーキングやトレーニングを日課にしている人も。それは、その効果を実感しているからだろう。
「60代のとき、骨密度が下がっていることがわかって以来、積極的に運動するようになったんです。いまは朝に3000歩、通勤で2000歩、合計5000歩が日課です。雨の日でも、よほどの暴風雨でなければ、傘をさして歩きます。おかげで、いまでは60代の頃の骨密度を保てています」
幸男さんも、前出の吉村さん、小林さんも、朝の通勤などを積極的に歩く時間にあてている。
「私は毎朝コーヒーを飲む習慣があるので、歩いて買いに行くようにしています。コーヒーには高い抗酸化作用があり、ぜん息の発症予防のほか呼吸器疾患、心疾患、脳血管疾患での死亡リスクを低下させるなど、さまざまな研究結果があります」(大谷さん)
「ひとりの時間」を確保することをルーティンにする医師は多い。工藤さんは、朝にひとり時間を持つことが、日中のストレスの緩和につながると話す。
「朝はラジオ体操、またはプランクやスクワットなど、それぞれ1分程度の軽い運動を欠かしません。この時間が、日々の疲れやストレスを癒してくれます」
アオハルクリニック院長の美容皮膚科医、小柳衣吏子さんは、朝を1杯の温かい緑茶で始める。

「福岡出身なので、八女茶や知覧茶、嬉野茶などをよく飲みます。起き抜けにおいしいお茶をいれてひとりでゆっくりする時間は欠かせません。同時に、大豆イソフラボンからつくられ、女性ホルモンに似た働きをするエクオールのサプリメントと、そのときの体調に合わせた漢方をのみます」
帰宅と同時に“オフモード”に切り替え
夜の過ごし方にも、理論に裏づけられた名医たちの決まりごとがある。
「帰宅したら、どんなに疲れていても座らず、着替えず、まずは自宅の掃除やメールチェック、翌日の書類整理などを20分ほどかけて行います。これにより、一日バリバリ働いた脳と体が徐々に落ち着いてリラックスモードに切り替わる。自律神経を整えるのに必要な時間です」(小林さん)
朝ではなく夜に運動習慣を持つ医師も多く、吉村さんは毎晩30分間、動画を見ながらの筋トレを習慣にしている。石原さんは、仕事が終わったらジムで30~40分のランニングがお決まり。その後、銭湯でサウナに入ってから帰宅する。
「仕事で落ち込んだ日も、走ってサウナに入ることで、心がリセットされる。毎日、家に着く頃には気持ちがスッキリしています。それから自転車で急いで帰宅したら、まずは350mlのビールを飲むのが何よりの楽しみ。その分、夕食はみそ汁や納豆、ぬか漬け、魚介類をメインにした和食の粗食で、動物性のものをできるだけ控えるルールです」(石原さん)
“健康のためにお酒は控えるべし”という考えもある一方で、リラックスするためにお酒を飲む習慣がある医師は少なくない。
「毎日ビールなら350ml缶を1本、ワインならグラス2~3杯。夜は糖質は摂らず、血糖値の急上昇を抑える食物繊維のサプリも欠かしません」(小柳さん)
平松さんも、栄養バランスを整えるため、サプリメントを愛用している。
「お腹が弱いので、糖質などの吸収を穏やかにするため、夕食前にイヌリンという水溶性食物繊維を、食後はマルチビタミンのサプリを忘れずにのんでいます」(平松さん)
毎日のルーティンが心身のリズムを整える
ぐっすり眠って一日の疲れを取るためには、入浴も大切。石原さんと小柳さんは、真夏でも必ず湯船につかるなど、冷え対策を習慣にしている。
「私は夏でも24時間薄手の腹巻きをしているのですが、夜はこれを厚手のものに取り替えています。内臓の冷えは、便秘、下痢、生理痛、生理不順、むくみなど全身に悪影響を及ぼします。研修医時代に過労で体調を崩したときに始めたら、体温が1℃上がって体重が10㎏も減ったので、それ以来続けています」(石原さん)
近年では睡眠の常識も変わりつつあり、早寝早起きだけが正解というわけではなくなった。医師たちも23時頃に布団に入るという回答が目立ち、質のいい睡眠のための入眠儀式も欠かさないようだ。医療法人康梓会SAWAKO CLINIC × YS統括院長の日比野佐和子さんは部屋の照明を暗めにしているほか、平松さんは遮光カーテンやアイマスク、耳栓など、快適な眠りのための準備も怠らない。

「寝る前に3行日記をつけたら、3分間の『1:2呼吸法』をします。まず鼻から吸い、その後倍の秒数をかけて口から吐く。これだけで自律神経が整い、ぐっすり眠れます」(小林さん・以下同)
名医たちは、いちばんの健康の秘訣は毎日の地道なルーティンだと口を揃える。
「大切なのは続けること。“毎日同じ時間に、同じことをする”という行為そのものが心身のリズムを整え、毎日を健康に過ごす土台になるのです」
「あれをしなければ」「これをしなければ」ではなく、自分が心地よく過ごせるルーティンを続けること。これが健康のいちばんの秘訣かもしれない。