健康・医療

《名医8名が実践》血圧を下げるための習慣「3分早歩き、3分ゆっくり歩くだけ」「ドレッシングは“つける”」「敷き布団は使わず横になる」「外食後はスムージー」

血圧を測る女性
名医が効果を実感している、血圧を下げる習慣とは?(写真/PIXTA)
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健康的な食生活、適度な運動、快眠――。血圧を下げるのに効果があるとされる習慣は数多あるが、限られた時間の中でそのすべてを実践するのは難しい。結局なにが正解なのか? その問いに答えるべく、名医が効果を実感している習慣を徹底取材した。

降圧剤に頼り切るのではなく、生活習慣の改善で血圧を下げたい

7月25日、日本高血圧学会が高血圧管理・治療ガイドラインを6年ぶりに改訂し、75才以上の目標値を「上(収縮期)140未満/下(拡張期)90mmHg未満」から「130/80mmHg」に引き下げた。最高血圧130mmHg未満を目標に治療すると、脳卒中や心臓病のリスクが17%下がるという。

高血圧を防ぐためには降圧剤を服用する手ももちろんあるが、薬への頼りすぎには危険も伴う。東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信さんが言う。

東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信さん
東邦大学名誉教授・循環器専門医の東丸貴信さん
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「降圧剤で血圧が下がりすぎると脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まるほか、腎機能が低下する可能性もある。心不全、不整脈、腎不全、腎障害、脱水症などの副作用にも注意が必要です」

できれば降圧剤に頼り切るのではなく、生活習慣の改善で血圧を下げたい。名医8人が本当にやっている「血圧を下げる究極の習慣」を取材した。

食後に喉が渇いたら塩分過多のサイン

食事に関する習慣で多くの医師が実践しているのが減塩だ。東京女子医科大学高血圧・内分泌内科教授・基幹分野長の市原淳弘さんは、買い物の際に食品表示を必ずチェックするという。

東京女子医科大学高血圧・内分泌内科教授・基幹分野長の市原淳弘さん
東京女子医科大学高血圧・内分泌内科教授・基幹分野長の市原淳弘さん
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「スーパーやコンビニで弁当や総菜を買うときは『食塩相当量』を確認し、1日の塩分摂取量を6gほどに抑えるようにしています」(市原さん)

自炊やスーパーの総菜を購入する際は塩分量をチェックすることはできるが、外食となれば塩分コントロールは難しい。高血圧専門医で日本歯科大学附属病院内科臨床教授の渡辺尚彦さんは、外食後の飲み物に気をつけているという。

日本歯科大学附属病院内科臨床教授の渡辺尚彦さん
日本歯科大学附属病院内科臨床教授の渡辺尚彦さん
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「外食後はスムージーを飲むようにしています。スムージーに使われる野菜や果物に含まれるカリウムは、体内の塩分を排出する働きがある。カルシウムも塩分の排出に効果的なので、牛乳や豆乳を飲むのもおすすめです」(渡辺さん)

スムージー
スムージーに使われる野菜や果物に含まれるカリウムは、体内の塩分を排出する働きが(写真/PIXTA)
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知らない間に塩分過多にならないために、“しょっぱい味つけ”の目安を知っておきたい。産婦人科医の高尾美穂さんはこう話す。

産婦人科医の高尾美穂さん
産婦人科医の高尾美穂さん
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「食事をしてから1~2時間後に喉が渇く場合は、確実に塩分過多のサインです。ドレッシングは“かける”のではなく“つける”ようにするだけでも減塩になります」

運動習慣がない人は負荷が軽い運動から始めて

減塩のほかに多くの医師が習慣化しているのが運動だ。ナビタスクリニック川崎院長の谷本哲也さんは、強度高めの運動をインターバルを入れながら繰り返し行うことをすすめる。

ナビタスクリニック川崎院長の谷本哲也さん
ナビタスクリニック川崎院長の谷本哲也さん
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「心肺機能を高めるとともに、血圧を下げる効果もあるといわれています。私は『20秒腹筋や腕立て伏せをして、10秒休む』という筋トレを4分やり、1分休憩を挟む。それを4回、合計20分間行っています。

運動習慣がない人は負荷が軽い運動から始めましょう。高齢のかたには早歩きを3分、ゆっくり歩きを3分繰り返す『インターバルウオーキング』がおすすめです」(谷本さん)

歩く女性
運動習慣がない人は負荷が軽い運動から始めて(写真/PIXTA)
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運動する時間をつくるのが難しければ、日常生活の中で運動量を増やすこともできると東丸さんは話す。

「通勤の際は1日に6000~7000歩、仕事中も合わせると1万歩近く歩きます。エレベーターやエスカレーターは極力使わず、階段は200~300段を昇降する。それを休日も合わせて週に4~5日ほど実践することを心がけています」(東丸さん)

まだまだ続く猛暑の中、無理に外出したくないという人には室内でストレッチや体操をする手もある。

森鍼灸院院長で日本綜合医学会副会長の森美智代さんが取り入れているのは、「できるだけ硬い平らな板の上で寝て、背骨をまっすぐにする」こと。

森鍼灸院院長で日本綜合医学会副会長の森美智代さん
森鍼灸院院長で日本綜合医学会副会長の森美智代さん
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「背骨や首にゆがみがあると血管の通りが悪くなり、血圧にも影響します。私は敷布団を敷かず半円形の木の枕を使って仰向けに寝て、首の骨と背骨を矯正しています。この状態から手足を天井に向かって垂直に上げ、ぶらぶら振る『毛管運動』も効果的です。毛細血管の7~8割は手足にあるので血液循環の改善が期待できます」(森さん)

入浴するだけでも運動とよく似た効果が得られるという。

入浴する女性
入浴するだけでも運動とよく似た効果が(写真/PIXTA)
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「なるべく肩まで湯船につかり、30分くらい入ります。入浴中は知らない間に脱水気味になってしまうので500㎖のペットボトルを持ち込み、こまめに水分補給をしながら飲みきるようにしています。長風呂が苦手な人は、10分程度でもいいでしょう」(市原さん)

血圧は自律神経とも密接な関係がある。ストレスや興奮によって交感神経が優位になると血圧が上がり、リラックスして副交感神経が優位になると下がる。

富永ペインクリニック院長の富永喜代さんが取り入れているのは、有酸素運動と気晴らしを兼ねた「道の駅」散歩だ。

富永ペインクリニック院長の富永喜代さん
富永ペインクリニック院長の富永喜代さん
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「“あっちの果物を見に行こう”とか“旬の魚がある!”とワクワクしながら歩くことでリフレッシュできます。ゆるやかな運動はインスリン抵抗性の改善にもつながり、ストレス発散により交感神経が抑制されるので血圧低下には一石二鳥です。雑貨店やアンテナショップなど、自分が集中できるような好きなものがある場所をぼーっと散歩するといいでしょう」(富永さん)

「道の駅」散歩する富永さん
「道の駅」散歩する富永さん
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スマホの電源は思い切ってオフに

アットホーム表参道クリニック副院長の宮尾益理子さんは、「普段から気持ちのコントロールを心がけている」と話す。

アットホーム表参道クリニック副院長の宮尾益理子さん
アットホーム表参道クリニック副院長の宮尾益理子さん
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「怒り、憂い、恐れといったネガティブな感情に惑わされると血圧が上がってしまいます。患者さんには“心を平らかにして、あまり怒らないように”とか“急いでもいいけど焦らないように”とお伝えしています」(宮尾さん)

リラックスし体を休めるといえば睡眠だ。今回取材した名医の多くが「6~8時間睡眠」を実践していた。

「睡眠時間は7時間は確保したいです。寝ついたり起き上がったりする時間も考えると、30分多めの7時間半を確保するのが理想です」(高尾さん)

寝る女性
睡眠時間7時間半を確保するのが理想(写真/PIXTA)
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血圧を下げる“質のよい眠り”を得るには、就寝前の過ごし方が大きな鍵だ。

「パソコンやスマホを寝る直前まで見ていると、ブルーライトの刺激で交感神経のスイッチが入りっぱなしになり熟睡しにくくなる。私は着信や通知が睡眠の妨げとならないよう、寝る1時間前にはパソコンやスマホの電源を切っています」(市原さん)

張り切ってこれらのルーティンを取り入れても、三日坊主では元も子もない。継続するには楽しむことが大切だ。

「義務感でがまんしながらやっていると、逆にストレスになり長続きしません。ひとりで黙々と歩いてもつまらないという人は、ウインドーショッピングを兼ねてもいいし、誰かと一緒に歩いてもいい。自分で楽しむ工夫をして心地よく前向きに取り組めるといいですね」(宮尾さん)

自分に合った習慣を見つけて、日々の生活に取り入れることで自然と血圧を下げていきたい。

和食
バランスのよい食事や睡眠、運動など、自分にあう習慣を見つけて(写真/PIXTA)
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私の「血圧を下げる究極の習慣」

東丸貴信さん(東邦大学名誉教授・循環器専門医)

・朝昼晩にNHKの『テレビ体操』を行う
・外出時はエスカレーターやエレベーターは極力使わない
・睡眠時間は6~8時間は確保する
・自家製豆乳と牛乳を週に4日飲む
・食事は1週間を通して肉が7割、魚が3割になるように。肉は鶏肉か豚肉にする
・野菜から食べるようにする
・水分摂取は水かお茶で。経口補水液は飲まない

市原淳弘さん(東京女子医科大学高血圧・内分泌内科教授・基幹分野長、東京女子医科大学病院副院長)

・起床後、早朝血圧を3回連続で測る
・塩分を控え、1日の摂取量は6gに抑える
・カリウム、カルシウム、マグネシウムを摂取する
・1日8000歩ほど歩く
・入浴時間は30分。湯船には肩までつかる
・就寝1時間前にはパソコンやスマホの電源は切る

渡辺尚彦さん(高血圧専門医、日本歯科大学附属病院内科臨床教授)

・食事の際はしょうゆ、塩分は控える
・海藻類を積極的に摂取する。おすすめはもずく
・外食後はスムージーを飲む
・24時間血圧を測定する(朝と夜だけの測定でも問題ない)
・1日8000歩歩く

高尾美穂さん(産婦人科医)

・味つけは薄めにして、塩分を控える
・睡眠時間は7時間は確保する
・体の変化に気づけるよう、毎日体重を測定する
・驚かないですむよう、普段からいろいろなことを想定しておく
・ドレッシングは“かける”よりも“つける”

谷本哲也さん(ナビタスクリニック川崎院長)

・腹筋や腕立て伏せを20秒行い、10秒休む。この筋トレを4分繰り返す
・3分早歩きをし、3分ゆっくり歩く。これを30分繰り返す
・エスカレーターやエレベーターは使わず、公共交通機関での移動もできるだけ座らない
・オリーブオイルを意識的に摂取する

森美智代さん(森鍼灸院院長・日本綜合医学会副会長)

・背骨がまっすぐ伸びるよう、敷き布団は使わず硬い板の上で寝る
・下着のみ着用して、タオルケットを着たり脱いだりする。
・皮膚呼吸が促進され血流がよくなる
・仰向けに寝た状態で左右に背骨を振る
・仰向けに寝た状態で手足を天井に向かって振り上げる
・青汁と柿の葉っぱのお茶を飲む

富永喜代さん(富永ペインクリニック院長)

・「道の駅」を散歩する。ウオーキングと同時にストレス発散にもなる
・塩分を控え、カリウム、カルシウム、マグネシウムをバランスよく摂取する
・深呼吸してリラックスする時間をつくる
・睡眠リズムを整え、睡眠時間は6時間は確保する

宮尾益理子さん(アットホーム表参道クリニック副院長)

・睡眠時間は最低6時間は確保する
・アルコールを飲みすぎない
・ラーメンのスープは飲み干さない、漬けものにしょうゆはかけないなど塩分を控える
・ウオーキングやテニス、ゴルフなど汗をかく程度の運動をする
・怒ったり焦ったりしないよう心穏やかに過ごす

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※女性セブン2025年9月25日・10月2日号