《ジェネリック薬・知っておきたい問題点》「先発薬より安価で同じ効果」のはずでも細かい点では“まったく違う”…コスト削減競争による品質不正やずさんな管理の実態
原薬仕入れ先のインドでは混入事故で子供24人が死亡
ジェネリック医薬品メーカーを取り巻く環境が厳しくなる中、中国やインドなどで生産された安い「原薬」の利用が広がっている。
原薬とは薬の有効成分のこと。解熱鎮痛薬だと「アセトアミノフェン」や「ロキソプロフェンナトリウム水和物」が原薬にあたる。
「薬の生産工程は主に3つに大別できます。第1段階では、化学物質を合成して、原薬を作り出す工程があります。第2段階として、できた原薬をのみ薬や錠剤などの形にする成形工程。第3段階では包装シートなどに梱包する工程があり、製品として出荷され、薬局に届けられます。日本の製薬会社の多くはこの第2、3段階しか担っていません」

工程によって品質リスクは異なる。例えば化学合成の工程では、化学原料の加熱・冷却を繰り返す際に手抜きをしたら、その原薬を使って作られた薬は効き目に問題が出る可能性がある。先発薬と同じ有効成分といってもリスクがあるのだ。
「成形に使うカプセルなどの材料を勝手に安いものにしたり、汚染・劣化したものを使うと、胃の中でうまく溶けなかったり、体調を崩す原因になる。品質の試験をやっていたとしても、試験のときだけちゃんと作った“替え玉”を用意して、それが終わると元の安い材料や手抜き工程で作ったものに戻す、ということが行われるリスクがあります」
そうした不正行為は、日本国内で行われた場合、社内調査や行政による検査で発覚することもある。
だが、海外で行われた場合、国内メーカーや当局が調べることは極めて難しい。
「日本のメーカーが海外の製造業者の品質管理を完全にコントロールするのは難しく、現地の品質管理体制や製造倫理が、日本の基準に満たないリスクがあります」(長澤さん)
安全性が担保されていないにもかかわらず、すでに日本のジェネリック薬の原薬の多くは海外に頼っている。「ジェネリック医薬品・バイオシミラーに関する使用実態・取組状況等に関する調査報告書」(2025年3月)によると、国内製造された原薬を使用したジェネリック薬は約3割しかなく、輸入した原薬をそのまま使用するものは約5割だった。その仕入れ先企業数の1位と2位が中国とインドで、特にインドでは品質不祥事が多発している。
今年10月、インドで製造された子供向け咳止めシロップに有毒物質であるジエチレングリコールが混入し、24人の子供が死亡した。
「ジエチレングリコールには甘みがあるため、化学知識のない製薬メーカーの経営者が味付けとして混ぜたのかもしれません。
インドにはすばらしい技術を持つ世界的な製薬会社が存在しますが、貧富の格差が大きいので労働者を安くこき使ってお金儲けをしようという製薬メーカーもある。そうした会社の経営者は医療の素人であることが多く、品質管理がずさんになります」(室井さん)

米ボストン在住の内科医・大西睦子さんが言う。
「インドや中国の工場では、過去に異物混入や成分の過剰・不足、NDMA(発がん性物質)の混入などの品質問題が実際に発生しました。そうしたニュースがアメリカではジェネリック薬=不安というイメージを強めています」
ジェネリック薬の製造において海外依存は今後も高まる見込みだ。
「ジェネリック薬の品質管理はアメリカ食品医薬品局(FDA)や日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)などの厳しい査察・規制がある。しかし、収益が上がらない中、原材料費の高騰に晒されており、品質管理や設備投資にお金や人を割く余裕がない。そうした場合、査察が追いついていない。
懸念はあってもより安い原料を求めて、インドなどの新興国から原薬に依存していく流れは変わらないと思います」(大西さん)
やみくもな医療費削減は、果たして患者ファーストといえるのだろうか。
※女性セブン2025年12月11日号