推しへの“依存”で経済的に苦しくなり健康を損なうことも
一方、推し活にのめり込みすぎると危険もある。知っておきたいのが、推し活で放出されるドーパミンが諸刃の剣であること。
「ドーパミンが分泌されると幸福感ややる気が出る半面、疲れに気づけなくなり、推し活以外のことができなくなったり、際限なくお金を使いすぎて生活が立ち行かなくなったりするケースも少なくありません」(熊代さん・以下同)
ドーパミンはギャンブルや麻薬、恋愛などへの依存や中毒ももたらすため、「推し活依存症」に陥らないように気をつけたい。

「推し活にのめり込みすぎることで、お金や時間を注ぎ込んで最終的に身を滅ぼすリスクがあります。日常生活のストレスなどで心のコントロールが弱くなっているときは依存しやすく、つらい現実から目を背けるために推し活をはけ口にすると、必要以上に時間やお金、体力を注ぎ込んでしまいやすい。結果的に睡眠時間も体力も削られ、それでも依存から逃れられず、借金してまで推し活を続けたり、お金が枯渇して健康を害する恐れもあります」
推しは自分になくてはならない大切な存在だからこそ、心を寄せすぎると、推しの結婚や引退、フィクションの世界での死などで心を病んだり、思い描いた理想と異なる解釈違いで幻滅したりと、愛していたはずの推しの存在が大きなストレスに感じるようになることさえある。
「心のよりどころである推しのことを、家族や恋人のようなかけがえのない存在と感じる人も少なくありません。すると、推しに期待を裏切られることが、家族に裏切られることと同等のショックに感じてしまうのです」(牧さん・以下同)
「推し活」のしすぎで疲弊しないために守るべき「用法用量」
健康的な推し活が生きる活力やモチベーションになる一方、一歩やり方を間違えると「推し活疲れ」を引き起こし、かえって心身のバランスを崩してしまう。
「誰のどんな推しも、誰かがつくったビジネスで、“旬”があることを忘れないようにしましょう。推させる側にとっては、売れるうちにイベントや配信、グッズを供給したいもの。そうして情報量が増えるほど、ファンは時間やお金を使います。それらすべてを追いかけようと頑張りすぎれば疲弊してしまう。いつ健康やお金を失うかわからないから、推しは推せるうちに推せと言う人もいますが、自分が推せる範囲のうちにとどめて、無理のない範囲で推し活をすることが大切です」
推し活のメリットを最大限に享受しながら楽しむには「用法用量」を守らなければならないのだ。
「博報堂のデータでは、特に推し活に積極的な20〜30代でも、推し活に使うお金は月収の1割程度でした。多いように感じるかもしれませんが、逆に言えば、どれだけ推し活に熱中していても、月収の1割までに抑えるべきだということです」(熊代さん)

一方の牛窪さんは「箱推し」になることをすすめる。
「推しが1人しかいないと依存して浪費したり、“推しロス”で気分がめいるなどのネガティブな事態を招きやすくなります。2番目、3番目の推し予備軍をつくったり、例えばアイドルならグループごと、スポーツ選手ならチームごと、アニメなら作品ごと全員を推す『箱推し』になったりするのがいいでしょう」(牛窪さん・以下同)
何より大切なのは、自分のペースを守って、推し活そのものを楽しむこと。
「恋愛は相手のペースに引きずられますが、推し活は自分のペースで推しとのかかわり方を選ぶことができるのがいいところ。同じ推しを持つ『同担(どうたん)』と自分を比べず、慌てず焦らずマイペースで堪能することこそ、推し活の極意なのです」
あなたの「推し活」は、あなた自身が舵を取れる、あなただけのもの。せっかく出会えた推しなのだから、無理なく、楽しく、いつまでも、心から好きでい続けよう。
※女性セブン2025年12月11日号