
日本はいまだに、先進国の中では女性の社会進出が遅れているといわれる。だが、重責を担いリーダーとなる女性や、男女の差に関係なく働き、お金を稼ぐ女性が確実に増えている。自ら成功をつかみ取った女性たちはどうやって働き、稼いできたのか。ドムドムフードサービス代表取締役社長・藤崎忍さんに話を聞いた。
「ドムドムハンバーガー」を運営するドムドムフードサービスの社長である藤崎さんは21才で結婚後、専業主婦として家庭を守り続けてきた。39才を迎えた2005年、大黒柱だった夫が体調を崩し、家計のためにファッションビル「渋谷109」のアパレルショップに、人生で初めて就職することとなった。人生初の同僚は、いわゆる“渋谷のギャル店員”だ。
「いままで私が生きてきた世界にはいない、見た目も、生活も、まったく違う女の子たちでした。でも、中身は一生懸命で誠実で、優しい。だからカルチャーショックはなく、私の知らなかった109の文化を体現した彼女たちにワクワクして、リスペクトする気持ちが大きかったんです。
“自分はいままで生きてきた世界の固定観念しか知らない”とわかり、何事も“こだわらない心”で歩んでいいと学びました」(藤崎さん・以下同)
109で得た“こだわらない心”が、のちの藤崎さんの成功につながる、思いがけない足がかりとなる。
2011年には居酒屋「そらき」を開業。瞬く間に人気店となり、翌年には2店目も出店した。
夫が亡くなり、息子が独立した2017年、51才のとき。「そらき」の常連客で、事業再生をめざしていたレンブラントホールディングス専務が藤崎さんに声をかける。
「ドムドムハンバーガーの商品開発に携わることになりました。そこで改善に努めたのは『コミュニケーション』。資料を読み上げて売り上げの悪い店舗が謝るだけで会話がなく、上層部に誰も異議を唱えられない形だけの会議に疑問を感じ、“私を、上層部に意見を言える立場にしてください”と、直談判したんです」
その結果、わずか9か月で社長に抜擢された藤崎さんの働きが店舗を変え、会社をも変えることとなった。
メニューも事業も「こだわらない心」
ドムドムハンバーガーの魅力は、「丸ごと!! カニバーガー」や「手作り厚焼きたまごバーガー」など、独創的なアイディア。コロナ禍ではオリジナルのマスクの販売にも踏み切った。

「多くの店舗が町のスーパーやショッピングモールの中にあるため、コロナ禍でも休業できず、当時の深刻なマスク不足の中で働く従業員を守るために、洗って使えるマスクをつくったのが始まり。社会貢献になるかと、そのマスクをレジ横にそっと置いて販売したら、SNSでバズって行列ができてしまった。密になるので販売はやめました。
すると“販売を再開してほしい”と問い合わせが殺到。それまではずっと行っていなかったECサイトを10日で立ち上げることに決めたところ、瞬く間に17万枚もの注文をいただきました。売り上げよりも、従業員とお客さまの双方を重視した結果、実を結んだことがうれしかった」
学生時代の夢は「お嫁さんになること」だった藤崎さん。いまでも、仕事と家事をこなし、「お互いがお互いのストレス解消になる存在」と語る。
「39才で食べていくために働き始めて以来、仕事はとにかく必死でこなしていました。高い目標があったわけでもなく、ただ目の前のことを一つひとつ、必死にやっていたら、いまにつながっていたんです」
成功するには、立派な目標も、ドラマチックなきっかけもいらない。勇気を出して飛び込んで、一歩ずつ進んでいけば、道は、誰にでも開けているのだ。
※女性セブン2025年12月25日・2026年1月1日日号