
中国人の女性インフルエンサーらは、なぜカンボジアを目指すのか。中国事情に詳しいジャーナリストの奥窪優木氏が話す。
「中国のインフルエンサーは、いわば『ネット上の実演販売』であるライブコマースの配信で稼いでいました。かつて『網紅(インフルエンサー)の女王』と呼ばれたViyaさんや『口紅王子』こと李佳琦さんといったトップクラスの配信者は、コロナ禍の“巣籠もり消費”を追い風にライブコマースが最も盛り上がった2020年下半期には、月収が数十億円に達したとも言われています。
儲け過ぎた彼女たちは脱税容疑や世論からの批判に晒されて立場を失いましたが、それによってライブコマース配信自体は裾野が広がり、中小規模のインフルエンサーが活躍するようになりました。日本の10倍以上のSNSユーザーがいる中国では、10万人程度のフォロワーぐらいでは、そこまで強力なインフルエンサーにはなりませんが、それでもライブコマース配信で月収80万円程度を稼ぐことも十分可能だったと聞きます」
しかし、そんな業界に暗雲が垂れ込める。
「コロナ後、経済の先行き不安がはびこり、中国で『消費降級(商品のグレードダウン)』という言葉も広がるようになるなか、『インフルエンサーの口車に乗せられて買う』という人は大幅に減りました。さらに最近では、AIによって生成された“AIインフルエンサー”が登場し、彼女たちの仕事を奪っていった。ライブコマース配信は淘汰の時代に入り、簡単には稼げなくなったのです」(前出・奥窪氏)
そんな、食いあぐねたインフルエンサーにとって「甘いささやき」となっているのが「カンボジアへの出稼ぎ」なのだという。再び前出の東南アジア事情に詳しいフリーライターが語る。
「カンボジアの主要都市には、詐欺集団をはじめとする中国系の犯罪組織が数多く拠点を構えています。同時に、そうした組織の幹部らが楽しむ『夜の店』も乱立しており、若いアジア人女性をリクルートするスカウトグループも暗躍してます。インフルエンサーという肩書きもあり、見た目の良い若い女性たちは『高く売れる』ため、好条件が提示されます。ただ、なかには仕事内容を『モデル』や『広告出演』などと偽ってカンボジアに連れてくる悪徳業者もおり、意図しないでカンボジアの夜で働き始める女性もいるといわれています」
一見、煌びやかに見える中国人インフルエンサーの煌びやかな生活は、かくも危険と隣り合わせなのだ。