
現在、高血圧治療を受けている全国1600万人以上の患者のうち、女性は約866万人と半数以上を占める。高齢化とともに男女とも高血圧を発症する人は増え続けていて、潜在患者数は4300万人ともいわれる。放置すると命を脅かされる危険があり、多くの女性を悩ませる「国民病」とどう向き合うべきか。最新事情を追った。【全4回の第1回】
女性は閉経までは「ホルモン」に守られているが更年期以降で急激に上昇
血圧とは、心臓から送り出される血液が血管の壁を押す圧力のこと。血圧が高いと血管の弾力性が失われて動脈硬化が進み、脳出血や心筋梗塞、心不全などのリスクが増す。一般に遺伝要素や生活習慣によって発症することが多いが、発症や要因に性差があることはあまり知られていない。女性の高血圧に限れば、その大きな特徴は発症する時期が遅いことだ。東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸(とまる)貴信さんが指摘する。
「女性ホルモンの代表格であるエストロゲンには副交感神経を活性化したり、血管を広げて血圧を適切な範囲に保つ働きがあります。
しかし更年期以降はエストロゲンが急激に失われて血圧が高くなりやすい。男性は中年期に差しかかる頃から高血圧傾向にある人が目立ちますが、女性は更年期以降に発症するケースが多くみられます」
医療法人社団鉄医会理事長で内科医の谷本哲也さんも更年期の影響を指摘する。
「女性は更年期になるとエストロゲンの低下に伴って、血管の機能変化や動脈硬化が進みやすくなり、ほてりが出やすい人では交感神経の影響も受け、血圧が上がりやすくなります。
また、閉経後に脂肪がつきやすくなって体重が増加すると、無呼吸症候群のリスクが高く、心臓に負担をかけても体の隅々に血液を届けようと血圧が上がります。閉経前の女性はホルモンに守られていますが、閉経後はその“ガード”を失うため高血圧になりやすいのです」

男女の自覚症状の違いに注目するのは『薬に頼らず血圧を下げる方法』の著者で薬剤師、医薬研究者の加藤雅俊さん。
「男性は加齢とともに血管の柔軟性が低下し、血圧が徐々に高くなりやすいため、自覚症状が少ない傾向があります。そのため健康診断などで『血圧が高いですよ』と指摘されて、初めて高血圧に気づくケースが多いのです。
一方の女性は閉経前後にホルモンが変化して血圧がドーンと上がるケースが目立ちます。ホットフラッシュや手足の冷えが急に生じて、体の異変に気づくことは更年期の“女性あるある”です」
ほかにも女性特有の高血圧事情がある。
「女性は妊娠・出産やピルの服用、卵巣や腎臓の病気などに伴って血圧が上がることがあります。ただし、基本的には女性ホルモンのおかげで女性の方が男性よりも高血圧の進み方が遅い。
60才以降は進み方が男性に追いつき、80才くらいになると性差は完全になくなります」(東丸さん)
妊娠時や出産時に高血圧になった女性は、その後、血圧が正常に戻っても、そこから年齢を重ねると血圧が上がりやすいとの指摘もある。「年をとったら急に高血圧になった」というのは生活習慣や食習慣の変化というよりも、ホルモンの変化によるものなのだ。
高血圧になると塩分を控えることが推奨される通り、高血圧には塩分も深く関係する。塩分は体内に取り込まれ血液で運ばれるが、その際、血中の塩分濃度を薄めるため血液内に水分を取り込み、血液量が増加して血圧が上がる。そして、性差はここにもある。
「塩分で血圧が上がるかどうかは個人差が大きく、塩分感受性の影響については専門家でも意見が分かれる部分があります。
ただし一般的に女性の方が塩分に敏感な人が多いとされます」(谷本さん)
性差を知ることが高血圧に向き合う第一歩となる。
(第2回につづく)
※女性セブン2026年2月5日号