患者やその家族が医療者と良好なコミュニケーションを取るのが必要
一方で、近年は終末期の病気において変化がみられる。めぐみ在宅クリニック院長の小澤竹俊さんが語る。
「緩和ケアの手法や鎮痛薬などが広く浸透し、終末期における身体的な痛みをかなりカバーできるようになりました。たとえば、死因1位のがんは統計的に6〜7割の患者に痛みが出ますが、適切な緩和ケアを施せば9割以上の確率で強い痛みから解放されます」
在宅医療「やまと診療所」などを運営する、医療法人社団焔理事長で医師の安井佑さんもこう語る。
「現在の医療水準では病院や在宅を問わず、緩和ケアをしっかり行っている医療機関なら、うめき声をあげるような苦痛のなかで最期の1週間を過ごして亡くなることはあり得ません。特にがんは進行が予測しやすく、痛みや苦しみをコントロールしながら最期を迎えられる病気になりました」

医療技術がカバーするのは病気の痛みだけではない。寝たきりになった際には床ずれでできる褥瘡が苦痛を招くが、こちらも近年は改善がみられる。
「最近は皮膚科の先生が褥瘡の治療にかかわるケースが増えています。専門家が入ることで褥瘡の治療がうまくいけば傷も治りやすく、結果として痛みを軽減できるんです」(大津さん・以下同)
医療現場において患者の痛みの軽減が可能になるなか、問題となるのが医療側が適切なケアを提供しているかどうかだ。大津さんは、誰が主治医になるかによって患者の痛みが大きく変わる状況を不安視する。
「痛みの治療は以前より進歩していますが、やはり難しい痛みは存在します。そのような痛みは、がんならば緩和ケア医、がん以外ならばペインクリニックの医師が専門です。かつては、“病気が治れば痛みも軽減する”と、痛みの治療が後回しのこともありました。その頃とはだいぶ状況は変わってきましたが、がまんせず痛みはしっかり訴えること、標準的な治療で緩和されなければ専門家にかかることの2つが大切です」
患者やその家族とコミュニケーションが取れない医師に当たってしまうことも不幸を生む。
「後悔しない看取りには、医療者と患者やその家族が良好なコミュニケーションを取ることが欠かせません。ある調査では、終末期における医療者の思慮に欠ける言葉によって、患者の家族の看取りが3.9倍つらくなるとの結果が出ました」(後閑さん)
(後編に続く)
※女性セブン2026年2月19・26日号