9才までは使われない不要な回線がどんどん削除される
脳年齢から見た人生の第一ステージは0〜9才の「幼少期」だ。『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』の著者で、脳科学者の西剛志さんが指摘する。
「生まれたての脳には莫大なニューロンとシナプスがあり、多くの回線がつながっていますが、そこから使われない不要な回線はどんどん削除されます。9才までこうした“刈り込み”によるネットワークの整理が行われます」
脳がネットワークを整理する時期、脳の活性化に役立つのは運動だという。
「昔は“運動ができない子は勉強ができる〟というイメージがありましたが、近年の研究では体力のある子は勉強もできることが明らかになっている。脳科学的には、運動によってニューロンの周囲に電気抵抗性のある皮膜のミエリンが発生し、ミエリンをワープして神経伝達が行われると脳のネットワークが高速化するからと考えられています。要は、子供の頃にたくさん動くと頭の回転が速くなるのです」(西さん)

運動とともに栄養も欠かせない。室井さんが話す。
「幼少期はニューロンとシナプスが密に結合してネットワークの密度がどんどん増していきます。脳が急速に成長するこの時期は、神経伝達物質の原料となるたんぱく質など栄養分をしっかり摂取してサポートすることが大切です」
思春期が32才まで続く可能性
そして9才になる頃、最初の転換点が訪れる。9才から32才まで続く「思春期」は、記憶力や判断力、コミュニケーション能力などが向上する時期だという。
「脳はそれまでの無秩序な成長から秩序だった発達へ移行し、ネットワークが区画整理されて脳全体が統合されます。この時期は脳の活動が活発で、新たな経験や刺激を取り入れることでネットワーク構築がさらに促進されます」(室井さん)
神経線維が大量に密集する白質が発達すればするほど脳は高速化する。思春期はまさに白質の発達が顕著であると西さんが続ける。

「論文を見たところ被験者の白質のネットワークは32才まで増え続けており、思春期の終わりまで頭の回転の速さが続くと考えられます。これはほかの研究の結果とも合致し、白質だけでなく脳の司令塔であり、前頭葉の大部分を占める『前頭前野』も30才前まで成長することがわかっています。
思春期は神経細胞の中でもよく使う、必要なものだけが残るようになり、遠くまでネットワークがつながることで脳全体を効率的に使えるようになります」
注目すべきは思春期の長さだ。これまで心理学的には、思春期は20代手前で終わると考えられていたが、今回の脳の研究から“32才まで思春期が続く”可能性が示された。
これを受けて加藤さんは「人間は32才まで学び続けるべき」と指摘する。
「誰しも脳の成長が続く32才までいろんなことを学んで身につける環境に身を置くべきです。現行の大学入試で脳のよしあしを決めるのは科学的ではない。20才の段階でどの大学に合格したかで優劣をつけるのは、バカげています」
(第2回に続く)
※女性セブン2026年3月19日号