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《お風呂博士が解説》健康寿命を延ばすための【お風呂の入り方】理想的な入浴法は「40℃に10分」「就寝の90分前に」「入浴後はコップ1~2杯の水分」

心身に効くお風呂のスゴさとは?健康寿命を延ばす「お風呂の入り方」も紹介(写真/PIXTA)
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健康やアンチエイジングのためにと運動やダイエットをがんばっても、なかなか続かない―─。そんなあなたがまずやるべきは「お風呂に入る」こと。汚れを落として温まるだけじゃなく、「正しい入り方」がわかれば血行がよくなり、血圧も安定し、肌も潤うなど、一石何鳥もの効果が望めるのだ。また、「毎日お風呂に入る人は、そうでない人より幸福度が高い※」というデータも。心身に効くお風呂のスゴさを解説。今回は、健康寿命を延ばす「お風呂の入り方」を紹介する。

※早坂信哉さんら東京都市大学の研究チームが6000人を対象に行った調査。週7回以上湯船につかる人のうち幸福度を感じる人は54%、週6回以下の人は44%と10ポイントの差がある。

「なんとなく入る」はもったいない!

日々、当たり前のようにしている入浴。しかし、「真の効果を理解している人は少ない」と、温泉療法専門医の早坂信哉さんは言う。

温泉療法専門医の早坂信哉さん
温泉療法専門医の早坂信哉さん
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「私たちの調査では、冬、週7回以上湯船につかっている人は、週2回以下の人に比べ、新たに要介護認定を受けるリスクが29%低く(※1)、夏に毎日湯船につかる人は、そうでない人より9年後の認知症リスクが26%低い(※2)という結果が出ています。

(※1:全国の65才以上の自立高齢者1万3786人を3年間追跡した調査による。Yagi A, Hayasaka S, et al. J Epidemiol.2019 Dec 5;29(12):451-456.)

(※2:65才で要介護認定を受けていない約7500人を9年間追跡した調査による。Yanagi N, Hayasaka S,et.al. J. Balneol. Climatol. Phys. Med. 2025;88(2):73-82.doi:10.11390/onki.2365)

毎日、何気なく入っているお風呂の効果が、医学的に証明されているのです」(早坂さん・以下同)

さらに、入浴習慣のある人は脳卒中のリスクが26%、心筋梗塞のリスクが35%減少したという調査結果(※https://doi.org/10.1136/heartjnl-2019-315752)も。

なぜ、入浴が認知症や心血管疾患の予防になるのか。

「主な理由は『温熱作用』にあります。体が温まると、脳や内臓といった体の中心部である『深部体温』が上がり、血管が広がることで血液が全身に行き渡ります。 

認知症や心血管疾患は、脳や心臓へ血液や酸素がうまく行き渡らないことでリスクが高まるため、入浴による血流改善はこれらの予防につながるのです。

また、温熱作用には慢性的な体のコリや痛みをほぐす効果もあります」

さらに、入浴には次のような作用もあるという。

入浴にはさまざまな作用が
入浴にはさまざまな作用が(写真/PIXTA)
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【清浄作用】皮膚の汚れを落とし、感染症を予防する。

【静水圧作用】体に水圧がかかり、下半身にたまった血液やリンパ液が心臓に押し戻され、むくみが解消。

【浮力作用】水中では体重が約10分の1になるため、関節や筋肉への負担が軽減され、体の緊張がほぐれる。

【蒸気・香り作用】湯船に立ち上る蒸気が鼻・のどの粘膜を潤し、細菌やウイルスを洗い流す。

【抵抗性作用】湯の中では陸上の3〜4倍の負荷がかかるため、ゆっくりと体を動かすだけで多少ながら筋トレ効果が見込める。

【開放・密室作用】「裸でひとり」という非日常空間のため、心身が解き放たれる。

「昨今『風呂キャンセル界隈』なんて言葉がありますが、これらの健康作用を考えると『いやいや入る』のはもったいない。入浴も『健康作り』と捉えてほしいです」

理想的な入り方は40℃に10分入浴

「人は血管から老いる」といわれる。加齢で血管の柔軟性が失われ、動脈硬化が進むからだ。健康寿命延伸のためにも、血管を広げる効果のある入浴は有用だ。

「血液が行き渡るためには、深部体温が上がる程度の入浴が効果的。理想は『40℃のお湯に10分つかる(以下、40℃10分)』こと。どの年代のかたにも安全な数値です。入浴には、血管のしなやかさを保つ一酸化窒素(NO)の産生を増やす働きもあるのです」

浴室の温度や体格差、年齢等にもよるが、一般的に「40℃10分」で深部体温は0.5〜1℃上がるという。

「深部体温が上がることで得られる効果は血行促進だけではありません。免疫細胞が活性化されて免疫力が上がり、肌のターンオーバーも促進され、美肌効果も。また、自律神経が整い、副交感神経が優位になるので睡眠の質アップも期待できるでしょう。深部体温は体温計では測れませんが、顔や額が汗ばんできたら上がってきたサインです」

体調の維持には「毎日入浴」が望ましい。

「入浴しても2時間程度で体温は下がりますが、過去に『入浴した日は血圧が低めの状態が約8時間続いた』との調査結果があり、体は冷めても血行状態の変化はある。それを考えると、毎日入浴するほどいい状態を維持できると思います」

下記が理想の入浴スケジュールだ。一日の疲れを取り、健やかな眠りに導く理想の入浴法となる。

【入浴前】

激しい運動はNG!
激しい運動はNG!(イラスト/上田惣子)
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・入浴30分〜1時間前に食事を済ませる
・コップ1〜2杯の常温の水を飲む
・激しい運動はNG!(※筋肉に行く血液量が減り、疲労回復が遅れる恐れがある)

【入浴中】

40℃10分
肩までつかる(イラスト/上田惣子)
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・就寝90分前に入る
・皮脂の多い部位(頭・顔・背中上部・わきの下・陰部・足指の間)以外、石けんを使うのは2〜3日に1回でOK
・40℃10分
・肩までつかる
・入浴剤を入れる

40℃10分
40℃10分(イラスト/上田惣子)
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【入浴後】

コップ1〜2杯の水分補給
コップ1〜2杯の水分補給(イラスト/上田惣子)
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・コップ1〜2杯の水分補給
・10分以内に全身をたっぷりと保湿
・体が温かいうちに服を着る
・軽いストレッチは◎

「いったん上がった深部体温が下がると眠気が訪れるので、就寝の90分前に入浴を済ませるのが入眠に最適のタイミング。寝る直前の入浴は覚醒しやすいのでつかる時間を5分にするか、シャワーで済ませること」

より長くつかった方がよさそうだが、実は逆効果。

「15分以上入ると汗の量が増え、脱水状態に。すると、血液がドロドロになり、脳や内臓の機能が一時的に落ちてしまう。疲労感や頭痛が起こることもあります」

安全のためには温度・時間管理が重要。100円ショップなどで「湯温計」を購入し、湯温を測ってみよう。

一日の疲れを取り、健やかな眠りに導く理想の入浴法
一日の疲れを取り、健やかな眠りに導く理想の入浴法(イラスト/上田惣子)
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◆東京都市大学教授・早坂信哉さん

温泉療法専門医、博士(医学)。25年以上にわたり7万人を超える入浴習慣を医学的に調査するお風呂の第一人者。近著に『入浴 それは、世界一簡単な健康習慣』(アスコム)。

取材・文/佐藤有栄

※女性セブン2026年3月19日号