《春は“思わぬ落とし穴”に落とされる季節》「安易な気持ちで結婚」「嫁姑バトル」「離婚」「道端で声をかけられた男と同棲」…オバ記者が告白 この季節になると思い出す凶状
道端で声をかけられた男との同棲
木綿のコートを着ていたから3月の初めだったんだね。家までの暗い道を歩いていたら、後ろから足音が聞こえる。足音はどんどん大きくなる。私は振り向かない。でも絶対に追い越させない。早足自慢の私はさらに足の回転数を上げた、ところで横から「ふふ。こんばんは」と声がかかった。背の高い男だった。
その1か月半後、私は離婚届を出して家を出て、その男と同棲を始めたんだから正気の沙汰じゃないわよ。

自分の行動力に自分の気持ちが追いつかない。私は男との運命の出会いを手当たり次第に周りの人に話して、それでも落ち着かなくて、ふらりとタクシーに乗った。「どちらへ?」と聞く運転手に、「首都高」と思い浮かんだ言葉を吐いた。「首都高でどちらへ?」「うーん、適当に走って」と言ったら、運転手さん、バックミラーで私の顔を見た。鏡の中で目が合ったので、「ちょっと話したいだけだから目的地はないのよ」と私。それから車の中で何を話したか、もぅ覚えていないけれど、途中で運転手さんは「もうメーターは動かさないからオレの話も聞いてもらっていい?」と、荒川の橋の下に車を止めた。
それからお互い、人には決して話さない話を2時間、3時間、いや、すっかり日が落ちていたから4時間くらい話したのかもしれない。そして連絡先を交換することなく別れた。
それにしても私は、道端で出会った男との同棲に何を期待していたのか。男が「必ず幸せにするよ」なんてカラオケのマイクを握りながら私の耳元で囁いたから、すっかりその気になった。でもその一方、心のどこかで、「さぁさぁ、どうなる、どうなる!?」と“自分サイコロ”が転がったことに興奮していたのよね。
何かに賭けるとき、人は「吉と出るか、凶と出るか」と言うけれど、正直言って本人は吉が出るなんて考えちゃいないのよ。どの程度の凶が出るか。または凶が一周回って吉みたいなことにならないか。どっちが出たところでどうにも“自分サイコロ”を転がさずにいられない。
で、結果どうなったかというと、それはもぅ男の言うこと、全部ウソ。独身なんてとんでもなくて、離婚して子供3人に大借金、愛人までいた。なのに、男が私に車のローンとウン百万円の借金を背負わせて逃げるまで、別れを決断できなかった。
この季節になると、わが過去の凶状を思わずにいられないんだわ。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2026年4月9日号