健康・医療

《医師が指摘》健康診断・人間ドックが“当たり前”になっている風潮への危惧 がん検査には「過剰診断・過剰治療」というリスクも

健康診断や人間ドックはメリットだけでなくデメリットもある(写真/PIXTA)
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「とりあえず受けておけば安心」「病気は早期発見に越したことはない」──そんな感覚で、健康診断や人間ドックを漫然と受けていないだろうか。だが検査にはメリットだけでなくデメリットもあり、受けたからといって安心とはいえない。日々医療と向き合う医師たちに、最新事情を聞いた。【全3回の第1回】

「正解がわからない」健康診断

 神奈川県在住のAさん(56才)は、春に定年退職した夫に、ある懸念があると話す。

「会社員だった頃は毎年、会社の健康診断や人間ドックを受けていましたが、定年退職すると自分の判断で受けないといけない。前回から1年以上あいているし、受けたらとすすめても“体の調子が悪いわけじゃないから”とまったく聞く耳を持ちません。“おれは長生きの家系だから”なんて言いますが、なにかあってからでは遅いのに……」

 Aさんのように日本人の多くが「毎年の健康診断」を受けていて、厚労省による「国民生活基礎調査」(2022年)を見ると、20才以上の男性で73.1%、女性で65.7%が過去1年間に健康診断や人間ドックを受けたことが明らかに。これは世界的に見ても極めて高い水準だ。しかし、都内に住むBさん(47才)は疑問を口にする。

「就職して以降、健康診断や人間ドックを当たり前のように受けていて、昨年、乳がん検診で再検査になりました。生検(組織の一部をメスや針で採取して、顕微鏡で調べる検査)は痛みが強く、結果が出るまで1か月近くかかりました。結局、悪性ではなかったのですが、乳がんだったらどうしよう、子供もまだ小学生なのに、と生きた心地がしなかった。医師のすすめるままマンモグラフィを受けましたが、超音波検査にすればよかったのか……正解がわかりません」

当たり前のように受けている健康診断だが、本当にその内容は適切だろうか(写真/PIXTA)
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 同じく都内在住のCさん(52才)は、後悔の念が消えないと言う。

「昨年、自治体の健康診断で78才の父に胃がんが見つかりました。初期だったので手術で切ってしまいましょうと医師に言われ、その通りにしましたが、胃の3分の1を切除してしまった父は一気に食が細くなり、どんどんやせてしまって。免疫力が下がったのか、年末に風邪をこじらせて以来、横になっている時間がどんどん増えていきました。

 はっきり言って、あと30年も40年も生きられるわけではないし、“手術をせずに違う治療をしていれば”“そもそもがんが見つからなくてもよかったんじゃないか”と考えてしまいます」