
すべて想像の逆を行く男、高須克弥の破天荒な人生を描く連載『YES!逆張り人生~高須克弥物語~』! 読めば悩みが全て吹き飛ぶ、そんなパワフルすぎる人生を、どうぞご堪能あれ。
第1話:「こんな奴呼ぶんじゃなかった」と後悔する東大生の話【後編】

* * *
天正十年。織田信長が今まさに天下を統一しようとしていたその時、同盟国である徳川家康の領地で、ある農民が“たまたま”ある男に出会ったことから全てが始まった。
「小四郎どん、あれだわ」
小作人が示す方には30人程の男たちが境内で地べたに座り、うなだれている。皆顔が薄汚れ、着物は泥にまみれ大きく破れている。中には怪我をしているのか横たわって動かない者もいる。梅雨の暖かい雨が彼らをより見すぼらしくさせている。
──武士かん? いや、追われとる野盗の類だろうて。
木陰から見ていた小四郎は「庄屋なんだでなんとかしてくれん」という小作人たちの無言の圧に押され、一歩前に出た。
「誰だ!」
野盗の男が座ったまま叫んだ。声は大きいがもはや立ち上がる体力もないようだ。
「あんたらこそ誰かやあ?」
小四郎は心に余裕ができた。ここは村をまとめる立場としての威厳を見せないといけない。すると社殿の階段に座っていた野盗の一人がゆっくりと言った。
「ここはどこか?」
──こいつが頭領か?
小四郎はその鷹揚な物言いに腹が立った。
──野盗のくせに太りやがって。何だん、一人だけ雨に濡れんところに座っとって偉そうに。ここがどこか知りもしんで逃げて来たんかん。ほいなら教えてやるわい。聞いて驚きん、この野良犬どもが!
「ここは先の戦で武田軍を滅ぼした徳川家康公の領地、三河の一色だわ!」

天下の織田信長も一目置く家康の名前を出せばビビるだろうと胸を張った小四郎の言葉に、野盗たちが小さく笑った。小四郎はもとより、その後ろにいる小作人たちにも動揺が走る。
──いかん。こいつら家康がケチなことを知っとる。
派手な信長と比べて家康はケチだと噂されていた。満を持して出した殿様の名前をバカにされては身も蓋もない。小四郎の顔は真っ赤に、頭は真っ白になった。
「と、徳川家康公が誰だか知らんのかん!」
小四郎が叫ぶと頭領の小太りが言った。
「よう知っとる」
「何?」
「わしがその家康なんだわ」
* * *
この“たまたま”の出会いから高須という家が始まる。改めて言うが、これが事実だというから驚きである。高須克弥が生まれる363年前の話である。(第2話につづく)
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【プロフィール】
家守鷹主(いえす・たかす)/テレビ局プロデューサーとして高須克弥氏と出会い、十数年来の友人。今回、その人生を小説として描きたいと依頼したところ、高須氏は一言"YES"と快諾し、ペンネームも命名。かくして、希代の人生物語が幕を開けた。
高須克弥(たかす・かつや)/1945年、愛知県生まれ。医師(美容外科、整形外科、形成外科。学位は医学博士)。2018年に自身の全身がんを公表(発病は2014年)。
※女性セブン2026年6月4日号